11 eleven (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
3.82
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本棚登録 : 684
感想 : 69
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  • Amazon.co.jp ・本 (287ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309412849

感想・レビュー・書評

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  • タイトル買いで大当たり!津原さんは『ルピナス探偵団の当惑』しか読んで無くて80年代っぽい雰囲気と存在感あるキャラクターという印象だったので、ジャンル・時代設定等いろんな風味のこの短編集を読んで驚いた。とても素敵な物語に出会えて幸せ。


  • 欠損した容姿が美しいだなんて詭弁かな。
    自分がなったら美しいだなんてきっと思えないだろうけど、でも本当に美しかった。
    泣けるほどに。
    だって見えるんだもん、私の心に。

    「色とりどりの襤褸をまとった、美しい舟」が。

    もうダメ。完敗。
    津原さんに乾杯。すげぇ。

  • 幻冬舎騒ぎで、津原泰水氏の作品を初めて手に取った。

    なるほど、
    あの騒ぎの渦中で、河出さんが社名でつぃったほどの作品である。
    独特で濃厚。 
    異端でありながらも堅固な人権感覚も根底にある。 
    軽薄な読み手である自分には マッチしない、異端と common decency に神経を捻りあげられるようではあるけど、なるほど、なるほど、なるほど ........

    追記
    この感触、思い出した。
    深沢七郎氏の『みちのくの人形たち』だ。
    グロテスクというかホラーというか、そういうテイストでありながらも この世を支える根底にあるものを想像させようとするような .......
    https://booklog.jp/item/1/4122056446

  •  幻想、SF、ホラー、文学など11話の作品を収録した短編集。

     自分が今まで読んだことのない物語たちでした。短編それぞれが多種多様なジャンルをまたいでいる、というのもありますが、それに加え文章もそれぞれの短編の味を最大限に引き出すため、それぞれに工夫が加えられている、そんな風に思いました。

     そうした短編たちばかりだったので初読での評価が非常に難しい、というのが正直な印象…。自分の理解の範疇を越えているように感じた短編もいくつかあって、あらためて小説の世界は広いのだな、と感じました。

     そんな中印象的だったのは、異形の家族がたどり着く新たな運命を描いた「五色の舟」。幻想的かつ圧倒的な物語の力、想像力の強さを感じさせられます。これまでも、そしてこれからもこういう作品は生まれないように思います。

    「微笑面・改」は自分の顔の前に常に別れた妻の顔が見えるようになった男の話。シュールなホラー形かと思いきや最後で男がたどり着いた心理は過ぎ去った過去への郷愁を感じさせます。

    「琥珀みがき」はショート・ショート。ラスト一行でぐっと心がつかまれます。

     脳科学と音楽をテーマにしたハードSF「テルミン嬢」は理論が難しかったものの読みごたえは十分。

     そして「土の枕」も「五色の舟」に負けない唯一無二の短編であるように思います。20ページに満たない短編ながら、戦争と、戦後の時代の雄大かつ急な流れ、そしてその流れの中での人間の小ささ、そんなものを濃密に感じさせてくれる短編でした。

     既存の小説で満足できない、という人にはぜひ読んでみてほしい短編集です。自分もまた時を置いて再びこの短編集は読むことになるのだろうな、と思います。

    第2回twitter文学賞

  • 蔦屋書店のコンシェルジュおすすめ、という企画で手に取った本。最初の『五色の舟』はNOVAで既読、でもやっぱりすごくて何度も読み返した。おもしろい・・・というのか、なんと言ったらいいのだろう。分かりやすい欠陥をもつこの疑似家族に、下世話な興味をそそられたのも事実。こういった人々を見世物としていた時代があったことを、実感させられる。"件"が授けてくれる救いは概念的なものと考えることができ、でもたしかに、それが救いだと感じられる状況もあるのだろうな、と思う。自分の心はもうここにはない、と思うことで得られる救い・・・。
    昭和の空気と、くだんの言う「装置」「航路」という単語が作り出すひびき合いのふしぎな感触が印象に残った。
    それから『手』。好奇心は猫をも殺す、その殺され方の話のようなもの。わたしが一体どうなったのか、という結末も気にはなるが、「好奇心の果て」について考えるというそのこと自体がおもしろかった。
    短いが『琥珀みがき』も味わい深い、余韻がいい。

  • 単行本を持っているが、こちらも購入。
    何度読んでも『五色の舟』が凄い。『くだん』は怪談に取り上げられることが多いモチーフだが、まさかそれをこう扱うとは。
    どれを読んでも面白いのは確かだが、『微笑面・改』の気持ち悪さ、『キリノ』の文体、『YYとその身幹』のグロテスク……等々、読みどころは様々。寧ろ多すぎて困る。

  • 大変自分好みの傑作だった。ブラッドベリや澁澤龍彦のような世界観が好きな方は向いていると思う。よくもまあ、これだけの内容を無駄を削ぎ、この長さに磨き、11も生み出したものだと感嘆する。個人的には『五色の舟』『土の枕』のような時代がかった独特の雰囲気の舞台がとても好きだった。最後の話は実話にヒントを得たらしいが、祖先の名前という一つのきっかけがここまで気になる事、それを調べて納得いくまで磨き上げるというご本人の気質は作家として天性のものであり、リアルタイムでその恩恵に与れる同時代に私が生まれたことにはもう感謝しかない。

  • 好きな世界でした。面白かったです。
    幻想的なホラーもあればSFもあり、色とりどりでした。
    「五色の舟」「クラーケン」「テルミン嬢」「土の枕」が特に好きでした。
    「五色の舟」は見世物小屋の家族と件という要素も、物語の行く末も、お話に漂う物悲しさと美しさも好きです堪らなく。薄暗く混沌としたあの頃の様子も。
    「クラーケン」のラストの行動、主人公の女の気持ちがわかります。「あとは魔の領分だった」というラストの言葉選びも素敵。
    「テルミン嬢」、深海の巨大な悲しみってなんだろう。。でも、海は悲しみという気がします。
    「土の枕」はひとつだけほぼ実話という一篇なのですがすごい…ひとりの男の劇的な人生。他人の名前を騙って出征した為に自分の本当の名前を失う。男の息子は取り合わなかったけど、孫である津原さんの心には引っかかったから、このような物語になって残ったのだと思うと人生の妙を思いました。
    なんだかとても充足しています。良い短編集でした。

  • 面白かった…。

    他の本と並行して少しずつ読んでいた。

    どれも面白かったが、私は「手」が1番面白かった。
    テルミン嬢は、コオロギ嬢を思い出した。

    面白い作家だった!他の作品も全部読みたい‼︎

  • 逝去の報にびっくり。まだお若かったのに…。本作は追悼の意を込めて、家に積読いてあったものからチョイス。☆は1つプラスで。…ってことは実際には…ってのはさておき、やっぱり短編集はちょっと苦手。さらには、SF寄りってのも個人的にピンとこない理由。豊崎社長の書評然り、大森さんの解説然り、絶賛の嵐な訳で、問題はきっと、ちゃんと読めない自分の方にあり。でも率直な評価です。

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著者プロフィール

1964年広島市生まれ。青山学院大学卒業。“津原やすみ”名義での活動を経て、97年“津原泰水”名義で『妖都』を発表。著書に『蘆屋家の崩壊』『ブラバン』『バレエ・メカニック』『11』(Twitter文学賞)他多数。

「2023年 『五色の舟』 で使われていた紹介文から引用しています。」

津原泰水の作品

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