- Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309412207
感想・レビュー・書評
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住居は生活の容器であり、施主・住人の生活に合ったものでなければならない、というのが根底に流れる"新・住居学"の思想。
流行のパターンを無考えにとりいれるのではなく主体的に吟味し、分かりやすいスペックに溺れず個々の生活に合わせた最適解を追求し、ひいては住まい方そのものについても思考停止せずに自らの意志を持って考え抜かなければならない。
特に印象深かったのは、「住宅をどう建てるか」という問題ではなく、「そもそも家にどう住まうべきか」、という姿勢を一貫してとっている点。だからこそ第一章「住み方の姿勢について」では新築の話を超え、たとえ仮の住居だとしてもその中でより良い住み方を目指すことができないのであれば、新しい家の本当の住み手になる資格もない、と喝破する。この62〜67ページは、現代においてそのまま通用する素晴らしい指摘だと思う。
(他に特に良かった部分としては、P97〜108のリビングルーム談義など)
また、第一章冒頭の部分、「建て売り住宅へのひとこと」「土地のミステリー」で語られているように、マクロな社会の流れ、根本的な変化に対して、固定観念に囚われずに"真にあるべき姿"を考えようとするアプローチが良い。自ら一戸建て住宅を設計する立場でありながら、一戸建て住宅を前提とする社会の潮流・制度そのものの功罪を問おうとする姿勢は、単なる建築家を超えた思想家の域。
もし自分が家を建てるなら、こういう人にズバズバと叱られながら議論して決めたい、と思った。
(宮脇さんのような人が最近はやりの『家づくり解剖図鑑』『間取りの方程式』といった本を見たらどう見えるのか、というのがとても気になる)詳細をみるコメント0件をすべて表示