昨夜のカレー、明日のパン (河出文庫 き 7-7)

著者 :
  • 河出書房新社
3.76
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本棚登録 : 9124
感想 : 752
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309414263

感想・レビュー・書評

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  • また素敵な本に出会えてしまった。嬉しい。
    この物語の登場人物たちがそうであったように、自分もまた背中をそっと押してもらえた。
    優しさが伝播したみたいに。
    たくさんの台詞が胸にじんわりと沁みてくる。

  • ご夫婦で脚本家をされている二人が、初めて手がけた短編連作小説。
    解説は一番好きな作家 重松清氏。
    これは絶対ほんわか良い小説だと思い読みました。

    夫に先立たれたテツコさんと義父の通称ギフの二人暮らし。
    ゆるりゆるりとそれぞれの時間が流れていく短編連作。

    なんとなく重松氏に近い物を感じながら、やっぱり少し違ったテイスト。
    重松氏の解説によれば、この小説は「発見」と「解放」の物語。
    「そうか」「それでいいじゃないか」
    でも何もかもが解決するのではなく、一瞬の解放で肩の荷を下ろした後も、また新たな肩の荷を負ってしまう。
    すべてができすぎに終わるわけではないけれど、その後も自分で頑張っていこうと思えてしまうような物語でした。

    メモ
    「嫉妬とか、怒りとか、欲とか---悲しいかな、人はいつも何かにとらわれながら生きていますからねぇ」

    タカラは、今、ファスナーの先端だと思った。しっかりと閉じられているこの道は、私が開けてくれるのを待っている。

    「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」

    「生きるというのは、のぼってゆく太陽に向かって歩いて行くことなんだよなぁ」

    今、気づいた。私は、そんなところに閉じ込められるものじゃないということに。今もなを、時間の中を生きつづけなければならないものであるということに。

  • 夫と死別した後も一緒に暮らしを続ける嫁と義父のあったか面白い物語。

    (まだ終わるな、終わらないでくれ。)と願いながら読み進めた。

    笑えたし泣けたし兎角感動した。
    また明日から頑張ろう。
    そんな1日を繋げて行こう。

  • 認め、受け入れるには時間がかかる。
    毎日しんみりしているわけでなく、リアルな日常はあるわけで、自分と関わる周りの人々にだって苦悩はある。
    想像していたのとちょっと違った(現実味があった)。
    映像化されたら良さそうと思ったら、ドラマ化されてたのですね。キャストがイメージと違ったが、そこがまたいいと思った。想像通りのキャストだと、(個人的な)広がりがなくなってしまいそうで。

    テツコの一言ではっとした。
    そこにあったはずの生活が、起きた状況によって変化して(失われて)しまったとき。
    この場所の居心地の良さはわかる。その日常だって、長い歳月をかけつくられたもの。だけど変わらなきゃいけない時期、心持ちも必要なんだって、そう伝わった。
    なんだかなぁである、前に読んだ本とリンクすることがよくある。そう、まさに自分に向けられた「変らなきゃ(進め)」、だ。

    ゆったりとした、時間の流れを感じることができ、心地よい一冊だった。悲しい空気の中にも、時々突拍子もなさ、そしてとても温かい。夕子さんの章が良かったです。夕子さんのような人好きだなぁ
    「人は変わってゆくんだよ。それは、とても過酷なことだと思う。でもね、でも同時に、そのことだけが人を救ってくれるのよ」

  • 果てしなく優しい物語だと思った。
    人の死を受け入れるってこんなにゆっくりと時間をかけてもいいんだ。
    お葬式にも行けなかった祖母の死は3年以上経った今でも受け入れられない。
    でもそれでいいんだと思った。
    いつか受け入れられる日が来るんだと思った。

    じゃあ死のうとしたけど生きてる人はどうやって受け入れたらいいんだろう。
    突然遺されはぐったこの絶妙にどうしていいか分からない気持ちはどこに落とし所を見つけたらいいんだろう。

    でもそんな気持ちもいつかは受け入れられるのかもしれない。
    ゆるゆると。
    いつか。
    それでいいじゃないかと思う日がきっと来る。
    と思って生きていこう。

  • H29.12.30 読了。

    ・ノスタルジックなほんわかとした感じのする連作短編のような小説でした。読み終えた後は心がほっこりするんだけど、もう少しこの小説の世界を味わっていたいなあと寂しく感じた。

    ・「世の中、あなたが思っているほど怖くないよ。大丈夫。」
    ・「動くことは生きること。生きることは動くこと。」
    ・「わたしはファスナーの先端だと思った。しっかりと閉じられているこの道は、私が開けてくれるのを待っている。そう思ったら、なんだか嬉しくて、気がつくと心の底から笑っていた。」・・・こんな何気ない言葉が素敵だなと思ってしまう。

  • 悲しいのに、幸せな気持ちにもなれるのだ―。
    七年前、二十五才という若さであっけなく亡くなってしまった一樹。
    結婚からたった二年で遺されてしまった嫁テツコと、
    一緒に暮らし続ける一樹の父・ギフは
    まわりの人々とともにゆるゆると彼の死を受け入れていく…。


    7年前に亡くなってしまった一樹。
    結婚して2年で夫を亡くしたテツコ。
    ギフとともに住み続けている。
    妻であるテツコも父であるギフも従兄弟である虎尾も、
    周りの人々は心の中で様々な形で一樹の死を引きずっている。
    何気ない日々の様子を淡々と描きながら、
    それぞれの心の内をポロリポロリと描いてた。
    そして、それぞれが一樹の死を受け入れていく。

    章ごとに誰かに視点が当たる。
    よくある構成なんだけど、どこかこのお話の続きはどうなったの…?
    と思うシーンもありました。
    でも、それもその人の心の揺れや葛藤や足掻きを描いていたのだろう。
    過去と現在を行き来しながらゆるゆると物語は繋がって流れていった。

    誰でも失敗してるんだよ。
    後悔もしてるんだよ。
    それでも動かなきゃいけないんだよ。
    失敗だらけの自分をそれでもいいんだよと
    言って貰ってる気がしました。
    人生は急ぐ必要はないのですよね。

    お互いを思う優しさに溢れていた。
    なにげない日々の中にちりばめられた、「コトバ」の力がじんわり心にしみてくる
    やはり心に沁みいるお話でした(*´ `*)

  • 若くして夫が亡くなった後も、義父と二人暮らしを続けるテツコとの話し。義父をギフと呼ぶところが、微妙な距離感を感じさせる。隣の家の若い女性は、その夫が亡くなったショックで笑うことが出来ず、CAの仕事を辞め引き籠る。
    こういった設定だけだと暗くなりがちだが、軽妙な話題を盛り込み、読み口を軽くしてくれる。
    テツコには恋人ができ、結婚を申し込まれると苗字の組み合わせが嫌で断ったり、後にこの相手はギフとの二人暮らしの家に一時住み込んだり。
    笑いを失った女性は、テツコの夫の思い出の品で復活の兆しが。ギフはテツコの同僚女性等に若い頃の青春が蘇ったり。
    著者は夫婦の脚本家のようで、若い男性の性の目覚めや、義父の心情等良く書けているので、夫が書いているかと思ったら妻の方が書いているよう。脚本家なのか、本の裏側に映像が見える。既にこの本はTV放映されたようですが、納得です。

  • 私的にはパーフェクト。
    言葉のひとつひとつ、台詞の一行一行がいちいち染みる。
    ふんわりと、おかしみと悲しみが漂うような世界。
    なんてゆうか『覚悟』が違うんだよなー。
    自分でも意味分かんないんだけど。
    やっぱり好き、木皿泉。

    • ぺこさん
      こんにちは☆
      私は原作未読でドラマの方は観たのですが、原作未読故かソチラも良かったです。
      5552さんのレビューを拝見して、今度原作も手...
      こんにちは☆
      私は原作未読でドラマの方は観たのですが、原作未読故かソチラも良かったです。
      5552さんのレビューを拝見して、今度原作も手に取ってみようと思います(*´ω`*)
      2018/08/29
    • 5552さん
      ぺこさん、コメントありがとうございます!

      ドラマを先にご覧になられてるんですね。
      確か仲里依紗さん主演でしたよね。
      未見なのでいつ...
      ぺこさん、コメントありがとうございます!

      ドラマを先にご覧になられてるんですね。
      確か仲里依紗さん主演でしたよね。
      未見なのでいつか観てみたいです。

      原作のほうは、いつまでもその世界に浸っていたいような、そんな気分になった小説です。
      機会があれば是非☆
      2018/08/29
  • 逃げられないようにする呪文もあるなら、それを解き放つ呪文もこの世に同じ数だけある。その双方の呪文についてのお話。

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著者プロフィール

夫婦脚本家。ドラマ「すいか」で向田邦子賞、「Q10」「しあわせのカタチ~脚本家・木皿泉 創作の“世界”」で2年連続ギャラクシー賞優秀賞。他に「野ブタ。をプロデュース」等。著書『二度寝で番茶』など。

「2020年 『さざなみのよる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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