- Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309411750
作品紹介・あらすじ
母なる聖地熊野と訣別し、若者と老婆たちはセックスと御詠歌の旅に出る。神の地皇居まで、何を探し求め彷徨うのか。聖俗混淆の流離譚。
感想・レビュー・書評
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国石井千湖の沈思読考#1 推しもゆのつぎの小説の人の好きな本
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やはり、風景描写が美しい。おばあさんたちの様子が淡々と描かれているのに情緒を感じてしまう。
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盗んだ冷凍トレーラーで七人の老婆を載せ全国の霊場を巡るロードノベル。こう書くと何が何だかわからないが読んでも何が何だか何だか分からない。しかしほかの中上作品と同様言い知れぬ迫力と熱量は備わっている。
根底にあるのは「路地」すなわち被差別部落の紀州に土着したサーガであるが、そこを流離し流浪し性と暴力を伴いながら根無し草のように振る舞う。オバたちの神仏に献身する姿と傍若無人な振る舞いの対比が印象的だ。世俗を超越した存在のようで姿かたちは極めて俗物的なオバらを、享楽を追い求めるツヨシと田中さんが導くさまが本作品の複雑性を織り成している。 -
中上はまだそれほどたくさん読んでいるわけじゃないけれども、これは今まで読んだなかではいちばん面白かった。就活の合間合間に読んだから細部をしっかりおぼえてないのだが、冷凍トレーラーは重要な役割をもっていたように思う。聖と俗が常に一体となって描かれていた。老婆らはとにかくグロテスクだったが、最後は妙な寂しさのようなものが残った。
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役名:ツヨシ
婆さん何人もトレーラーに乗せて熊野から東京まで行く話。
熊野の神のように神々しく荒々しく美しい男。 -
老婆萌え
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携帯もなく、Nシステムもなく、駅の自動改札もなく、ソープがトルコだった昭和50年代を舞台にした神話のような小説。熊野の被差別部落の老婆達を盗難車の冷凍トレーラーに乗せて、路地の若衆が伊勢・一宮・諏訪・唐橋・青森・東京を巡る旅に出る。老婆たちは、行く先々の土地でトレーラーを駐車する場所を「路地」にしていき、若衆は女を漁る。特定の主人公がいるわけではなく、常に物語の中心にあるのは冷凍トレーラー。面白かった。
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聖と俗は表裏一体。
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中上健次版・ロードムービー。
熊野を離れ、伊勢や東北、そしてゴール(?)は東京の皇居。
改造した冷凍トラックの荷台に7人もの老婆が乗っている、という妙にシュールな設定と、実在の地名との対比が面白かった。
中上健次におけるフォークナーの影響はあちこちで論じられているが、今まで読んだ中ではこれが一番フォークナーっぽい気がする。
(それにしても、こんなところで「雄琴」の地名を目にするとは)
(これが書かれた当時から有名やったんか……) -
路地から冷凍トラックの荷台という空飛ぶ乗り物で飛び立った7人の老婆(オバ)と、それを運転する4人の若衆による巡礼のロードムービー。
自分からはかけ離れた異世界における倫理や死生観のように感じる一方で、おそらく同国人だからこそ僕の感情に直に触れてくるように共感が呼び覚まされざるをえない、という路地ものあの感覚は、路地と外界の境界が接触し続ける本作では、より一層色濃く感じられる気がする。
馴染み深すぎてもはや嫌いなくらいな感覚だったはずなのに、その空気感に包まれたときに心の奥底ではいつのまにか安心を感じていることに気がついてハッとする。
そして物語の時代がETが公開された頃であるという「近さ」になぜか衝撃を受けた。
冷凍トラックの荷台から7人の老婆がわらわらと出てくるイメージは滑稽でグロテスク。
著者プロフィール
中上健次の作品





