- Amazon.co.jp ・本 (216ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309412054
作品紹介・あらすじ
「こころ」とは、内蔵された宇宙のリズムである-おねしょ、おっぱい、空腹感といった子どもの発育過程をなぞりながら、人間の中に「こころ」がかたちづくられるまでを解き明かす解剖学者のデビュー作にして伝説的名著。四億年かけて進化してきた生命の記憶は、毎日の生活の中で秘めやかに再生されている!育児・教育・保育・医療の意味を根源から問いなおす。
感想・レビュー・書評
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人の心について、始まりから考えるというのはどうすることかという、人類なら人類の生まれてきた「時間」を、こころの姿で気づかせてくれた本です。
人の様子に、例えば「~障害」とか「~異常」とかレッテルを貼って、わかった気になって安心する風潮がありますが、人間の心の始まりはもっと深いし、もっと遠いところにあることを考える必要性を教えてくれた本です。
易しいけど、名著だと思います。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
先に『胎児の世界』を読んでいたので、重複した箇所は斜め読み。お子さんを観察し、考察した内容(こころの形成)は興味深かった。講演内容を書籍化したため、語り口は柔らかく読みやすい。今なら明らかにセクハラ発言! と言われかねない表現もあるが、当時は許される(細かいことに目くじら立てない)時代だったんだろう...。
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この本は、あの『胎児の世界』の著者、三木成夫先生の処女作らしい。しかも、さくら・さくらんぼ保育園での講演を原稿化したものとのこと。世の中には、表に出ないようなところで、素晴らしい仕事をしている人がいるんだなと改めて思う。
三木成夫せんせいは、ウィキペディアをみると、あまりよい印象のことを書かれていないようだが、ボクは本著を読んでも、今後見直される分野であり、著作だと思う。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%B8%89%E6%9C%A8%E6%88%90%E5%A4%AB
「内臓感覚」(膀胱感覚、口腔感覚、胃袋感覚)から、「内臓とこころ」の問題へ、そして「こころの形成」へと話しは展開する。
三木先生は内臓は小宇宙だという。「すべての生物は太陽系の諸周期と歩調を合わせて”食と性”の位相を交代させる。動物では、この主役を演ずる内臓諸器官のなかに、宇宙リズムと呼応して波打つ植物の機能が宿されている。原初の生命球が”生きた衛星”といわれ、内臓が体内に封入された”小宇宙”と呼びならわされるゆえんである」と。宇宙のリズムは生命の波動と切っても切り離せない関係にあるということだ。
本書では言葉と思考についても記述がある。イメージ、模様、名前、おもかげ、象徴、類似。編集工学に結びつく断片がちりばめられている。
う~ん、もう少し経ったら、もう一度読んでみよう。 -
母性本能や、母乳についての記述は、現在の一般的な考え方に対して、そぐわない点もあるし、あくまで、三木成夫さんの、「気づき」を講じたものであるため、学術的な裏付けには乏しいが、それでもなお、学ぶことの喜びに満ちた名著として、輝きを失わない本だと思った。
学ぶこと、そして、知識を蓄えることで得られる最大のご褒美は、まるで関係ないような一つ一つの点であるところの知識同士が、思わぬところでつながりを持つことに気づく瞬間の喜びにあると思う。
この講演の中で、三木さんが語るのは、そうした気づきから得られた、壮大な仮説だが、その語り口からは、常に喜びが迸り出ている。
普段顧みられない内臓の感覚や、太陽や月などの天体の運行が密接に関わっている小宇宙としての人間の体、子供の発育に人類と生物の進化過程の遠大な歴史を見てとる、三木さんの肚に宿る深く敏い知識に、終始圧倒されつつも、知る喜びに満ちた読書だった。 -
三木成夫の『胎児の世界』に続き、少し間を置いて読んだ。三木を紹介してくれた友人の強い勧めがあったからだが、前著でおおよその世界観は構築されているので、本書のような講演原稿に新たな発見があるかという点で少し懐疑的だった。
結論としては読んでおくべき本だと言えるが、『胎児の世界』だけでも著者の世界観は理解できる。しかし、学説の背景を知り、彼の考え方を深く知るには本書の併読は有益だろう。
あとがきで養老孟司も言っているように、「体壁系の脳」と「内蔵系のこころ」とが補完的に成り立たせているものこそ人間の思考と行動に他ならないと説く三木の理論はとても重要だ。こうした発想はこれまでにないだろう。
理屈というのは論理的に整理されるべきで、感情的なものに左右されてはいけないと、それこそ刷り込みのように植えつけられた一般人にとり、「人間も宇宙が生み出した一生命形態である以上、宇宙の波動から外れてその存立はない」という論法は極めて単純明快と言える。
DNAに刷り込まれた生命体には「喰う」「休む」「作る」という生命本能の避けようのない図面が組み込まれている。著者のベースには「生命5億年の進化の道筋が、胎児のわずか1週間の細胞分裂のなかに組み込まれ、発露する」という厳然たる事実の裏付けがある。まさに「個体発生は形態発生を繰り返す」である。
ただし、疑問がないわけではない。人類がこれまでの進化の道筋を辿ったということを前提にした場合でも、それは生命体(あるいは未来的にそれを上回る<何か>)の絶え間ない進化の一過程(途上)でしかない。この先、想像のつかない外観を得、想像のつかない発想をし、想像のつかない価値感を獲得してもなお、進化の先にある新たな存在は変わることなく5億年の(宇宙的)波動を背負い、ゴールのない時間という海を泳ぎ続けることになる。もっとも、著者はその先の先を無視しているわけではない。唐突な死を迎えなければそこにも言及してくれたのかもしれない。
いずれにせよ、本書を通じて新たな課題を得られたことには素直な感謝を献げたい。 -
むずかしかった(笑) "はらわた"と宇宙の話です(笑)
・なめる、という世界は大切です。けっしておろそかにしてはいけない。(←(子供)が物や畳の目をなめる話)
・指差し、は心の目覚め
・コレナーニ、ミミズ
ヒトの声、その肉声の持つ、心地よい"ひびき"でもって、もうすっかり満足してしまうのです。
・香りを聞く、味を見る、感触を味わう
・言葉というものが、心情の育成にとって、どれほど大切か、ひとつひとつの言葉の持つ「ヒビキ」ただそれだけを、先に叩き込んでおくのです。やがて、そのような心に育ってくるのですから……
・2歳から3歳までの言語習得の期間が、どれほど、心を養うものにとって決定的な意味を持つものであるか…どうか大切になさってください。
・自分を仮想の話し相手にして"無声の対話"を交わす -
2016.4.17
に書いた読書メモ。
解剖学の本だからなんて敬遠したら、人生、損するかも。
生命の神秘を楽しく垣間見れる。
なんで小中学校で、こういう授業が無いんだろう。おもしろおかしい。
内臓の感受性。
世界は舐め回して知覚する。
デッサンが上手い人は乳児期にいかに畳の目を舐め回したか、による。
なんて論が展開される!
舌と腕は、脊椎動物の進化において、兄弟みたいなものらしい。
そういえば、私は今でも色んな物を撫で回す。触って確かめたい衝動に駆られ。。
排泄、食事、睡眠、出産、などなど身体のふしぎに関するあれこれ。
目から鱗と幸せな笑いの連続。
生きとし生けるもの全てが愛おしくなる。
自分の体も。別のいきものの体も。
子供たちや妊婦さんももっともっと大事にしなきゃと思うので、是非多くの人に読んで欲しい。
子育て中の人にはイチオシ。
表紙の絵の謎も巻末近くに出てくる。
35年前の名著だが、未だに色褪せない。すごい。三木先生。
「内臓とこころ」
三木成夫著
築地書館(1982年)刊行
河出書房、2013年 -
教養文庫シリーズを持つ出版社6社の共同企画「チチカカコヘ」からの一冊。かなり長いこと、ワタシの読みたい本リストに入っていて、「チチカカコヘ」に押されてようやく手にした次第。
「人間は宇宙のリズムを内蔵している」なんて言われた瞬間、宇宙モノ好きなワタシはもうノックアウト。ものの例えで、「小宇宙」という表現が使われたりするけれど、文字通りの「小宇宙」が自分の体内にあると思うと、急に自分が大きな存在になった気がしてくる。
解剖学者である著者は、我々すべての人間は宇宙によって創造されたのだから、我々に宇宙のリズムが内蔵されているのが当然、という信念で人間の行動を丹念に解き明かしてくれる。保育園での講演の書き起こしなので、例えとして使ったのは、子どもの成長過程における「おしっこ」「おっぱい」「空腹」。ここから生命4億年の進化の歴史へと誘ってくれる語りは、ユーモアを交えて優しく柔らかい。その場でその講演を聴きたかった。 -
よく分かんなかった。内臓感覚は小宇宙でいろんな周期で動いているってことはなんとなく理解できたかな。人のリズムが25時間らしいのでちょっとずつズレてしまうのは致し方ない。