完本 酔郷譚 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 165
レビュー : 16
  • Amazon.co.jp ・本 (306ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411484

感想・レビュー・書評

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  • 私にとって、初の倉橋由美子作品。

    すごいとは思ったが、一冊の本として読むとどうにも抵抗の方を強く感じてしまった。アンソロジーなどで、この本に収録されているうちの1、2編を取り上げられて読んでいたら、また違った印象を抱いたかもしれない。

    享楽を甘美に味わうというのは才能が必要だと思うし、実際この本の登場人物たちは次々と訪れ、また自分から赴いていく様々な「怪異」や「異郷」をとてもすんなりと味わっているように思う。その手腕は、できることなら私だっておこぼれが欲しいくらいだ。
    しかし、私はそこに、どうしても抵抗を感じてしまうのである。それでいいのか? と思ってしまうのである。

    苦しみのない世界なんて、そんなの生きているとは言えない、だとか。あるいは、こういう方々とは身分が違う、やっぱり自分は庶民なのね、だとか。そう言ってしまうのは簡単かもしれない。けれど、それだけでもないと思う。
    私がこの本を読んで思うのは、つまり、彼ら(この本の登場人物たちの、たぶんほとんどです)は、こういう生活をしていて、「自分が誰なのか」わからなくなりはしないのだろうか? ということだ。

    誰にでもなれる、どこへでも行ける、というのは素敵なことだけれど、一方で、とてつもなく恐ろしいことだとも思う。
    私はこの本に、そんなことを考えたのかもしれない。

  • 基本的どの篇もパターンが同じなので少しずつゆっくりと読むのがいいでしょう。ハイクラスの青年が魔酒に導かれ幽玄な異界に赴き淫蕩にふける‥といった趣きは源氏物語を彷彿とさせます。初期作品ほどの感銘は受けませんが、熟した倉橋由美子もまた格別な味わいです。妖しく上質な酔い心地でございます。反動で安酒を呑んで悪酔いしたくなりました。

倉橋由美子の作品

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