屍者の帝国 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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本棚登録 : 1941
レビュー : 194
  • Amazon.co.jp ・本 (525ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413259

作品紹介・あらすじ

屍者化の技術が全世界に拡散した19世紀末、英国秘密諜報員ワトソンの冒険が始まる。未完の絶筆を円城塔が完成させた超話題作。

感想・レビュー・書評

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  • 2009年に逝去した伊藤計劃氏。
    『虐殺器官』『ハーモニー』に次ぐ一冊。手掛ける途中にあの世へ旅立ち、円城塔氏が引き継いだ。

    屍者復活技術が用いられ、労働力として死者を活用する。歴史改変ものにカテゴリされるSF作品。
    ただ、題材が屍者だけに、キリスト教義やイスラム教義と宗教的、哲学的要素が多分に溢れる。
    イデア論の講義でも受けてるようでした。

    人は生前と死後直後では重さが21g軽くなる、と。
    魂の重さはつまり21g.

    ただ、この屍者のワードをAIに変えるとあながち...怖い一冊でした。

  • 伊藤計劃三部作のラストは未完の書を盟友円城塔が完成させた力作。伊藤の世界観を崩さず円城さんの良いところが出た力作となっていた。屍を労働力として受け入れている歴史改変小説なので、色んな歴史上の人物が登場してきておもしろい。Mの弟って確実にホームズで、本書の主人公のワトソンは、あのワトソンだね。ダーウィンとかフランケンシュタインとか出てきてびっくりですよ。

  • シャーロック・ホームズの相方ワトソン博士を主人公に、「カラマーゾフの兄弟」のアレクセイ、「風とともに去りぬ」のレッド・バトラーなどの文学上の登場人物、アメリカのグラント将軍-大統領、寺島宗則、大村益次郎、川路利良などの実在の人物らが活躍する活劇。医学生だったワトソンが諜報機関にスカウトされて与えられた任務は、インドからアフガンに屍者の帝国を築いた王との交渉。しかし、その王アレクセイから託された、最初の屍者「ザ・ワン」を巡る大きな流れに巻き込まれていく...と。スピード感、スケール感は大きく、しかし、複雑に絡み合い、少々読み解くのに苦労した感はあり。19世紀末、インド、アフガン、日本、アメリカを駆け巡り、実際より技術が進歩していた仮定で語られる物語。参考文献の、「ヴィクトリア朝のインターネット」はなんだか気になる。

  • 屍者技術が発達したスチームパンク世界での歴史改変SF。
    言葉と意識を中心に描いた伊藤計劃先生と言葉と語りを中心に描いている円城塔先生の共作です。その答えが”書くこと”で描かれるのは膝を打ちました。

    ストーリー展開としてはヴィクターの手記という究極の屍者技術をめぐる冒険活劇ものですが、魂を追い求める主人公は切実さと悲痛さがあります。そして旅の先々で出会う屍者を利用方法。驚き、叫び、そして主人公の執念が刺さる作品となっています。
    歴史改変SFとしての楽しさも十二分にある作品です。

    ※映像化もしている本作。映画版は若干の改変があるもののよくまとめたなという印象。なによりキャッチコピーの”求めたのは21グラムの魂と君の言葉”がかっこよすぎます。

  • ただでさえ栄光なれど陰鬱な印象のあるヴィクトリア朝ロンドン、それが、スチームパンク的世界観と屍者(ゾンビ)の使役で光と影と霧が一層濃くなったようなどろりとした世界観。

    最初からとても引き込まれた。ただ、スチームパンク的な世界観や屍者技術の背景は一貫しているものの、途中からそういった世界観は脇役になり、内面的というか概念的な話が主となってくる。

    その雰囲気はまさに円城塔の文字渦。
    たまたま少し前に読んでいたからよかったけれど、そうでなければ頭がかなり混乱していたんじゃないかとも思う。

    統一した世界観に基づいたきちんと組み上げられたSFでおもしろかった。次は伊藤計劃が最後まで書き上げた小説も手にしてみたい。

    それはそうと、本作品を原作としたアニメがあったので視聴開始してみた。まだ三分の一ぐらいしか見ていないけれど、屍者の動きはおーこんな感じっぽいと感心したけど、あとは世界観の雰囲気と登場人物を借りてきた別物だった。ストーリーが全然違うし、世界観や各登場人物の行動に整合性がいまひとつ感じられない。
    勢いで雰囲気を楽しむタイプのファンタジーとしてみれば残り三分の二も楽しめるかなあ?

  • 屍者(死者)を道具として扱い、戦争も行われる時代が舞台。屍者の謎に迫りながら世界各地を飛び回り、その真相に迫っていくというようなストーリー。
    かなり間を空けつつ読んでしまったので、ストーリーがうまく頭に入りきらずに読み進めてしまった感が否めない。
    読み進めていくうちに回答に近づいていく感じはあるけど、テーマとして哲学のようなものを扱ってるので、謎が解けてスッキリ!というものはない。好き嫌いは分かれそう。

  • スチームパンクで19世紀末の社会に「死者を復活させ思うがままに操る」技術が確立され、さっそくクリミヤ戦争などに用いられる。語り手はシャーロック・ホームズの語り手として有名なワトソン。基本的アイデアとしては『地球の長い午後』。『虐殺…』でも見られた言語への関心が“もっとも根本的な言語は何か”すなわち「アダムの言語」がカギとなり人類の始原につながる、「なぜヒト以外は復活させられなかったか?魂がないからだ」西欧的発想と言える。“自我はどこから来るのか”という疑問を仏教では《中心的自我はない》という根本教理で解明

  • 屍者をロボットのように安価な労働力として使役できるSF世界。

  • 円城氏の文章と合わないのかなかなか進まなかったが、最後まで読んでみて面白かったという感想がいちばん大きい。ただいまいち理解しきれていないので、気が向いたらまた読みたい。

    ヴァン・ヘルシングが言うには、人間を「意識がある」かのように感じさせているのは言葉である。

  • 伊藤計劃の遺作プロローグを引き継いだ完成させたという背景情報と切っても切れない関係の小説。なんやかんや言いながらもきっちりと伊藤計劃らしさを出しているのは見事だし、ここまでの文量に仕上げる熱量もさすがと言うしかない。時代改変としての面白さや小ネタの使い方が非常に巧みで、文章遊びはさすがの手練。ただ、円城塔を消し去ることはできず、ページを経る毎にまったくもって冗長で小難しくなっていく文章はSFエンターテイメントではなく、SF=Speculative Fictionとしての性格を強くしていくのがご愛嬌。正直、分かったような分からんような(おそらく自分の理解レベルはバーナビーだろう)感想だが、エピローグ+あとがきを読むことで完成される感情は、合作としては出来過ぎ。

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著者プロフィール

1974年東京都生れ。武蔵野美術大学卒。2007年、『虐殺器官』でデビュー。『ハーモニー』発表直後の09年、34歳の若さで死去。没後、同作で日本SF大賞、フィリップ・K・ディック記念賞特別賞を受賞。

「2014年 『屍者の帝国』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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