すいか (1) (河出文庫)

  • 河出書房新社 (2013年8月6日発売)
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感想 : 65
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  • 本 ・本 (280ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412375

感想・レビュー・書評

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  • リアルタイムで観ていた。

    もう17年も前なので、不出来な頭ではほとんど覚えていなかったけれど、あの頃、毎週、正座をして、この『すいか』の世界に触れていたときの気持ちを思い出した。

    ドラマを観ている間、吸って吐いている空気まで特別になるような、煌めいた時間を過ごさせていただいた、自分にとって大切な存在のドラマ。

    すべてはこの木皿泉さんのシナリオから始まったんですね。

    名シーン、名台詞のオンパレードで毎話泣いてしまった。
    ド派手な展開もないのだけれど、小さな日常を淡々とコミカルに描いていて、そういう日常が奇跡なんだよ、と教えてくれる。
    木皿さんのシナリオは甘さと苦さとしょっぱさが、ちょうどいいさじ加減でミックスされていて、毎回後を引くのだ。

    地味なドラマなので、肩透かしをくらう人もいるかもしれないが、ハマる人はものすごくハマる(かもしれない)。

    私のエバーグリーン。

    • 5552さん
      キリコさん、こんばんは。

      17年ぶりの『すいか』はやっぱり大好きで、正直ホッとしました。もしかしたら思い出補正入ってるのかも!と危惧し...
      キリコさん、こんばんは。

      17年ぶりの『すいか』はやっぱり大好きで、正直ホッとしました。もしかしたら思い出補正入ってるのかも!と危惧していたので。
      木皿さんの言葉はどうしてこんなに胸に沁みるんでしょうね。

      確か『すいか』は『やっぱり猫が好き』に出演されていた小林聡美さんが主演されるというので楽しみにしていたのですよ。『猫』も木皿さんが担当された回があったそうで、ああ好きなものってつながってんだな、と思いました。

      図書館の件はご縁がなかったのかもしれませんね。(私が言うのも変ですが。)
      ご自身や御家族の病気の事や、煩わしいコロナのこと、キリコさんがものすごく考えて決断されたのがレビューを通じて伝わってきました。

      『Q10』でも「後悔しないためには、死ぬほど考え抜くこと」というような台詞があったような気がします。ほんとそうですよね。

      これからも影ながら応援しています。
      無理をしないでくださいね。

      2020/08/17
  • 木皿泉さん初読み。以前から気になっていた本書をようやく読めた。
    木皿泉さんのお名前は知っていたが、夫婦脚本家であることは全く知らなかった。。本書は同名のドラマ(小林聡美主演)のシナリオだが、ドラマは見たことがないまま読んだ。三軒茶屋にある現代でいうシェアハウスを舞台にしたコメディタッチの話。個性豊かな住人のひと夏をテンポよく描くストーリーは、軽快で面白かった。勤めていた銀行の3億円を着服し逃亡生活を続ける主人公の同僚はどうなってしまうだろうか…。後半が収められている続編も読みたい。

  • 台本のようになっているので、
    始めは読みづらさがありましたが、
    慣れてくると面白いし、クスッと笑えるし
    しかも深い。早く下巻読みたい

  • ドラマのシナリオ本。最初ちょっと読みづらかったけど、すぐになれた。賄いつきの寮に住む女子四人組の日常。吉本新喜劇を見ているみたいだった。

  • 待ちに待った「すいか」ノベライズの文庫化!!

    あのすいかの世界を文章で噛みしめて脳内で
    映像を展開できる幸せ♡

    古い木造の家に小さな庭、伸び放題のひまわり、
    「ハルマゲドン」と落書きされた塀。

    プールの水の入れ替えを缶ビール片手に日がな一日
    眺めている絆ちゃん。
    水を抜いてゴシゴシ洗って、また水を張って。
    溜まったものが流されて、空になってまた満たされる。

    庭の雑草をハート型にくり抜いたように整える響一くん。
    その真ん中めがけて玩具の弓矢を放つ夏子さん。
    「もう帰ってちょうだい」としか言わない、バー「泥舟」のママ。

    「忘れたい物は、みんな埋めていいの。
    みんな、何かしら埋めて生きてるもんです。
    安心して忘れなさい。私が覚えていてあげるから。」

    夏子さんの深い深い懐と、1つ1つのエピソードが
    じんわりとあったかく、滋味深くて愛おしい。

    個性的であったかい住人のみんなとカレーの匂い。
    本の重みで抜けた床の穴越しの大らかなコミニケーション[笑]
    カレーと大トロ、古い木造の部屋とシャンデリア。

    嬉しいと言ってもらうと、こっちも嬉しい。
    ハピネス三茶には大切なことが詰まっている。

  • 大好きな作品。
    ドラマでみて、dvdで何度も何度もみてきた。
    おすすめの作品。

    台本的な書き方なので
    気になる人もいるかもしれないけれど。
    映像作品を何度も見てきたので
    キャストの声が聞こえてくるように感じる。
    ちょっとしたセリフや
    やり取りの違いにも気づけて面白い。

  •  燃やしたり埋めたりしたいものを私も今、抱えてる。
     誰かのためだけにも生きられないし、自分のためだけにも生きられない。どうしても受け入れられないものとものすごく大切にしたいものとがせめぎ合うときって、苦しい。
     幸せって、大きなすいかを持ち帰る場所があるってことなんだなって、この本は気づかせてくれる。
     辛いことにとらわれるのはもうやめたらどうかな、そう思える。

  • 2003年にテレビドラマ化した作品

    これまでの人生で一番好きなドラマが"すいか"です。シナリオ本は大人になってから読みました。

    心に刺さるセリフが多く、
    人生で迷った時、困った時支えてもらいました。
    今でも大切な言葉として留めています。

    何でこんなにこの作品が好きなんだろうと
    考えてみるのですが、
    なかなか上手くまとまりません。

    誰のことも否定せず、
    優しさの中に一本筋の通ったセリフたち

    ドラマもオススメですが、
    ぜひ書籍と合わせて
    映像と文字とで味わっていただきたい



  • 去年話題になったドラマ『団地のふたり』を、年末の一挙再放送で録画して、年明けからちまちま見ていたのですが、キョンキョンと小林聡美のかけあいを見ていたらどうしても思い出すのは、大好きだった2003年のドラマ『すいか』

    大袈裟だけど、今までの人生で、一番好きだったドラマは『すいか』だと言っても過言ではない、それくらい大好きで、毎週泣きながら見てました。思い出したらもう一度見たくなり、Tverで探したら、あったよ、すいか!…んん?でもなぜか、1~3話と、8~10話しかなくて、4~7話がないぞ???

    仕方ないので見れる分だけ見て、やっぱり号泣しましたが、抜けちゃった4~7話も気になるなあ、そうだ、そういえば脚本が本になってた!あれ読めばいいんだ!…というわけで、前置き長いですが、本書を読むことにしました。

    上巻収録分は前半の5話まで。一応ざっくり登場人物設定を説明しておくと、34歳独身実家暮らし信用金庫で働く早川基子(小林聡美)は、過干渉な母親・梅子(白石加代子)から自立すべく、偶然チラシでみつけた「ハピネス三茶」という賄いつき下宿に入居する。

    ハピネス三茶の大家は、気まぐれな父親が海外に行ってしまったため、娘のゆか(市川実日子)が一人で切り盛りしている。入居者は、学生時代から教授になった今も住み続けている夏子=通称・教授(浅丘ルリ子)と、エロ漫画化で双子の姉を自殺で亡くした絆(ともさかりえ)がいる。

    そして早川基子の勤める銀行の同期でいつも一緒に昼休みお弁当を食べていた馬場チャンこと馬場万里子(小泉今日子)は、ある日突然3億円を横領して逃亡。指名手配される身となる。逃亡先から時折、基子に電話や手紙をよこす。

    その他、おもなレギュラー陣は、教授の教え子で、ゆかの父の友人でもあり、雑誌編集者なのにいつもハピネス三茶に入り浸っている間々田(高橋克実)、その娘の元カレで今は絆に好意を持っている響一(金子貴俊)、みんなのいきつけの近所のバー「泥舟」のママ(もたいまさこ)、バーテンダー(井澤健)、馬場万里子を追う刑事の生沢(片桐はいり)など。

    基本的には34になって遅すぎる自立をした基子の成長物語。馬場ちゃんの件をのぞけば、ハピネス三茶の住人たちをとりまく日常的な悲喜こもごもの物語。でもただそれだけの物語の細部いたるところに、人生の真理や、そう、そうなの!という共感、そう言ってほしかったの!というツボがちりばめられていて、ささいなエピソードで私はいちいち号泣してしまう。

    1~3話に関してはちょうどドラマを見たところだったので、登場人物の声や仕草でまんま再現された。すごく好きだったシーンをあげておくと、3話のね、駅のホームで転んだ小学生の持っていた手提げが切れて中身がバラバラになって途方に暮れて泣いていたところに馬場ちゃんが居合わせて、女の子の散らばった荷物を自分のヴィトンの中身を出して入れて渡してあげたあと、女の子がお礼に、包み紙をむいた飴(チェルシー的なやつ)をふいに馬場ちゃんの口に押し込む場面。これはさ、やっぱドラマで見るほうがキョンキョンの表情が素晴らしいんだけど、その一瞬に、いろんな感情がぶわーって溢れちゃうの。女の子を助けた馬場ちゃんはカッコイイお姉さんであると同時に、彼女自身が本当はこの女の子と同じように途方に暮れて泣き出したいくらい寂しくて、助けてほしいのはほんとは馬場ちゃん自身だってこと、誰かがまだ無償の優しさを返してくれたこと、世界はまだ捨てたもんじゃないけど、その世界を自分は捨ててきたこと…。この場面ひとつで馬場ちゃんの孤独が浮き彫りになるとても切ないシーン。

    あと同じく3話で、部長から引っ越し祝いに何でも欲しいものを言っていいと言われた基子が、「誉めてください」ってお願いするところ。いきなり言われても困りますよね、そう思ってメモ書いてきましたって基子が書いた誉め言葉を部長は棒読みするんだけど(いつも頑張ってくれてありがとう的な)途中でね、そこに本当に基子への感謝の気持ちが乗っかってきちゃうの。部長がちゃんと基子を誉めてくれて、基子も嬉しくて、そしてそのあとふと部長がさ、馬場ちゃんにもこんな風に言ってあげたら良かったのかな、そしたら彼女は三億円持って逃げることもなかったのかなって呟いて、なんかもうねえ、うまくいえないけどこういうシーンがたまらなくて号泣しちゃうの。いい年した大人になってもさあ、誰かに褒められたいよね、褒められたら頑張れるよね。私もずっと仕事つらくてつまらなくてしんどくて、なんでこんなに不満なんだろうと思ったときに、ああそっか、私誰かに褒めてほしかったんだ…って思って。

    「団地のふたり」の二人は、55歳の設定で、恥ずかしながらわたくしドンピシャ今年で55歳になって団地に住んでるので(笑)いろいろと、彼女たちの状況が身に沁み、そして22年前のこの『すいか』の二人は34歳、見ていた当時の私も30代前半で、なんかこう、同時代を生きて来た感というかね、ハヤカワと馬場チャンと、なっちゃんとノエチ、どちらも自分自身のようでもあり、ずっと一緒にいた友人のようでもあり、ドラマの登場人物なのに、そこにいる人のように今も感じてしまうのです。

  • 人生のシンジツが詰まってる。

    ああ、こうだったらな。
    私も、こんな風に言えたら。
    ああ、そうだったな。
    私も、実はそうだったんだ。

    登場人物全員が、自分自身のように思える瞬間がある。
    痛いほどに、共感してしまう。

    不器用で人間臭くて、でもあり得ないほどまっすぐ自分に正直な登場人物全員を、全力で応援したくなる。


    カレーの匂いがして、みんなで食べるすいかが見える。
    暑い日差しに焼かれ、蝉の声が聞こえてくる。
    少し、涙が出た。

    ある意味、夢物語。
    そうなのだけれどその夢は、自分の現実に戻ってまた、踏み出していこうという気にさせてくれる。

    今、このお話に出会えて良かった!と、

    教えてくれた人に、感謝。
    どうもありがとう。

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著者プロフィール

夫婦脚本家。ドラマ「すいか」で向田邦子賞、「Q10」「しあわせのカタチ~脚本家・木皿泉 創作の“世界”」で2年連続ギャラクシー賞優秀賞。他に「野ブタ。をプロデュース」等。著書『二度寝で番茶』など。

「2020年 『さざなみのよる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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