枯木灘 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
4.03
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本棚登録 : 313
感想 : 17
  • Amazon.co.jp ・本 (437ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413396

感想・レビュー・書評

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  • 「推し燃ゆ」の宇佐見りんの推しに中上健次が挙げられているのを知って手にした本書。

    今ではコンプライアンスやらハラスメントやらで抑制された人間の根源的な衝動や欲望がむき出しにされている。日常的には道義的に許せないことが、この作品では、なぜここまで心揺さぶられるのか?
    自分の中にもきっとそんな衝動や欲望が潜んでいて、この作品の持つ文学性によって呼び覚まされ、熱い生命力がみなぎってくるからだろう。

    ひどい話ばかり繰り返されるのだが、なぜかこの一家の血のつながりが愛おしく感じるのだ

  • 通勤の行き帰りに、仕事の合間の昼休みに、何ページかずつ読むと、未だ見ぬ緑深き紀州の狭隘な地へとすっと心を持っていかれる。日に灼かれ、緑になじむ秋幸の力強さ。自分を産ませた実父、最初に籍に入れられた実母の先夫、ともに暮らし籍にも入れてくれた義父と三人の父をもち、父違い、母違いの兄弟は多数。海と山と川に挟まれた狭隘な地に、多くの親族とからまりあいながら暮らす日々。悪い噂の絶えない、実父への反発。妾腹の妹への複雑な思い。結婚を約束した娘への時に暴力的な思い。そして最後は遠き祖から、父の血を受けた身体がもうひとりの父の血を受けた身体へと爆発し…。狭隘な土地に煮込まれ、からみあった血族たち、己が住む土地への深い愛着と断ち切れない憎悪に翻弄された秋幸の行動はついには…と。秋幸の去った後の文昭のはりきりようと、あれほど親しかった徹の手のひらを返したようなたたずまいがまた悲しみを誘い。/それは秋幸の骨の太い体の中に流れる一つの血ともう一つの血の衝突だった(p.)/光が撥ねていた。日の光が現場の木の梢、草の葉、土に当っていた。何もかも輪郭がはっきりしていた。曖昧なものは一切なかった。いま、秋幸は空に高くのび梢を繁らせた一本の木だった。(p.80)/秋幸は川原に立ち、男を見ながら、その路地に対する愛しさが胸いっぱいに広がるのを知った。長い事、その気持ちに気づかなかった。(p.256)

  • 連載モノだから繰り返しが多い。
    父親の血に苦しめられる息子の話。
    淡々とした文章で、死ぬほどややこしい血縁関係が語られる。聖書?
    人から後ろ指をさされ、罪をつくる元凶となった父を憎んでいても、やっぱり親子の交わりを諦めきれない秋幸のもどかしさを感じた。
    続編の『地の果て 至上の時』も読みたい。

  • 先日、神保町に立ち寄った時に三省堂で見かけ、10代の時に挫折したことを思い出して再読笑

    ドストエフスキーの影響を感じさせるとともに、作者自身の経験からくる部落(作内では路地と表現)の小さな町での物凄く複雑な人間関係とそれによって起こる事件や悲劇を大変だけれど美しい土木作業や自然と対比して丁寧に描かれている。
    しかし平坦な日常を送るには人間関係が過酷過ぎた…
    もし中上健次が存命だったらノーベル賞を取っていたかもしれないなと思わされるくらいの力強くも繊細な文体に魅了された。

  • 2020/9/13 読了

  • 秋幸の仕事に対する気持ちと風景など、何度も何度も同じ描写が続き、それがまたこの物語に惹き込まれる要因になっている。
    読みやすいけど、ゆっくり味わいながら読むと、より楽しめる。
    田舎の親戚には、ユキみたいな人が必ずいる。

  • 大学生の頃から何度か読みかけては止まっていた中上健次の「枯木灘」を30年近くかけてようやく読了。
    重くはないのかもだけど、日常と過去がいったりきたりの長い長い話はエンタメ的ではないけど、何かあるんだと思う。
    巻末の柄谷行人も市川真人の解説を読んで、さらに頭を悩ますという夏休みならではの一冊。

  • 同じ内容が繰り返される内容だったが、最後は引き込まれていった。自分の人生を振り返る良いきっかけとなった。このような名作を読みながら、考える。自分に置き換える。そういった作業が成長のキッカケになりうると思った。長い、小説であったが一度時間を開けてもい一度読んでみようかと思う小説であった。

  • 勉強不足だったが、中上健次が「紀州サーガ」と呼ばれフォークナーやマルケスを源流とし世界文学の潮流として彼らに比肩する作家であることを初めて知った。文章から滲み出る鬼気は圧倒的だ。

    中上氏の言う「路地」とは被差別部落地区を指すが、作中には差別に関する事柄は一切なく、そこに土着する「穢れた高貴な血」への異常な執着の物語だ。秋幸が繰り返し繰り返し意識する実父「龍三」の血だが、根底にあるのは憎悪ではなく承認欲求とアイデンティティ認識のためなのかもしれない。個人的には「千年の愉楽」のほうが好きだが、端的にはなかなか言い表せないサーガを、小説という手法を使って書き上げた凄い作品だ。

  • 『[新装新版]枯木灘』
    著者:中上健次(1946-1992)

    【メモ】
    ・二作とも1977年の小説。柄谷行人による解説は1995年。市川真人による解説は多分2015年。
    ・河出からは、《日本文学全集》第23巻として『中上健次』がほぼ同時に刊行されている。
    ・この本から読み進めていくなら、全集を先にあたるべきかも。
    ・この「枯木灘」は『岬』の続編。
    ・この文庫に際した記事。
    「(過去のかわくらメルマガ掲載記事)
    2015.01.26 編集担当者が語る、中上健次」
    http://www.kawade.co.jp/kawakura/archive/2015/01/post-26.html

    【版元】
    河出文庫 文庫 ● 440ページ
    ISBN:978-4-309-41339-6 ● Cコード:0193
    発売日:2015.01.07

    熊野を舞台に繰り広げられる業深き血のサーガ……日本文学に新たな碑を打ち立てた著者初長編にして圧倒的代表作。後日談「覇王の七日」を新規収録。毎日出版文化賞他受賞。

    [著者紹介]中上 健次 (ナカガミ ケンジ)
    1946年和歌山県生まれ。1974年『十九歳の地図』でデビュー。76年『岬』で芥川賞、77年『枯木灘』で毎日出版文化賞、芸術選奨新人賞を受賞。他の作品に『千年の愉楽』『地の果て 至上の時』『日輪の翼』等。
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309413396/


    【簡易目次】
    目次 [003]

    枯木灘 005
    覇王の七日 373
    著者ノートにかえて 風景の貌 392

    登場人物系図 [406-407]
    解説 三十歳、枯木灘へ(柄谷行人) [408-428]
    解説 覇王からの/までの距離(市川真人) [429-437] 
    初出 [438]

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著者プロフィール

(なかがみ・けんじ)1946~1992年。小説家。『岬』で芥川賞。『枯木灘』(毎日出版文化賞)、『鳳仙花』、『千年の愉楽』、『地の果て 至上の時』、『日輪の翼』、『奇蹟』、『讃歌』、『異族』など。全集十五巻、発言集成六巻、全発言二巻、エッセイ撰集二巻がある。

「2022年 『現代小説の方法 増補改訂版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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