考えるということ: 知的創造の方法 (河出文庫)

著者 :
  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (308ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309415062

感想・レビュー・書評

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  • この頃読んだ本の中では比較的面白かった。特に文学編における読解の仕方やアプローチは刺激的だったし、読みたい本も増えた。が、副題の「知的創造の方法」そのものは取り立てて一般的で、目新しさはない。ただこれに関しては本質とは得てしてそういったものだと言えるかもしれない。
    あとは一冊の本としての構成がややアンバランスに感じた。骨太な1章から3章と比べて序章と終章があまりに軽すぎるのだが、「知的創造の方法」自体は主にそのふたつの章で語られている(1章から3章は、方法を実践するとこのように考えられる、という著者自らの実例だ)。方法論の章も思考実例同じくらい骨太にしろというのは無茶な要求とは思うが、何かやりようはあったのではないかと思う。正直読んでいて温度差に面食らってしまった。具体的な改善策がなくて申し訳ないが、感じたことを記録しておく。

  • 1.この本を読み終わって最初に思ったのは「ブクログの『評価と感想』はキチンと書かないといけないな」
    です。

    本を読む→感想を考える→感想を書く

    これが読書家による「考えるということ」

    執筆者による「考えるということ」
    にも言及されていて、
    「本(や論文)を読む」「本(や論文)を書く」方は一度目を通して欲しい本だと思いました。

    ですので私のように「この本を読んで、なんか凄い思考術を得たいなぁ」と思って読むだけでは「思考術」は得られず「考え」ない限り思考術は得られない。と
    いう事で私は未だ「思考術」を得ることは出来ていないのです。


    2.この本は「序章」「終章」「あとがき(など)」で「考えるということ」に触れられており、
    あいだの「第一章」〜「第三章」では色々な本の解説、色々な本を横断しながら
    「色々な事を考える」ことをしています。

    第一章 社会科学篇について
    とにかく理解するのが難しかった。
    特に「マルクス」のあたりから、
    「この本読むの詰んじゃうかもしれない」
    と思うほどだった。

    第一章を読み終わって
    「筆者が何を言っているのか理解できないが、言いたいことはなんとなく理解した気がする」
    でした。
    とにかく「何を言っているのか良くわからない」が第一章の感想です。

    筆者曰く
    「どの章からでも読み始めて良いですよ〜(意訳)」なので、正直言って第一章は読み飛ばしても良いかもれないけれど、
    本の「あとがき」の後ろにある「解説 凡庸な警察と名探偵(木村 草太)」で解説があるので、積む前に「解説」を読むのをお勧めします。

    第一章のテーマは「時間」です。


    第二章を読み終わって
    「文学」を扱うので必然的に「ネタバレ」を含みます。
    この本で紹介されいてる本で興味を持ったのは「東京プリズン(赤坂真理著)」ですが、これのネタバレも喰らいました。

    ・こころ(夏目漱石著)
    ・罪と罰(ドストエフスキー著)
    ・東京プリズン(赤坂真理著)
    ・贖罪(イアン・マキューアン著)
    ・プロデックの報告書(フィリップ・クローデル著)

    以上5作品のネタバレを含みますので、これらの作品のネタバレを回避するのであれば第二章は読み飛ばすべきだと思います。

    第二章のテーマは「罪」です。


    第三章では「数学」「重力」「超ひも理論」「量子力学」など、非常にとっつきにくいテーマで、
    「第一章同様、理解するのが難しいのではないか」と、思っていたのですが意外と分かりやすい内容でした。

    「量子力学」については私には前提知識がある(と言っても私の好きな作家劉慈欣のSF小説「三体0」を読んだから「量子力学」についてもちょっとだけ知識がある)
    から理解できるのかもしれないのですが、それを抜きにしても専門知識が無くても理解できる内容かな、と思います。

    第三章のテーマは「神」です。「科学」と一切関係なさそうな「神」という単語。これが繋がります。


    3.「時間」「罪」「神」
    これらは全く関係なそうな単語の羅列に見えます。
    ですが、本書においてはこれらは繋がっています。

    ですので繋がりがある以上、本書が提示している順序どうりに読み進める方が良いのですが、「第一章」の難解さが邪魔をします。

    「まえがき」→「序章」→「第一章」→「解説」→「第二章」→「第三章」→「終章」→「あとがき」→「文庫版あとがき」
    の順に読むのがベストだと、この本を読み終わってみて感じました。


    4.この本で得た「学び」を言語化するのは私にはむずかしいです。
    ですが、色々他の本を読んでみたり、この本を2回 3回読んでみて「この本を読んだことで〇〇という学びを得ました」という感想を述べることができるだろう。
    ということが、この本を読んで確信したことの一つです。

    ただ、この本を通して
    「もっともっと、色々な書物を読みたいなぁ」という欲望にかかれてしまったので、
    「この本を読み返すことは当分先かなぁ」とは思っています。


    5.私は「本を読むこと」の重要性。
    つまり「他者の知見を読み解くこと」を、この本を通じてその重要性を改めて感じることができました。
    執筆の仕事をしていない私が「書く(スマホで文字を入力する)」ことも
    「思考のアウトプット」をする上で非常に重要な事なのだと感じました。

    「ブクログの『評価と感想』はキチンと書かないといけないな」と思った次第です。


    6.それとこれは余談ですがこの本を読んでいると、アニメ「シュタインズゲート」の場面場面が頭の中にチラついてしまって。

    この本の
    「時間」
    「罪(例えばバイト戦士の「失敗した失敗した」の手紙は罪とも言えるし、第一章の「時間のニヒリズム」の例えとしてちょうど良いとも言える)」
    「神(=観測者=オカリン)」

    という、テーマとシュタインズゲートのテーマが重なっているからだという事なのだろうな。などと思った次第です。

    以上。

  • 社会学の大澤先生の思考論。
    考えるにあたり、書物の力を媒介とする点は、編集工学の「探究型読書」と似ている。

    以下が主な命題。
    ・何を、いつ、どこで、いかに、なぜ考えるか
    ・ショックがあった思考が起動する・・・ジル・ドゥルーズの「不法侵入」 
    ・が、常識の壁を破るのはなかなかに難しい
    ・思考を化学反応ととらえると触媒となるのは、他者と書物
    ・書物の力をいかに創造的に活用するかがテーマ


    読んで考える、という観点で、テーマごとに下記の書物が取り上げられている。いずれも考え甲斐があるのは間違いない。また思考の共鳴を促すようにも編集されている。

    社会科学:主題 時間・・・真木悠介「時間の比較社会
    学」(ハイデガー「存在と時間」)、カール・マルクス「資本論」、ベネディクト・アンダーソン「想像の共同体」、エルンスト・カントーロヴィチ「「王の二つの身体」、マックス・ヴェーバー「プロテスタンティズムの倫理と資本主義の精神」

    文学:主題 罪・・・夏目漱石「こころ」、ドストエフスキー「罪と罰」、赤坂真理「東京プリズン」、イアン・マキューアン「贖罪」、フィリップ・クローデル「ブロデックの報告書」

    自然科学:主題 神・・・吉田洋一「零の発見」(春日真人「100年の難問はなぜ解けたのか」)、大栗博司「重力とは何か」、ヴィクトル・I・ストイキツァ「絵画の自意識」、山本義隆「磁力と重力の発見」、リチャード・ファインマン「光と物質のふしぎな理論」・ブライアン・グリーン「エレガントな宇宙」


    なお、実務的に書くを扱った章も新鮮。「思考は書くことで完結する」は名言。
    (原稿の依頼 執筆 公表 などの実務的問題)

  • ◆5/24 シンポジウム「自由に生きるための知性とはなにか?」と並行開催した「【立命館大学×丸善ジュンク堂書店】わたしをアップグレードする“教養知”発見フェア」でご紹介しました。
    http://www.ritsumei.ac.jp/liberalarts/symposium/
    本の詳細
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309415062/

  • 本書は、社会科学、文学、自然科学の本を読みながら、大澤真幸氏の思考法をたどってみせる本だけれど、特に、文学編が面白かった。

    取り上げられている本は、夏目漱石『こころ』、ドストエフスキー『罪と罰』、赤坂真理『東京プリズン』、イアン・マキューアン『贖罪』、フィリップ・クローデル『ブロデックの報告書』。テーマは「罪」。

    中でも目を見張ったのが、(キリスト教の)神と倫理をめぐるくだり。
    まとめると、神は万能であるがゆえに、最後の審判において誰に赦しを与えるべきかをあらかじめ知っている。
    しかし凡々たる人間は人生という然るべき時間を経たあとでなければ自分が赦されるのかどうかわからない。だから神は、人間の側から見れば、いわば賭けに出ているのだ。
    ①その上で、もしある人が赦されるはずだったのに地獄に落ちれば、神の信用は失墜する。
    ②神の予言どおりに救われれば神の信用は維持される。
    したがって、神を賭けに勝たせてやろうとすることが、究極の倫理的行為ではないのか、という視点は、これまで生きてきた中で想像したことのないものだったからびっくりした。

    ただ、ひとつ気になったのは、では、決して救われないと信じている人間が、地獄に落ちるような人生を自覚的に送ること。これは、倫理的行為であるのかどうか。

  • いわゆる「知的生産」や発想法について、著者自身のこれまでの仕事を振り返りながら具体的な方法が語られている本だと思って手にとったのですが、中心となっているのは社会科学、文学、自然科学のそれぞれの分野からいくつかの本を導きの糸として、大澤社会学の比較的新しい展開を語ったものになっています。

    社会科学篇では、真木悠介の『時間の比較社会学』を導きの糸として、時間についての理論社会学的な考察が展開されています。時間意識のありかたが社会によって異なることを論じつつ、西洋近代における時間意識の背後に、予定説によって想定された神の位置から自己を規定するとともに、そうした自己の視点から逆に神を規定するような見方が可能だと述べられ、そうした見方にもとづいて未来の他者への倫理の展望が示されることになります。

    文学篇では、夏目漱石の『こころ』、赤坂真理『東京プリズン』、イアン・マキューアン『贖罪』などの作品の解釈がおこなわれています。社会科学篇で提示された倫理とも共振するような思索をそれぞれのテクストのうちに読み込むとともに、「罪」というテーマをめぐる魅力的な考察がなされています。

    自然科学篇は、耳目を引くような科学上のいくつかの事実を紹介しつつ、「存在」についての考察がおこなわれています。

    期待していた内容とはちがいましたが、興味深く読むことができました。

  • 自己啓発

  • 社会科学と文学と自然科学とを分野横断的に論じる該博な知識に、まず舌を巻く。といって、決して細部を抽象的な論理でごまかすことをしないので、ほとんど苦もなくすらすらと全体を読みとおすことができる。もちろん、それぞれの細部はすでにほかの論者によって指摘されているものもすくなくない。たとえば、漱石の『こころ』を論じて、先生のお嬢さんへの恋がKの存在によってはじめて形成される、というような指摘は(ヘーゲルふうに言えば「人は他人の欲望を欲望する」)、おそらく柄谷行人の引用である。また、マルクスの『資本論』(価値形態論)への言及も、柄谷以外にも岩井克人や熊野純彦の論考にも同型のモデルを発見することができるだろう。だが、この本の趣旨が、「広く」かつなるべく「深く」諸分野の名著を論じることにある以上、そのような先行研究のわかりやすい一種の「サマライズ」は不可欠のものとも言えるだろう。
    補論として収録されている「思想の不法侵入者」は非の打ちどころのない名文で、また、個人的には、終章の「編集者の使命」にある「編集者は、日本の知的文化の質を維持する上で、重要な役割を果たしている」という記述には、襟をただされる思いがした。

  • 社会学者として最もリスペクトしている大澤真幸さんの著書。序章の時点で気に入りすぎて付箋をいっぱい貼るほど。何よりも面白いのが、著者が本をどのように読み、いかにして思考を紡いでいくかを疑似体験できること。

    各章において、社会科学・文学・自然科学の名著をどのように読み解き考えるかも述べられている。自分の専門外の部分は、正直難しいが、例えば社会科学の部分では「時間」の概念の歴史的変遷などが分かり興味深い。著者の知識の深さに驚きながら読み進めることができる。

    ☆心に留めたい箇所
    ・思考を進化させるためには、書物の力を創造的に活用する技術を持たなくてはならない

    ・常に自分に問いかけると良い。この理論や概念は、自分が自分の問題を考える時にはどういう表現になるだろうかと。

    ・自分は何かにインパクトを受けた。それは人生の中でずっと持続させたい。あるいは他人に伝わってほしい。そのためには十分考え抜いて言葉にするしかない。

    思考したことを相手に伝える楽しさをこの本を通じて感じることができた。本を通して感じたことをきちんとアウトプットすることで、自分の考えを他者に伝える力を身に付けたいと思う。

  • 私は考える,この世界を。

    難しいところもあったけど,とりあえず読みとおした。考えること,そして書き表すこと。決して止めてはならないと思う。最近,あまり考えてないけど。

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著者プロフィール

大澤真幸(おおさわ・まさち):1958年、長野県生まれ。東京大学大学院社会学研究科博士課程修了。社会学博士。思想誌『THINKING 「O」』(左右社)主宰。2007年『ナショナリズムの由来』( 講談社)で毎日出版文化賞、2015年『自由という牢獄』(岩波現代文庫)で河合隼雄学芸賞をそれぞれ受賞。他の著書に『不可能性の時代』『夢よりも深い覚醒へ』(以上、岩波新書)、『〈自由〉の条件』(講談社文芸文庫)、『新世紀のコミュニズムへ』(NHK出版新書)、『日本史のなぞ』(朝日新書)、『社会学史』(講談社現代新書)、『〈世界史〉の哲学』シリーズ(講談社)、『増補 虚構の時代の果て』(ちくま学芸文庫)など多数。共著に『ふしぎなキリスト教』『おどろきの中国』(以上、講談社現代新書)、『資本主義という謎』(NHK出版新書)などがある。

「2023年 『資本主義の〈その先〉へ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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