銃 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.67
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本棚登録 : 4023
感想 : 337
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  • Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309411668

作品紹介・あらすじ

昨日、私は拳銃を拾った。これ程美しいものを、他に知らない――
中村文則のデビュー作が河出文庫からリニューアル刊行!単行本未収録小説「火」、著者の解説風エッセイを収録。

感想・レビュー・書評

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  • 私の大好きな著者の世界観の元祖を見るつもりでこの作品を手に取ってみたのだが、なんか違かった。

    そもそも狂気を演出するのに「動物の死」を使う事に、創作だから許される許容は勿論持ち合わせていても今回は心底胸糞悪かった。ある意味リアルって事なのだろうか。経験値ゼロのメンズの脳内みたいな官能的シーンも下品で汚い。

    今の作品を楽しめるのもココがあってからこそなんですよね。ただそれだけを感じれた事が嬉しい。

  • 中村文則さんのデビュー作。
    「銃」をひょんなことから拾ってしまった普通の大学生の、心とからだと頭の変化をヒリヒリとした文体で描ききっています。

    一緒に、ハラハラ、ドキドキしました。

    ラストにかけては、ページを捲る手が止まりませんでした。心理描写がとても素晴らしいなと。そうだよな。きっとそうなるだろうな。人って。

    鬱々した作品は苦手意識がありましたが、もっと読んでみたいと思わせて貰いました。

  • 感情とは怪物なのかもしれない。
    事象があるから感情が起きるのか、感情があるから事象が起きるのか。ただ、ただ、切迫する空気に追い詰められた。

  • 中村文則のデビュー作。勢いが凄い。熱量が伝わってくるようで一気に読んだ。

  • 著者のデビュー作であるこの作品、読んでみて感じたのは何とも言えない、いい意味での後味の悪さ。
    たまたま銃を拾った主人公が、銃に呑まれて、翻弄され、最終的に人格までもが、何とも言えないクライマックスだけどもそこが、中村文則の真骨頂だと思う、ぜひ読んでみてください。

  • 中村文則さん、多分3作品目。
    デビュー作ということで、どんな作品なのだろうと思ったけど、とてもリアリティとかけ離れているような話にも感じられるし、とってもリアリティに溢れているとも思う。

    主人公が銃を持った時の衝動と、そこから銃に恋をするように無機質になっていくところ
    そして最後に、主人公が人を殺そうと決意し、そしてそこから色んな逡巡を重ね、そして決行するところ。この流れがとてもスムーズでスラスラと読めてしまった。

    だけど1番自分が好きだなと思ったのは、その後だと思う。
    1度主人公は自分の今後の人生やこれから起こることを考えて、銃で人を殺すことを止める。そしてそこから、自分が今生きているありがたみを感じたり、日常的に今までどこか機械じみていた感性が、人間らしくなるのだ。
    しかし、そこから急展開。電車の中で衝動的に人を殺してしまう。
    これはとても良く人間の中身を描いているなと思った。
    緻密に計画を立てたものほど、日が経つにつれて不安は増すし、自分の中で否定の言葉が出てしまい断念する。
    そして、そこから。そんな自分を突き動かすのは瞬間的な衝動なのではないかと思う。
    その衝動の恐ろしさを垣間見た気がした。

    もう一つ付いていた短編の「火」については女性の内面が悲しいくらいにずっと描かれていました。
    どこか湊かなえさんの告白に似たものを感じた。

  • 「銃」
     主人公は一見充実した生活を送る、ごく平均的であり、それ以上でもそれ以下でもない大学生。自己の奥底に潜んでいた破滅へと向かうのを望む願望が銃を拾うことによって肥大化する。自らの生い立ちの特殊性から、自分は周りの人間とは隔絶された存在であると認識している。銃という究極の実用的美に魅せられ、銃に傅き、銃を自己の内面の表層部分に融合させる。どこまでも平凡な人生(物語)を大きく捻じ曲げるきっかけはどこまでも平凡な事象であり、それに触れるどこまでも平凡な狂気との化学反応なのだ。意識と無意識に境界は無く、そこには下した判断にかけた時間の差しかない。
     この物語の主人公は『罪と罰』のラスコーリニコフだ。ラズミーヒン(ケイスケ)という友を持ち、判事ポルフィーリー(警察)に追い詰められ、ソーニャ(ヨシカワユウコ)に罪の告白を試みる。この主人公はラスコーリニコフのように罪を悔いることはなく、ラスコーリニコフのもう一つのエンディングの可能性、スヴィドリガイロフと同様の運命をたどった。ラスコーリニコフは罪を犯したあとに苦悩するのに対して、この主人公(西川)は罪を犯す前の段階で、銃とともに起きるその後の可能性に苦悩し、あるいは思考停止した。この作品『銃』は『罪と罰』の前日譚を含む、あり得たもう一つの物語の可能性なのだ。

  • 「列」に続いて読んだけど、大変面白かった。人は執着する対象に振り回されるものだけど、「銃」というただそこにあるだけの物に対して、主人公自身が一方的に幻想や思い込みを抱き、壊れていくのが興味深かった。人間が潜在的に抱える切り札や時限爆弾的な何かの示唆にも思える。

  • 依存は人生を豊かにもするが
    破滅に繋がる可能性も秘めている。

    そんな風に感じながら読みました。

    なにか淡々とした、箇条書きのようにも感じる
    文章が西川の心情にマッチしていた。

  • デビュー作ということもあり著者のマイナスのパワーがものすごいことになっていて面白かった。
    この方の物語は読後しばらくすると全く内容が思い出せなくなってしまうのだがおそらくこの作品もそうなりそうな気がする。
    ある日偶然にも銃を手に入れてしまった男の話。
    こんな内容は世にも奇妙な物語で観た記憶がある。
    後半主人公の感情の揺れ動きからくる行動を運命のように諦めたり従ったりする考えは勝手に共感できてしまう。

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著者プロフィール

一九七七年愛知県生まれ。福島大学卒。二〇〇二年『銃』で新潮新人賞を受賞しデビュー。〇四年『遮光』で野間文芸新人賞、〇五年『土の中の子供』で芥川賞、一〇年『掏ス摸リ』で大江健三郎賞受賞など。作品は各国で翻訳され、一四年に米文学賞デイビッド・グディス賞を受賞。他の著書に『去年の冬、きみと別れ』『教団X』などがある。

「2022年 『逃亡者』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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