屍者の帝国 (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.60
  • (84)
  • (157)
  • (164)
  • (36)
  • (9)
本棚登録 : 1941
レビュー : 194
  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413259

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
  •  読むのに三ヶ月ほどかかってしまい、結果的に2016年最初の読了本になった。それほど私にとっては難解な内容だった。

     円城さんの作品にはじめて接したのは短編の「Four Seasons 3.25」だったが、そのときも読み切るのにたいそう時間がかかり「この人の文章は難しいな」と感じていた。こうして改めて正面からとり組むと、もう全然進めない。映画を観ていなかったら、話の流れをつかむことさえままならなかったかもしれない。あと、歴史上の人物がたくさん出てきたらしいのだが、あまり世界史が得意でない私にはほとんどわからず、自分の浅薄な知識を再認識させられた。

     テーマは死者と生者の間によこたわる魂と言葉の意味、というように感じたが、自信がない。物語は、なにかひとつの答えや主張を示すのではなく、さまざまなことがらが疑問のまま収束しており、これはこれで納得できた。あとは、あとがきがとても冷静なのにどこか感傷的で、私の心の琴線に触れた。

  • 子どもの頃、私にとって「一番恐ろしいもの」は暗闇やお化けだった。
    思春期を迎えた頃には、「結局は人間が一番怖い」と考えていた。
    そして今、私が一番恐れているものは、「死」だ。
    こうして書き、語り、考えるということができなくなること。
    こうして死について考えている“私”さえなくなってしまうこと。
    私にはそれが何よりも恐ろしい。
    だから、よく「どうすれば死なずにいられるのだろう」と考える。
    結局、「死とは?」「私(魂)とは?」そこに行きつかずにはいられない。
    たとえば、未来に人体の全てが明らかになって、全てが機会、あるいは今の私が持つ、たとえば脳が、全く同じ形・構造・神経回路のものと入れ替わったとして。
    その時、私は今の私と同じなのだろうか。
    その時、“私”はいるのだろうか。
    多分、この作品は、それに“ノー”と答えている。

    舞台は、19世紀末。
    フランケンシュタインをきっかけに生み出された“屍者”が全欧に普及し、戦場のみならず日常生活においても利用されるようになった世界。
    彼らは人の姿を持ち、生命反応もあるけれど、生者とは決定的に異なる存在だ。
    意思はなく、魂も持たない。
    それもそのはず、彼らは死体の脳に電極を刺し、ネクロウェアをインストールしただけの、動く死体にすぎないのだから。

    当然、屍者は生前の彼らとは全く別物のはずだ。
    ヴィクターの手記によって魂をインストールされたと思しきフライデーもまた、エピローグの独白を見るに、以前の彼とは違うようだった。
    だとすれば、永遠になくならない魂など、やはり存在しないのではないか。
    ザ・ワンが復活させた花嫁も、やはり彼の"the one"ではないのではないか。
    ワトソンは、二度と元のワトソンには戻れないのではないか。

    答えを求めて本を開いたわけではないけれど、結局、疑問は深まるばかりで、何一つ分からないままだった。
    きっと、一生死ぬということを理解できる日は来ないのだろう。
    確かに、私はどうあっても死を経験することはできないのだから。
    だとすれば、私はむしろ、いずれ辿り着くその日まで、ワトソンやバーナビー、バトラー達を先達に、選択の余地なき自由を、それでも選択していくしかないのかもしれない。
    正直、そう書いておきながら、その意味が私にはまだきちんと分からないのだけれど。

  • これは、理解するのにたくさんの知識を要求してくるなぁ〜。小難しい。テーマがいいので嫌悪はしないけど自分に悔しい。

  • むずかしいけどおもしろいです

  • いまいちちょっと面白さがよくわからなかったので、時間をあけて読み直そうと思います。

  • 伊藤計劃氏、オリジナル作品三作目として執筆された今作。プロローグのみ同氏が、第一部以降は円城塔氏が担当されたと云います。私は円城氏の作品を読んだことがないためどんな文章を書くのか存じませんが、外見上は円城塔氏ではあったかも知れないが、執筆中は伊藤計劃氏の魂が記されたパンチカードがinstallされていたとしか思えない出来である。名作、傑作としか言い様がない作品だ!!

  • 20回くらい「全然わからない、作者においてかれてる」って思ったのに、それでも面白いってどういうことなんだろ。

  • 感傷的になろうと思えばいくらでもそうなれる。
    それでも自分には、「読みづれえ……」が先に立った。
    ストーリーは面白く、先へ先へと思えて楽しかったのだけど、
    文章に邪魔をされている感じがした。

    感傷的に書きたくないので、賛辞は敢えて控えます。

  • SFに全く興味がなかった私でも
    最後まで一気に読むことができた。
    登場するのが他小説や史実の人物だったのが
    とっつきやすかった理由だったのかも。
    (ホームズやカラマーゾフなどなど)

    ハダリーの正体というかモデルの小説のことは
    全く知らなかったのでGoogleで調べて
    「へぇーーー」と一人呟きましたね。
    普通の人間ではないだろうなとは思っていたけど
    なるほどなぁ…

  • 伊藤計劃のプロットに円城塔が肉付けした作品
    self refarence enhineを読んで以来、円城塔に苦手意識があったから今まで避けてきたわけだか、劇場公開をきっかけに手に取った
    最終盤の流れを除きエンターテイメントだった印象。蒸気機関の代わりに人の屍を使うスチームパンクみたいな感じか。かといって軽いわけではない。意志を持った屍者を追いつつ、意識とは人間とはを問うていくストーリー。ザ・ワンの独白の内容に伊藤計劃らしさを感じた(円城塔が書いてるはずだから気のせいだろうが)
    伊藤計劃が最後までかけていればまた違う答えを出していたのだろうか。読んでみたかったな

全194件中 91 - 100件を表示

著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

屍者の帝国 (河出文庫)のその他の作品

屍者の帝国 単行本 屍者の帝国 伊藤計劃
屍者の帝国 (河出文庫) Kindle版 屍者の帝国 (河出文庫) 伊藤計劃

伊藤計劃の作品

ツイートする