想像ラジオ (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.33
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本棚登録 : 1680
レビュー : 204
  • Amazon.co.jp ・本 (215ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309413457

作品紹介・あらすじ

想像ラジオはタレントとしても知られているいとうせいこうさんの小説です。東日本大震災を題材とした作品で2013年に発売されました。文庫化もされています。東日本大震災で亡くなったひとりの男性が想像の中で聞こえるラジオのDJとして死者と生者にむけてオンエアをしていきます。野間文芸新人賞を受賞した作品です。

感想・レビュー・書評

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  • 芥川賞の候補作になったり、おそらくそれ以前から話題だった小説。
    何が題材なのか知っていただけに読むことに少しためらいはあったけれど、紀伊國屋で超プッシュしてたからつられて買ってしまった。

    「深夜2時46分、そのラジオは聴こえてくる」

    この物語は“杉の木”というのがひとつのキーワードなのだけど、巻末の解説によると、樹木というのは死んでいる組織と生きている組織があって、生体と死体が切り分けられない形でひとつの個体が成り立っている、とのこと。
    それはこの世界も同じで、生きている人間は死んだ人への思いを完全に断ち切ることはできないし、死んだ人間もまた、生きている人の記憶によって成り立っている。生と死が渾然一体となってこの世界はできている。

    死んだ人の声が聴こえる、という人も世の中にはいる。
    私は聴こえないからそれが嘘なのか本当なのかはわからないけれど、死んでしまった誰かがもしかしたらこんなことを思っていたのではないか、と想像することはある。
    それは実際のことではなくただの想像に過ぎないけれど、それを思うことで気持ちに整理がついたり、前に進む力になったりする。
    一歩間違うと悲しみの中にうずくまる原因にもなりかねないけれど、そういうことも含めて、その人ために必要なことなのだと思う。

    物語の中でも賛否両論だから、きっと実際の世界でも賛否両論だと思う。
    私自身は、好きか嫌いかで判断することを少しためらう小説だった。
    もう少し時間を置いて再び読んでみたときに答えが出るのかもしれない。

    でもこの題材に正面きってぶつかるってすごいことだと思う。批判があることも最初から予想できたはずだから。
    予想できただけに雰囲気がライトになってしまった部分もあるのかもしれない、と想像した。

    いちばん答えを知ってるのは、あの“2時46分”を絶対に忘れられない人たちなのかもしれない。

  • 150514読了。冒頭、まさにラジオが始まるときに、学生の頃に勉強しながら聴いていたラジオ番組の、寄せたメールが読みあげられて胸が高鳴るあの思いををぶわっと肌に感じました。
    ほどなくして、ぽつぽつと外灯が遠くに見えるようにリスナーが出現し、なんだかそれが私には希望に思えて、これから良いことがはじまるのだというわくわく感でさらさら読み進められました。
    途中から、登場人物の違う話が現れます。
    察するに、情景は東日本大震災なのだと、じわじわと気づかされていきます。
    私の感じたわくわくは悲しみにとって変わりますが、最後はなんだか甘酸っぱい
    、卒業式みたいな気分で旅立つ主人公を見送りました。
    おなじみのジングルは
    想ー像ーラジオー。
    いとうせいこうさんの文を初めて読みましたが、絶妙でした。感動しました。

  • 待望の文庫化!気になっていた作品。

    「あの日」が一つの地点になってから数年。
    刻一刻と時間はそこから離れてゆくけれど、ひとの心はもっともっと複雑怪奇に彷徨う。

    悲しみのメディア。
    DJアークがお送りする「想像ラジオ」では、沈殿してゆく言葉を拾い上げて放ってゆく。
    そんなの死者への冒涜だ、と第二章では綴られる。
    フィクションとノンフィクションを織り交ぜた中で、確かに笑って済ませられない現実が、目の前にある。

    けれど、聴こえないはずの声が聴こえてくるような。
    そんな優しい虚構に身を委ねることは、罪ではない。
    たくさんの、何もかもの声が、私たちの周りには繰り広げられている。
    ある日、その一つをふいに掬い取ってしまうようなことが、ないとは言い切れない。

    良かった。

  • うーーーーーん………
    なんというべきか、
    とても想像力を使う小説。
    生と死って対立しているように
    思っていたけど本当は両立しているもので
    死があるから生があって
    生があるから死があるんだなぁ。
    と、なんとも哲学的な感想を持ちました。
    私が想像力をすごく使ったのは、
    まだどちらかといえば死から遠い環境で、
    これから先身近になったときに
    死者が発信する「想像ラジオ」を思い出せたら
    少しだけ勇気をもらえる気がします。

  •  未来に伝えたい物語がある―

     誰かに伝えたいことがあるなら。どんな小さな声も余さず、あなたの心に直接お届けする素敵なラジオ。あの日、『三月の水』に飲み込まれた幾重もの思いと、それに耳を傾ける生き続けなければならない人々の姿。

     「少しずつ前に歩くんじゃないのか。死者と共に」

     悲しみに捕らわれて前に進めない人がいたとして、その人は”弱い人”なのかどうか。だとしたら無理に”強い人”になる必要はないのかもしれません。

     「俺らは生きている人のことを第一に考えなくちゃいけないと思うんです」

     生きている限り、亡くなってしまった人たちの想いを理解できることは無い。分かるなどと考える事自体がおこがましい。本当にそうなら、理解しようと努めることすらも不要な感情なのでしょうか。心と現実の問題は必ずしも相反するものではないということ。
     
     「あなたの想像力が電波であり、つまり僕の声そのものなんです」

     無数の声があるからこそ一言では言い表せない『今だからすべきこと』。非常に難しいテーマであるがゆえに賛否両論あることと思います。それでもなお、作家としてのいとうせいこう氏が捧げたかった、震災後の全ての人々のありかた。多くの方に届くことを願ってます。

     そんなお話。

  • 震災をテーマにしているというこを知らなかったのだけど、たまたま本屋で手に取って読み始めてみたらそういう話だった。3月11日にどうしても読み終えなければならない、と思い果たした。

    なんというか、「演出感」をできるだけ小さくしようとしている小説だと感じた。震災をテーマにすれば、いくらでもお涙頂戴、あるいはドラマティックな話を作り出すことができるのだけど、この小説はあえてそういう抑揚を忌避し、非常にオフビートな調子で物語を進めている。震災に対する「物語の過剰」への反発ではないかと思えるほどである。

    「想像ラジオ」というタイトルからわかるように「ラジオ」というメディアをテーマに選んだことも、そういうことと関係があるのかもしれない。映画やテレビ、youtubeといった映像メディアはどうしても情報量が多い。それに比してラジオは音声に限定されるだけに、逆にそこに想像力を喚起されるだけの〈余白〉がある。「物語の過剰」を抑制する舞台装置としては、「ラジオ」が適切なのだ。

    ということで、劇的な物語を期待する人には物足りない作品かもしれない。けれど、3月11日のことを少し落ち着いて想像してみたい、という感覚でこの作品に接するならば、きっと心に滲みてくるなにかがあると思う。

  • 幼少期に被災地に住んでいたことがあり、親戚が被災したり、知人が沢山亡くなったりして、東日本大震災のことは考えたくないし、人にも秘密にしてる。そんな風に目を背けている自分も嫌だ。この重いテーマを題材にどう書いたのか気になり、本を購入。
    DJアークの語り口は軽快でスラスラ読めた。第二章の登場人物の震災に対する考え方は共感できたし、第五章の缶詰工場で働く女性の何でもない平凡な1日を繰り返し思い浮かべて昼夜過ごすという話に涙が出そうになった。
    大切な人を亡くした人だけでなく、亡くなった方が読んでも、もちろん全く関係ないと思っている人が読んでも気分を害することのない内容だと思います。これ、非常に難しいことだと思いますし、いとうさんの才能が素晴らしいです。
    ただ、私に洋楽の知識がなくて、せっかくの選曲された音楽が頭の中で流れなかったのが残念で、星4つにしました。もし映像化されたらストーリーと曲の融合を感じてみたいな。

  • 生きる者と死する者それぞれの思いが混在するスペースがあると言うのか、生きる者の思いが死する者の世界を創りだすと言うのか。
    魂の混沌という感覚は受け取れる。
    が、この小説がいわゆる震災文学であるという前提なしに読んだならばどれくらい理解しようとしただろう?
    文庫のあとがきをジックリと読んでから本編を読むという手法が作品には合っているような気がした。

  • 東日本大震災や原発に関する小説を読んでこなかった。
    というのも、サンイチイチやKIZUNAやガンバロウといった言葉に空疎を感じていたから。
    またいとうせいこうも「ノーライフキング」で首を捻ったため、敬遠していた。
    しかし南米文学への親和、さらにパニック障害と聴いて俄かに興味を持ち読んだ。
    うちのめされた。
    ペーソスを含んだユーモア。互いに抱き合う語りの構造。ぞっとするような悲劇。
    また「当事者でないことの罪悪感」や「当事者でないものが何を語れるか」まで真摯に向き合っている。
    というよりも、これを書かざるを得なかった小説家の姿が、本当に勇気づけてくれた。

  • こっそり言いますがあまりのめり込めませんでした。東日本大震災という題材的に突っ込みにくい部分があります。想像ラジオという革新的な創造に志しの高さは感じるのですが。

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著者プロフィール

いとう せいこう
1961年、東京都生まれ。編集者を経て、作家、クリエーターとして、活字・映像・音楽・舞台など、多方面で活躍。『ノーライフキング』でデビュー。『ボタニカル・ライフ ―植物生活―』で第15回講談社エッセイ賞受賞。『想像ラジオ』が三島賞、芥川賞候補となり、第35回野間文芸新人賞を受賞。他の著書に『ノーライフキング』『鼻に挟み撃ち』『我々の恋愛』『どんぶらこ』『「国境なき医師団」を見に行く』『小説禁止令に賛同する』など。

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