ブエノスアイレス午前零時 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 181
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (140ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413242

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  • 雪深き地方のホテル。古いダンスホール。孤独な青年カザマは盲目の老嬢ミツコをタンゴに誘い……リリカル・ハードボイルドな芥川賞受賞の名作。森田剛主演、行定勲演出で舞台化!

  • 読書開始日:2021年12月28日
    読書終了日:2021年12月28日
    所感
    【ブエノスアイレス午前零時】
    好きな作品だった。
    格好良い作品。
    都会から雪国に戻ってきたカザマは、閉塞感のある日常、特に勤務先みのやホテルコンベンションホールで行われるダンスパックに嫌気がさしていた。
    ポマードと派手な香水をごちゃ混ぜにした混沌の中に、嗅いだことの無い香りを漂わせるサングラスをしたミツコを見つける。
    カザマは惹かれた。
    カザマから香る温泉卵の匂いを、ミツコが肯定したからだろうか。
    中々踊らないミツコに対する「婆さん、踊りたいんじゃないか。踊れよ。」の心の一言には痺れる。
    盲目の闇は青。ミッドナイトブルー。
    タンゴを一緒に踊ることにより、盲目の闇では無く、耄碌の闇をミツコと共有した場面。
    「大丈夫です…誰も見ていないです」には、自ら作り出した夢中による盲目の意味が込められているようで、光を感じた。
    雪国の凍てつくようなカッコ良さを感じた。
    【屋上】
    屋上プレイランドの事務員として派遣された会社員が、同じような状況のポニーに自分を重ねる。
    屋上という、地上からも区切られ、会社からも区切られた場所に鬱憤が溜まり、ついにはポニーの解放を試みる。
    しかしポニーはいつも通り柵の中で一点を見つめる。
    その状況に浸りすぎた果てを見て、屋上コンクリートの地平線を覗く。
    高円寺駅と阿佐ヶ谷駅に自殺者が多いのは、自分よりも下の目線に地平線が見えるためという主人公のその後が怖い。

    【ブエノスアイレス午前零時】
    モダンダンス会=いやに手入れされた犬の品評会
    思ったよりも女の細い指の先には力が入っていて、目の見えない状態でまったく知らないところを歩く怖さを感じさせる
    マッチ=地球の、奥の、においがするだろう
    シャツの襟元から背中に水でも差されたような気持ち悪さ
    ホールの中の空気がダンスの動きで攪拌されて
    婆さん、踊りたいんじゃないか。踊れよ。
    雪=上空何千メートルの空気の匂いがする
    ピアスの穴痕に、何かとにかく喋らなければならないと思ったとしか言いようがない
    今日も盲目の闇の中で、自分で化粧をしたのだろうか
    盲目は真っ暗、じゃないのよ。青…青く、見えるの
    瑪瑙
    右半身に密着したミツコの痩せた体に、優しい気持ちがせり上がってきそうな、
    【屋上】
    ルーティンだからこそ仕事だ
    幼い頃に小便をたれた時の甘さ
    ダンボール箱特有のバニラに似た匂い

  • 森田剛くん主演で舞台化してたんっだなコレ
    たしかにやや不良少年ぽい雰囲気が合ってる…
    不良少年と老嬢のタンゴ…うーんロマンだ…

  • 【貸出状況・配架場所はこちらから確認できます】
    https://lib-opac.bunri-u.ac.jp/opac/volume/687301

    第119回芥川賞受賞作品。

  • 2021/5/30 ★3.2

  • 個々の人柄や人生が淡々と練り込まれていて
    何のつっかえも無くサラリと読めた一冊。
    老女と燕と卵。

  • 評価低すぎる。藤沢初読。芥川賞。
    温泉の湧く地元に戻った青年。硫黄の匂い、地球の奥深くの匂い。裏側のブエノスアイレス。埃っぽいダンスホールでまがい物のドレスを着て踊る中年の男女。暗がり。きぬ擦れ。性病。温泉卵。半熟の球体。耄碌した、盲目の女性。
    短編でずいぶん簡潔でしたが、硫黄とブエノスアイレス、盲目と温泉卵、温泉地のダンス・ホールという隠された対比が印象的で、匂い、聴覚、視覚の表現も充実しており、退廃的な空気感(帯には「リリカル・ハードボイルド」と表現されていた)が良かったです。

  • 藤沢周は耳が良いんだなと思った。本書はハードボイルド/硬質なタッチの文章と、新潟の訛りの入った言葉やその他の口語(つまり極めてジャンクな言葉)が入り乱れる。両者が溶け合うことで、一見すると素人臭いのだが実は極めて豊穣なカオスを生み出していることに気づかされるのだ。たまたま雪が降った日に読んだからか、著者が書く雪景色、温泉卵が出来上がる現場が生々しく感じられた。頭でっかちな作家には書けないリアリティがここにはある。切迫感、追い詰められた状況にある男の姿が悲哀を伴って語られる。J文学として葬り去るには惜しい!

  • 直木賞っぽい芥川賞作品。ひろく読むことが出来るであろうという意味ではいい作品なのではないかと思う。ここにある希薄さも含めて今っぽいかもしれなくて切実さの共有の難しさみたいな部分で書くことの難しさを感じたかな。

  • 硬質な、乾いた読後感。

    タイトルは昔から気になっていた作品を手に取って。

    1998年の芥川賞受賞作。

    最近では森田剛さんが舞台で演じていたとか。

    結構最後の方までブエノスアイレスのおはなしになるのでは!と思っていたのはそうとうおバカちゃんみたいなようで、これは曲名らしいですな。

    田舎町の温泉宿が舞台という。

    そこでちょっと人生諦めたような、やさぐれを表には出さず、心にどんどんささくれ作っているような温泉卵を毎日作っている男が主人公。

    そこに現れる女性。目に見える変わった点と、周囲の様子からわかる変わった点。

    どんどんと興味を女性に奪われ、そして周囲が驚くラストシーンへ。

    そこでは、二人ブエノスアイレスに居たのかもしれない。

    硬質な、乾いた読後感。

    サイゴン・ピックアップとか、死亡遊戯とかタイトルが気になるものが多いので、またうわぁ読みたいなと思ったら。

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著者プロフィール

作家

「2022年 『ベストエッセイ2022』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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