- 本 ・本 (240ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309411767
感想・レビュー・書評
-
単なる歴史の証言者ではない。読み進むごとにそれぞれの人物像が、風景画が、描き出されていくよう。素敵な文章。
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
平素で素朴な文体なのに、深みが感じられるエッセイ集。
前半は、友人や先輩などとの交友回想録。フランス在住中に出会ったかなりの奇人たちとのやり取りが、ドラマさながらに語られている。後半は1976年に地方新聞の夕刊で連載したコラム。こちらはユーモアとペーソスを交えた自叙伝と言った風だ。
読んでいても決して「文才がある」という印象を受けるわけではないのに、深みがあって心に残る。画家ならではの視点で語られる話ももちろんあるのだが、深みの理由はおそらくそれだけはない。
軽い書きぶりの中、時折り顔を出すハッとさせられるような指摘。それが物事の本質、人間の本質をかなり突いていることがその理由だろう。軽い文体で油断していると、友人たちの持つ一面を冷酷なまでにあぶり出してくる。ユーモアあふれるエッセーの次に、持論をきっちり展開するエッセーが続く。読者をハッとさせ、読ませてしまう。そんな魅力あふれるエッセイ集だ。 -
僕は野見山暁治という人物について知らない。
ただその名を耳にし、1枚の絵を眺める機会があったからこそ、手に取った1冊。
彼にまつわる人々と出来事が
野見山暁治という人物をカタチ作っていた。
戦争、病気、モラリスト、妹の家の居候、絵描きという職……。
ひとつひとつのエピソードがまるで、筆でなぞる1本の線のように、彼の姿を描き出す。
臆病な少年で、少し頑固な老人で、自分勝手さとそれと相反するような後ろめたさを秘めた人物。
もう何枚か絵を観てみたいと思った。 -
画家の描く、400字。どうしてこれが面白い。ちょっと物事を見る角度が違うのか。野見山氏が画家の目で切り取り描いた、故郷福岡(飯塚)、戦争、パリ、そうしてよもやま。時に寂しいく、ときに楽しく。400字は色鮮やかである。
-
日曜朝のNHK「日曜美術館」でこの画家のことをもっと知りたいと思った。本屋で画集を開くことはあったが、わからない絵ばかりが並んでいた。今回、達意の随筆で、そのわからなさの理由が少しだけわかった。この画家の文章に耽溺する1週間だった。
著者プロフィール
野見山暁治の作品





