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Amazon.co.jp ・本 (176ページ) / ISBN・EAN: 9784309412610
みんなの感想まとめ
物語のテーマは、かぐや姫という少女の多面性を描き出すことにあります。川端康成による現代語訳は、清涼感あふれる文体で、無垢さや一途さ、さらには残酷さを併せ持つかぐや姫の存在感を際立たせています。古典の現...
感想・レビュー・書評
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川端康成の手になる、竹取物語の現代語訳。清涼な文体で色々な少女を魅力的に書き上げてきた氏らしく、清廉無垢だけど不可思議で、実は頑固で、そして、時に残酷ですらある「少女性」の象徴としてのかぐや姫の存在感が何より際立った作品。
最近思うのは、小説家による古典の現代語訳って、クラシック音楽のソロコンサートみたいなものなのかもしれないということ。素材は同じはずなのに、その作家(奏者)が積み重ねてきた個性や技量を駆使して新しい解釈や色彩を自由に加えることで、それぞれ全く別の魅力を持ち、変容していくさまが。
その結果、「少女らしい無邪気さ、一途さ、そして、残酷さ」が強く押し出された川端康成のかぐや姫は川端康成だけのものだし、他の小説家のかぐや姫はその小説家だけのものとなっていて、結果的に、全く違う物語のような印象を受けるのだから不思議。
かぐや姫を、人間の常識をどうにも理解できない宇宙人のポジションから描きながら、翁を筆頭に地球人的固定観念にとらわれながら彼女に振り回される人々をどことなくニヒルに描いた、SF作家の星新一氏。
かぐや姫に求婚して破れる五人の貴公子たちのそれぞれを面白おかしく軽妙に描いた場面がとりわけ印象的な、アホだけど憎めない男子を描いたら天下一品の森見登美彦氏。
様々な小説家が訳した様々なかぐや姫が思い出されます。
小説家による古典の現代語訳を読む大きな魅力は、読みやすいという以上に、翻訳作業を担った作家の着眼点や重きを置いた場面などから、その個性をより恐縮した形で感じられる点なのかもしれませんね。
ちなみに、本作の後半は川端氏による竹取物語の解説(考察)ですが、後進発掘と育成に長け、確かな審美眼を持っていたという氏らしく。
翻訳の個性とは別に、端的で見事な文体、均整のとれた構成の妙、登場人物たちの個性や書き分け、人の真理など、様々な観点から竹取物語を分析しており、なんなら本編以上に楽しめました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
高畑勲の「かぐや姫の物語」を観て、一度「竹取物語」をおさらいしたいと思い、この本を紐解いた。
先ず気がついたのは、アニメが中心的に描いたかぐや姫の幼少期の話は一章で終わっており、物語の大半は公達や帝の妻恋に多くを採っているということである。
高畑勲版は、比較的原作に忠実に描かれてはいるが、従来の話とは全く違う物語だということは、ここからも解る。
竹取の翁は終始出てくるが、その妻は「爺さんはそれを婆さんにあずけて育てさせた」と一文出てくるだけであり、視点が全く違う。姫や婆さんの目から見た世界はどう映っていたのか。私たちは、アニメというカメラを通して、自然の美しさ、人の世の愚かさを知るだろう。原作は、明らかに男の視点で見ている。それだけは、川端康成も認めている。
帝の望みをかぐや姫は断る。これは、当時としてはタブーだった。しかし、なぜ物語として許されたのか。川端康成は、そのことに延々と筆を及ばす。しかし、かぐや姫としては、それはあまりにも理の当然のことであって、私もあまり関心はない。月の使者が「いったいそのかぐや姫は、ある罪を犯しなすったによって、汝のごとき賤しき者のところに、暫く身をお寄せになったのである。」と書いているが、「罪」と書いて、川端康成は、ひとつも解説に言及していない。此処に、時代を越えて「支配する側」の世界の「限界」があると想うのは、私の穿ち過ぎなのだろうか。
最後に川端康成は解説に書く。
「かぐや姫の昇天は、勿論この世に失望した人の昇天である。が、失望はしたが、しかも尚それを捨てきれないものの悲しい昇天なのである。昇天の前の、あの月を見ての悲しみがそれを証拠だてている。
またかぐや姫は、彼女の周囲のすべての人間を一蹴した。勿論それは、彼女の高い清純さのためであろう。が、いかに高い清純さのためとはいえ、やはり現実を軽蔑した者の淋しさは受けねばならぬのである。」(163p)
原典に沿って解釈すれば、また、まだ女性の処女性が家の存続の為に当然のこととされていた戦後間もない男性社会にとっては、こういう解釈も当然だったのかもしれない。しかし、高畑監督の「かぐや姫の物語」を観てしまった我々から見れば、なんと狭く根拠のない解釈かと思うのである。
かぐや姫は、確かに「仰ぎ見る世界」月からやって来た。我々の世界を、全てを見渡したと見なければならない。京の都を飛び出て世界を見渡しただろう。それならば、彼女は十分に世界を見たから月に帰らざるを得なかったのである。「竹取物語」に描かれなかった物語を含めて、我々はこれからこの物語を見ることになるだろう。
2014年1月3日読了 -
日本最古の物語であるとされている『竹取物語』。
本書は、その誰もが知る“かぐや姫”の物語を、『伊豆の踊子』などで知られる、ノーベル文学賞作家・川端康成が現代語訳したものです。川端康成本人が物語についても解説しているので、もう一度詳しく『竹取物語』に触れたい方におすすめです。 -
竹取物語と川端康成の流麗な文体が予想以上にマッチしていた。
本文中に「訳注」の形で薀蓄的な説明がついているが、それも簡潔ながらなるほどと思わせる(実際、“かぐや姫”の由来も初めて知った次第)。
現代語訳とほぼ同じページ数を割いて書かれている「解説」まで読めば、原文を読んだ気にさせてくれる。1冊で数倍おいしい作品。 -
挫折。
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大河ドラマに感化され、星新一Ver.を読み、さらには川端氏ならどんな解釈の元で訳すのだろう?と興味が沸き拝読しました。私の勝手な解釈ですが、星氏は執筆した当時の社会情勢に合わせた「現代的」な描写をし、川端氏は一人の若い女性の「性」への潔癖感、嫌悪感をまずは描き、帝とのやり取りの末は精神的とはいえ情愛が育ちゆくさまを清らかに、それでいて艶めかしい筆致で描くという個性を感じ取りました。どちらも原文で読み通す勇気がないため手に取ったのですが、訳本の面白さを知るきっかけとなりました。
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「山の音」のような仄かなエロチシズムを翁に感じたのは私の先入観ゆえかしら。
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美しい世界観です。
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川端さんの竹取物語を読んで、とある映画が、何故どうして、あれほどまでにも、ヒステリックなかぐや姫を設
定したのか、理解出来なかったです。
川端さんのは、とても面白く愉しめました。
美文な本を読むと、心への栄養と言いますか満ち足りた気分になります。
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