- 河出書房新社 (2011年5月10日発売)
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感想 : 10件
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Amazon.co.jp ・本 (200ページ) / ISBN・EAN: 9784309410807
感想・レビュー・書評
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「仏教論争」「古寺巡礼」と続けざまにふれてきた和辻哲郎による未完の道元禅師論。深遠なる道元思想を、さらに難解にしたような分析ですが、これを理解するには何としても正法眼蔵にあたる他ないと思います。
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親鸞や法然についての本は多いと思う。悪人正機説なんてツッコミドコロ満載だし。鎌倉仏教の影響については、日蓮に関する言及は多かった。あの絵巻がらみで一遍上人の念仏宗について読んだこともある。だけど、道元については何か読んだことが無い。禅は釈迦の教えに一番近いという。和辻哲郎の風土は学生時分に読んだ。そんな訳で手に取る。
仏性をアートマンとする解釈を排したとあり、自分の勘違いを知る。悉有は絶対的な有。それは無の別名と言われたら、判ったような、判らないような。更に空なんて言われたら、もう無理。
少数の弟子と山の籠り、仏祖に従う。純粋な宗教のありかた。壮麗な宗教施設や宗教美術を否定する。本来の宗教はそういうものと思いつつ、原理主義という言葉も頭に掠める。禅宗という云われ方は否定していたという。意外に思ったが、仏祖のありかたのみ、ということ。ロゴスを重んじたというが、禅宗の考案って判らない。もう少し教えてほしかったかな。どれだけ、理解できたか心許ない。座禅とロゴスで本当にどこまで至れるんだろう。俗にまみれ過ぎたオジサンは、どうも懐疑的になってしまう。 -
1. 神秘的な瞬間と生命の源
- 祈りの瞬間に感じる暖かい生命の存在。
- 自分の生命と宇宙の生命が一体であることを直感する瞬間がある。
- 自己の智慧を放棄し、無垢な心に戻ることで、真理に触れることができる。
2. 宗教の多様性とその意義
- 宗教は特殊な形で現れるが、その真理は普遍的である。
- 歴史的な宗教が持つ特殊性は、真理を隠さずに表現する手段として重要である。
3. 真理探求の動機
- 人類が無限を求める心とその苦悩。
- 物質的な欲望を超えた大いなる価値の追求が必要である。
- 人は求め続ける存在であり、真理探求はその延長線上にある。
4. 仏法の本質
- 仏法は他者のための手段ではなく、人生そのもののために存在する。
- 絶対の真理に到達するためには、自己の欲望を超える必要がある。
5. 精神的な価値と物質的な価値
- 現世の物質的な価値は、真の価値を否定するものである。
- 真理に入る生活が「彼岸の生活」であり、迷いを抱えた生活が「此岸の生活」である。
6. 道元の教え
- 道元は仏法修行において「無所得」を強調。
- 修行は自己の利益を追求するためのものではなく、真理そのものを追求するものである。
7. 慈悲の概念
- 道元の慈悲は、他者を無条件に受け入れることから成り立つ。
- 悪を許すことは、正義を損なうことなく行われるべきである。
8. 社会との関係
- 道元は社会問題に対して直接的な批評は行わないが、精神的な価値の重要性を説く。
- 物質的な欲望から解放されることが、真の幸福につながる。
9. 教訓と実践
- 本書を通じて、読者は仏教の深い教えや道元の思想を理解し、実践するための手引きが得られる。
- 精神的な成長を促すために、内面的な探求や修行の重要性が強調されている。 -
深すぎて理解できないところも多くあるが、道元が真理を求めることで。人には真実の価値の階段を与え、それを登るために「精進」をすることを生活の最大の意義とさせたことはわかった。これらは私たちの今の生き方にも通じるものがある。
いつか自分が成長したときに読み返したらもっとわかるようになっていることを期待する。 -
道元の「真理」の項は難解。再読して理解しうるか。
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難しい。人間は『法の器』だと言ってるのかな。『道元は「自己の救済」を目的とせずして、「真理王国の建設」を目的とした。自己は真理の王国において救われる。しかし救われんがために真理を獲ようとするのではない。 真理の前には自己は無である。
真理を体現した自己が尊いのではなく、自己に体現せられた真理が尊いのである。真理への修行はあくまでも真理それ自身のためでなくてはならぬ。』禅が救済の宗教ではなく、悟りの宗教だというのはわかるけど、道元が目的とした『真理』が何なのか?わからない。修行が足りんね! -
「そうだったのか道元」と名付けたくなる程、分かりやすい道元入門。「仏道」は「善意志」、「仏性」は「普遍的法則」と解釈すれば確かに道元は、カントがキリスト教の影響の上で打ち立てたヨーロッパ的な倫理学の高みに、仏教の上に立って600年も前に到達している。和辻哲郎がこれを著した大正年間に、日本の思想がヨーロッパから日本に回帰してきたと考えれば、思想史的に大きな意義のある書物なのだろう、と思う。
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和辻による道元論。
真理に忠実なる者としての道元を描き出す。あるいは、目の前のものへの慈悲の人として。僧と俗を峻別し僧に厳しい倫理を課す者として。
また、道元による仏道の理論化も丹念に追う。『日本精神史研究』をいつか読みたい。 -
親鸞との比較は非常にわかりやすいのだけれど、道元はやっぱり難解だ。「正法眼蔵随聞記(ワイド版岩波文庫)」読んだ時よりは全然理解出来たけど。
著者プロフィール
和辻哲郎の作品
