日曜日の住居学 ---住まいのことを考えてみよう (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 209
感想 : 12
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  • Amazon.co.jp ・本 (224ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412207

作品紹介・あらすじ

本当に住みやすい家とは、を求めて施主と真摯に関わりつづけてきた建築家が、個個の家庭環境に応じた暮らしの実相の中から、理想の住まいをつくる手がかりをまとめたエッセイ集。ハード面よりもむしろソフト面にスポットをあてた、住宅設計のプロの代表作。

感想・レビュー・書評

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  • 住居は生活の容器であり、施主・住人の生活に合ったものでなければならない、というのが根底に流れる"新・住居学"の思想。
    流行のパターンを無考えにとりいれるのではなく主体的に吟味し、分かりやすいスペックに溺れず個々の生活に合わせた最適解を追求し、ひいては住まい方そのものについても思考停止せずに自らの意志を持って考え抜かなければならない。

    特に印象深かったのは、「住宅をどう建てるか」という問題ではなく、「そもそも家にどう住まうべきか」、という姿勢を一貫してとっている点。だからこそ第一章「住み方の姿勢について」では新築の話を超え、たとえ仮の住居だとしてもその中でより良い住み方を目指すことができないのであれば、新しい家の本当の住み手になる資格もない、と喝破する。この62〜67ページは、現代においてそのまま通用する素晴らしい指摘だと思う。
    (他に特に良かった部分としては、P97〜108のリビングルーム談義など)

    また、第一章冒頭の部分、「建て売り住宅へのひとこと」「土地のミステリー」で語られているように、マクロな社会の流れ、根本的な変化に対して、固定観念に囚われずに"真にあるべき姿"を考えようとするアプローチが良い。自ら一戸建て住宅を設計する立場でありながら、一戸建て住宅を前提とする社会の潮流・制度そのものの功罪を問おうとする姿勢は、単なる建築家を超えた思想家の域。

    もし自分が家を建てるなら、こういう人にズバズバと叱られながら議論して決めたい、と思った。
    (宮脇さんのような人が最近はやりの『家づくり解剖図鑑』『間取りの方程式』といった本を見たらどう見えるのか、というのがとても気になる)

  • 少し古い本なので現在の家造りの考え方とは多少違っているとは思うが、日本人としての居住に関する考え方や大切にすべきことなどはその通りだと思われるところが多々ある。

  • リビングの使い方、週末の過ごし方(外にでることが多いなら狭い家でもいい)などによって、どんな家にするかが変わってくる。とくに、「大テーブルのすすめ」が参考になった。大きなテーブルで家族がそろって作業をする、そんな憩いのリビングにしたいと思う。

    ほかにも、設計や今の住居が定着した裏話などもおもしかった。

  • 面白い

    建築についてズブの素人なのでざっくりわかってよかった。
    uniqlo +jを買うのに並んでいたら一冊読み終わった。

    書いてあったトピック

    理想と現実の対立
    供給側が大衆の教養のなさに付け込み、悪い質のものが蔓延る
    だから真面目にいいものを作るにも売れず作れない。

    ものと暮らしの順序
    豊かな生活とは物を所用することではなく、どう暮らすかということがまずはじめになければいけない。

  •  坂口恭平を読んで、建築家の本をも少し読みたいなと、つらつら本屋で眺めて手にしたのが本書。

     坂口の本『TOKYO一坪遺産』の中の、この発想がよいなと思ってメモってある部分がある。

    「人間はただ広い空間に住めばいいのではなく、人体の延長線上にあるものと捉え、自らの手で作り、さらに改築、修繕を繰り返していけば、その人それぞれに合った、その人独自の家ができあがる」

     本書の中でも著者は、
    「まず第一に家には必ず改造の必要が生じる — ということで、これは僕自身の体験から何度となく自分の設計した住宅を改造する機会があり、それを通じて人間は変化し、変化しながら自分の変化に合わせて周囲の環境を変えていく本能と権利があることをさとらされた(動物は全部本能的に自分たちの巣やその周辺をそうしている)。」

     1980年代の本だ。おそらくいろんな媒体に書いた文章を集めてのことだろう。となると、70年代ころの思想、社会情勢に影響を受けた内容だということは差っ引いて読んだほうが良さそうだ。
     時代は高度経済成長をまっしぐら、後のバブル景気を迎えるまでの果てしない上昇機運の途上か。人々の暮らしは豊かになる一方で、狭い国土の日本おいて、国家としての住宅供給政策の脆弱さ、持ち家政策しかない視野の狭さ、そもそも街づくりに対するビジョンの欠如を多いに嘆きつつ、住宅設計のプロとして、理想の住まいについての思いを綴る、タイトルの、のんびりした印象とは異なる、なかなか骨太なエッセイだ。

     半世紀近く前の時代背景もあってか、女性や家庭の主婦に対してはなかなか辛辣で、「日本の家が、”女の家”になってしまったということに関しては何度も書いた」と、今、公然とこの主張を振りまわせば、まったく客の寄り付かない建設事務所になっていたのではないか?(笑)

     それでも、著者の本当に住みやすい家を求めて、時には施主とも対立しながら、それぞれの家庭環境に応じた、あるべき住まいのかたちの提案は示唆に富んでいる。
     なぜリビングルームなのか?その機能は?その機能はお宅に必要? と、とことん施主と議論を重ねていく。 家とは、棲まいとは、巣とは・・・。一度、発想をゼロにして考える必要性に気付かされる。
     
     坂口恭平も宮脇檀の影響を受けているのかな?「家とはこうあるべきという思い込みから離れてゼロから考えて作る」と言っていた。
     いずれにせよ、パラパラと立ち読んで、これが良いなと思った本の中に共感できる記述があるのは嬉しいし、褒めたくなるよね、自分の選球眼の良さ?(いや、単なる偶然でしょ・笑)

  • 日本の住宅は、日本の風土に適しているとも限らない外国の流行り、また供給側の都合でデザインされていることが多い。
    読みにくくて大変だった。

  • 1983年に書かれた本ということは、約40年前くらいに書かれた本だが、ここに書かれている問題点は現在も依然としてむしろ酷くなって残っている。せめてもの救いは、シンクがダブルではなくシングルが主流となっていることか。

  • 前に図書館で気になって。建築家の発想とくらし。
    なんばstd (結局買わず)

  • 20150108読了
    1983年出版、1995年文庫化、2013年ふたたび文庫化。30年以上前の住宅事情に基いた内容。●P62住み方の姿勢について 現代日本の住まいの内側は神経がゆきとどいていない、つまり住み方が汚い。プロに頼めば家そのものは綺麗なものができるが、住みこなせない住み手が多い。与えられた生活空間を精一杯活用し、生活の場をピシリと掌中にした生活者であれ、という話。●P165新建材のこと 近頃の光物を好む風潮に関して。終戦によって既存の価値観が根本から崩れ去ることを体験した戦中派の特徴は ・なにがいいものかの価値観を失っている ・そのため、メーカーやCMの情報を受動的に受け止める癖がある ・概して、新しいものはいいものだ、ものが多いことはいいことだと信じ込まされている ――という分析。●P211ダブルシンク この時代、シンクはダブルが流行っていた様子。著者に言わせれば「日本の料理および日本の主婦の堕落がダブルシンクの母胎」。このころ、シングルシンクの復活の兆しがみえてきたらしい。

  • 中江有里さんのお勧め。

    ちょっと内容が古くなっているところもあるが、
    まあ確かにおっしゃるとおり。
    東北大震災以前に、
    防災における建物や家といったハード面ではなく、
    人間関係、地域社会といったソフト面の重要性を説いているのは、
    達見であろう。

    でも、家を建てちゃった人、マンションを買っちゃった人は読んじゃいけない。
    そりゃ和室があるには越したことがないし、
    リビングはいらないかもしれないからね。

    でも、テレビに加えてパソコンという前代未聞の要素が入ってきた
    現代生活において、
    日本の気候や風土に合った理想の「家」の正解を
    示してほしかった。

  • 自分のゼミの教授の専任の教授が宮脇壇。ということで宮脇ゼミのサーベイランスには何度もお世話になりました。

    以前から今のスクラップ・アンド・ビルドの建設業に疑問を抱いていた。しかし宮脇氏の指摘は、私自身、耳が痛い。本の終わりは、「料理の視点から住宅を考えた方がいい」とある。
    今の建築の通例はどれも欧米のパクリばかりで、歴史も浅い。日本の気候・文化に適応するにはまだ時間がかかる。そして未熟。

  • 時代が過ぎてしまった話もあるが、住宅産業を嫌い、住まいに必要なものを考え続けた姿勢に学ぶところが多い。

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著者プロフィール

1936-1998。建築家・エッセイスト。モダニズムのデザインに風土性・生活感を重視した住宅設計を追求した。第31回日本建築学会賞作品賞受賞。

「2013年 『日曜日の住居学』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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