ブラザー・サン シスター・ムーン (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.03
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本棚登録 : 1093
レビュー : 112
  • Amazon.co.jp ・本 (229ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411507

作品紹介・あらすじ

本と映画と音楽……それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。「大学」という特別な空間を初めて著者が描いた、青春小説決定版!

単行本未収録・本編のスピンオフ「糾える縄のごとく」&特別対談収録。

感想・レビュー・書評

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  • これはなんだろう。これは本当に小説なんだろうか。

    ある女子大生の日常が第一人称で語られる。そこに出てくるキーワードの数々。『女子大生ブーム』『消防署のほう…から来て消火器を売りつける』『イカ天』『エビ天』、日航機の墜落事故の記載があることで、これが1980年代後半のことだろうと思われる当時の時代を表す言葉たち。

    文章が変だ。『本音を言えば、あんまり学生時代のことを話したくないのだ。そもそもあまりにも平穏で、大した話もない。』という割には、永遠に続くかのような極めて粘着質な文章。わざと句点を入れないで、読点で強引に繋げていく長々とした読みづらい表現。それを分かった上で、『私の何事も起きない学生時代の思い出をだらだら断片的に紹介されることに飽きられても仕方がない』と自虐的にまとめる恩田さん。

    『小説家になりたい、なんて、口が裂けても言いたくないし、そう心の底では思っていることを認めたくなかった』という記載で思い当たる、やはりこれは恩田さん自身のこと。

    『書くというのは業だ。書くというのは癖だ。あたしはいつも右の靴の外側の減り方が妙に早いのだけど、あれと同じだ。書く人は、ほっておいても、禁じても、一銭にならなくても、書くのである。』、小説家になることを意識し、小説家に実際になる人ってこういう感じなのかと、なんとも興味深い記述が続きます。読みづらいことこの上ないどうでも良いと思われた文章が突然親しみの湧くものに早変わりする瞬間。同じものを見ていても、読んでいても、人はそれに興味があるのか、ないのかが全てなのかもしれないと改めて感じました。

    作品は、小説家を志す恩田さん自身をモデルにした第一部を含め三部構成です。第三者的に読むと断然面白いのは第二部。ジャズに全てをかける四年間を過ごした男子学生のことが描かれます。大学に入ってトリオを組む。能力のある友人と遅れを取る自分。必死の努力で後を追う姿。ベースとピアノということで異なりますが「蜜蜂と遠雷」を思い起こさせる部分もあり、短いですが読み応えがありました。この第二部だけで書き上げられた長編を読みたくなりました。

    ただ、全体としては極めて淡々とした、小説というよりはエッセイのような作品でした。山もなければ谷もない、ごく普通の大学生活を送った三人のそれぞれの四年間。

    感想を書いているこの時点ですでに印象が薄くなってしまっているなんとも希薄な印象の作品。恩田さんを読む一冊目がこれだと二冊目を手に取ることはないと思いますが、恩田さんをたくさん読んでいる身には、たまにはこんな恩田さんもいいかなって、そう感じました。

    • nejidonさん
      さてさてさん、こんにちは(^^♪
      コメント欄でははじめまして。
      ご挨拶が大変遅れましたが、フォローしてくださりありがとうございます!
      ...
      さてさてさん、こんにちは(^^♪
      コメント欄でははじめまして。
      ご挨拶が大変遅れましたが、フォローしてくださりありがとうございます!
      このレビューにコメントするそのわけは・・
      実は大好きな映画のタイトルだったので、心弾ませてしまったというわけです・笑
      山も谷もない淡々としたエッセイ風の作品に、何故名画と同タイトルを付けたのでしょうね。
      こういうものも書けるぞという意欲だったのか。謎です。。
      ところで、私の本棚にはなかなか皆さんのお好きな小説がなくて、申し訳なく思ってます。
      こればかりは好みの問題なので、どうぞお許しくださいね。
      とりとめもないことを書きました。
      今後ともよろしくお願いします。
      2020/03/06
    • さてさてさん
      nejidonさん、いつもありがとうございます。
      こちらこそフォロー、そしてコメントもいただきありがとうございます。
      この作品、本文中にもこ...
      nejidonさん、いつもありがとうございます。
      こちらこそフォロー、そしてコメントもいただきありがとうございます。
      この作品、本文中にもこのタイトルは1972年のイタリア映画であり、聖フランチェスコの青春時代の話であることが書かれていました。大学生三人が見に行った映画の想い出ということでサラッと出てきますが、書名にする位だから恩田さんよほど気になられたのでしょうね。
      読書は昨年暮れから始めたばかりで、そもそも自分にどういう本が合うのか未だよく分かっていません。なので、nejidonさんはじめ、皆さんの選ばれた本、感想はとても参考にさせていただいています。nejidonさんの10分1以下の読書量しかないので、もっと多方面に数も読んでいきたいと思います。
      今後ともよろしくお願いします。

      ありがとうございました。
      2020/03/06
  • 冒頭───
    狭かった。学生時代は狭かった。
    広いところに出たはずなのに、なんだかとても窮屈だった。
    馬鹿だった。学生時代のあたしは本当に馬鹿だった。
    おカネもなかったし、ついでに言うと色気もなかった。
    二度とあんな時代には戻りたくはない。
    周りの女友達も、もう学生なんてまっぴらだ、という子がほとんどだ。
    けれど、男の子たちは違うらしい。

    恩田陸の私的エッセイ風(一部のみ)連作短編集。
    学生時代の回想をもとに三人の視点で書かれている。
    第一部「あいつと私」は自分。
    第二部「青い花」はジャズ研の戸崎。
    第三部「陽の当たる場所」はシネマ研究会の箱崎。

    男は学生時代を懐かしそうに振り返る。
    「ああ、あの頃に戻りたいなあ」と。
    私もそうだ。
    一生の中であんな自由な時期はなかった。
    未来は明るい希望で満ち溢れているように漠然と思っていた。
    その希望は、卒業、就職活動が近づくにつれ、少しずつ薄まっていくことになるのだが------。

    ことさら凄いエピソードやストーリーがあるわけではないのだが、何故か心に染み入る物語。
    恩田陸はファンタジー路線の作品で有名だが、本屋大賞受賞作「夜のピクニック」のような、リアリティのある爽やかな作品のほうが私は好きだ。
    こんな作品をもっと書いてもらいたいものだ。

    • 杜のうさこさん
      koshoujiさん、こんばんは~♪
      おひさしぶりです。

      恩田さんは私も『夜のピクニック』でした~!
      最高にいいお話ですよね。名作...
      koshoujiさん、こんばんは~♪
      おひさしぶりです。

      恩田さんは私も『夜のピクニック』でした~!
      最高にいいお話ですよね。名作!
      ああ、わかります。いろんな意味で”恩田ワールド”って感じ…。
      『ネバーランド』は読まれましたか?
      男子校の寮が舞台のお話で、これも好きな作品です。

      実は体調不良でしばらくPCから遠ざかっていました。
      それでも寝ながら本は読むという(笑)

      で、最近ようやくブクログ復活。
      もちろんkoshoujiさんの本棚チェックも怠りなく。
      新レビューなし。がっかり…。
      さてはセンパイ、またなにやらお忙しいのね♪と。

      昨日ひさしぶりにブログにお邪魔してたんですよ~。
      カンチョーさんのすぐあとに寝込んだもので。(笑いすぎで?冗談です♪)
      ラーメンどこかなぁ…まずはメルシー?とか、
      イルミネーションに彩られた再会に感動して、コメントするぞ!と意気込んでたのです。
      そしたら今日koshoujiさんからコメント!
      心の声が届いたのか~?なんて(#^^#)


      懐かしい映像と、澄んだ歌声に
      後輩うさこは泣きました。

      そして昨日の昼に突風にあおられて、
      転んで足を痛めた、なんともひ弱な私は、
      あの若き日にしみじみと想いをはせるのであります。
      2015/12/12
  • ねえ、覚えてる?空から蛇が落ちてきたあの日のことをー本と音楽と映画、それさえあれば幸せだった奇蹟のような時間。高校の同級生、楡崎綾音・戸崎衛・箱崎一のザキザキトリオが過ごした大学時代を描く青春小説。

    高校時代の思い出を、大学生になった時にふと思い出した。3人の不思議な関係。それぞれが別々の道を歩きながらもお互いに影響を及ぼす。

  • わたし、これ大好きだ!! 
    恩田陸って、ホラーとかファンタジーとかミステリとかのイメージが強くてずっと読まず嫌いだったんだけど、最近少しずつ読みはじめて、いろんなタイプの作品があるんだなと思って、そしてこれ。こういうタイプのをわたしはもっと読みたい!!

    確かに事件とかは起きなくて、恩田さんの自伝的エッセイみたい感じなんだけど、それでいてちゃんと小説になってる感じがする。
    たとえエッセイだと思って読んでも、わたしは語り口が好きだった。
    ふたつめのジャズバンドの話は、読んでてすごくわくわくしたし。
    そしてどの話も、ただの青春万歳みたいじゃないところがよかった。大人になってふり返る、冷静で、せつない感じが。

    恩田さんと同じ年なので、時代の雰囲気とかがわかって懐かしさを覚えるっていうのもあると思うけれども。

  • 楡崎、戸崎、箱崎のザキザキトリオ。
    それぞれが自分の高校・大学時代を回想して語る短編集。
    (これも連作になるのかな?)


    正直、期待ハズレでした。
    第2部がマシだったかな。戸崎のジャズバンドやってた話。
    その他は本人たちが思い出したり語ったりするのを
    ためらっているようになんにも面白みがなかった。

    学生時代、色々悩んで考えて行動したりしなかったり。
    そんな連続だってわかるけど、それでも小説なら
    何かを語ってもらわないと!

    あとがき対談を読むと、どれも恩田さん本人の自叙伝的な
    要素が入っているようです。
    って、それを知ってもあまりなんとも思わなかったけど。

    ジャズバンドでの活動に熱中する戸崎の話だけが
    読んでて楽しかったな。
    で、高校時代の、3人を結びつけたエピソードは
    なにか意味があったのだろうか?

  • たぶん、5月連休明けか、中旬くらいに読んだんだと思う。


    読んでいて、ふと、思った。
    これって、もしかして、恩田陸版「なんとなく、クリスタル」?って(爆)

    といっても、「なんとなく、クリスタル」は、主人公(だったか?)の女性がパイドパイパーハウスに新譜を見に行こうか迷うシーンしか記憶にないwこともあり、内容ではなくて。
    この「ブラザー・サン シスター・ムーン」に出てくる3人の日常の雰囲気が、なんとなーく、“なんとなく、クリスタル”だなーって。
    ていうか、それこそ「なんとなく、クリスタル」なんて題名にした方が、この本の内容に合っている気がするのだ。
    いや、別に、「なんとなく、クリスタル」にこだわっているわけではなく、「ブリリアントな午後」でも、「たまらなく、アーベイン(だっけ?)」でもいいんだけどさw
    自分としては、これを書くにあたって、著者がモチーフにしたのかもしれない、その「ブラザー・サン シスター・ムーン」という映画を知らないこともあり、(話の後、著者と登場人物のモデルとなった当時のジャズのスタープレイヤーとの対談がついていることも含めて)なんとなーくクリスタルな話?、だなぁーって思った。

    それはそれとして、ファンとしては、これって、著者はどういう意図で書いたんだろう?というのが気になるわけだ。
    ま、意図というか、どんな風に書いたというか(たまたまネタがなかっただけwというのも含めて)。
    3つの章+予告編ヴァージョンで構成されているこの話を、著者はどの順番で書いたのだろう?と、なんだかそこが妙に気になるのだ。
    ファンとしてはw

    とはいうものの、著者はジャズをやってただけあって、インプロビゼーションでノリまくるのはいいんだけど、
    ノリまくりすぎちゃって、元の演奏に戻り損ねることが多々ある(というか、常習?)からなーw
    (ビッグバンドにインプロビゼーションがあるかどうかは知らないw)
    素直に考えれば、「予告編ヴァージョン」は予告編とあるのだから。この3人を主人公に物語を考えていて、次にポツンと話が飛んで2章目を書いたってことかなぁー、と思うんだけど…。

    というのも、1章目がよくわからないんだよなー。
    ぶっちゃけ、素人が自己陶酔が自己逃避だかで書いたみたいな、この話を一章に持ってきている(残している)ということは、「予告編」にある3人の物語を書くというのはもちろん頭にありつつ、まず一章を書いて。
    次に、もっとも小説然としている2章を次に書き、3章でインプロビゼーションしまくっちゃって、例によって話が元に戻らなくなって。
    しょうがないから、なんとか収拾をつけようと予告編の部分を、わざわざ「予告編ヴァージョン」とことわりを入れて書いたんじゃないかと勘繰ってしまうわけだw

    ただ、短編集なんか読むと、この「予告編」みたいに唐突に始まって唐突に終わる話は普通にあるから、まず短編として(ネタとして)「予告編」があったのかなーとも思う。
    だって、1章は「予告編」の設定をちゃんと引き継いでいるし、また、2章に展開を巧く引き渡してもいる。
    結局、3章のインプロビゼーション吹きまくりで話を収拾し損ねただけ、と考えれば、なんだ、結局いつもの著者のパターンじゃんwみたいな?
    ということは、1章は著者のたんなる照れにすぎないってこと?w

    恩田陸の小説の魅力は、めくるめく謎、謎、謎…(ただし、それに見合う結末はないw)にあると思ってたけど、間違っても結末に期待してはいけない!を忘れなければ、これはこれで面白い。
    というか、ノスタルジアの魔術師と言われる(らしい)恩田陸が、自ら“自伝的”と言う小説で、自分の大学時代を全否定するのが面白い(興味深い)。
    (80年代半ばにおくった自分の大学生活を否定する著者の感覚。もしかしたら、それこそが恩田陸が今ウケる根本なのかも?なんて思ったりw)

    というかー、これって、そもそもフィクションなわけで。著者が“自伝的”と言うそれって、ノスタルジーに浸ることを良しとしないことにこだわりたい著者の、当時スターだった大学のジャズプレイヤーとの対談まで全部ひっくるめたフィクション(小説の一部)なんじゃないのかな?なんて思ったw

  • なにか特別なことが起きるわけではない。しかし、読むことが全く苦じゃない。すらすら読める。読みやすく違和感のない文章を書くって意外と難しいことだと思う。面白かった。
    あと恩田陸の小説で、実在する音楽や映画、小説が出てくるところが好き。ミステリー好きのキャラクターがいたりとか。

  • 本と映画と音楽。それぞれの道に進む3人の物語。「早く終わりたかった」という著者の大学時代の思い出が投影されているけれど、読んだ僕からしたら「こんな大学時代を送りたかった」と思った。それは、大学時代の蓄積が、その後の人生にはっきりと活かされているだからだろう。僕の場合、大学時代にやっていたことは、今の仕事に直接生きていない。端的にいえば、「もっと勉強しておけばよかったな」ということに尽きる。だから、この小説の登場人物のように、大学時代に打ち込んだことが、その後の仕事に生きているということが、うらやましいのかもしれない。

  • 久しぶりに恩田陸の小説を読んだ。
    大学生活の回顧録みたいな感じで、綾音(小説)・衛(音楽)・一(映画)の視点から語られている。
    最初に読んだ時はピンとこなかったけど、今回読んで何を言いたいのかわかった気がする。

    三匹の蛇が落ちてきた様子、その後の蛇たちが行く末の描写が印象的。
    特別対談では?だったけど、衛の音楽サークルの話(2部)が好きだった。

  • 早稲田臭が凄い。
    珍しく爽やかな口当たり。
    ちょうどいい軽さ。

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著者プロフィール

恩田陸(おんだ りく)
1964年、青森市生まれ。水戸第一高校を卒業し、早稲田大学進学・卒業。1991年、第3回日本ファンタジーノベル大賞最終候補作となった「六番目の小夜子」でデビュー。2004年刊行『夜のピクニック』で第26回吉川英治文学新人賞及び第2回本屋大賞、2007年『中庭の出来事』で第20回山本周五郎賞をそれぞれ受賞。2017年『蜜蜂と遠雷』で第156回直木三十五賞、第14回本屋大賞、第5回ブクログ大賞などを受賞した。同作品による直木賞・本屋大賞のW受賞、そして同作家2度目の本屋大賞受賞は史上初。大変大きな話題となり、代表作の一つに挙げられるようになった。同作は2019年4月に文庫化され、同年秋に石川慶監督、松岡茉優・松坂桃李らのキャストで映画化される。

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