- Amazon.co.jp ・本 (296ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309415192
感想・レビュー・書評
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東日本大震災チャリティーAVを企画しているAV制作会社。会長、社長、監督、AD、超能力でなんでもできる宇宙人ジョージなど、放送禁止用語連発でふざけちらかした「ひどい小説」なのだけど、怒ってはいけない。なぜから高橋源一郎は最初から「ひどい小説」を書くつもりでこれを書いたから。
文庫版あとがきにて作者いわく「理由はともあれ、おれには、ひどい小説を書く必要があった。というか、おれたちはみんな、ひどいものを読む必要があったんじゃないかな。おれたちは、ひどいなにかに囲まれていたわけだから。 おれたちを囲んでいる、ひどいなにかに対抗するためには、それに負けないぐらいひどいなにかが要るんだ」
わたくしごとですが、先日たまたまNPO法人で被災地支援活動をしている友人に誘われて福島に行く機会があり、そこでふと思いついてこの本を福島へむかう新幹線の中で読みました。泊まった旅館の方からも震災当時の話を聞いたり、実際に飯館村のほうへむかう車の窓から、汚染土が詰め込まれた黒い巨大な袋がびっくりするくらい山積みにされてあちこちに放置されている様子を目の当たりにして「まだ何も終わっていない」ことに改めて気づきとてもショックだった。
本当に、あまりにもひどいことが起こっているので、高橋源一郎が「ひどい小説」を書きたくなる気持ちもとてもよくわかりました。でもまあだからといって、この本を万人には薦めないけどね(笑)
万人にお薦めできる部分は、突如挿入されている真面目な「震災文学論」の章のみ。紹介されているのは川上弘美「神様 2011」と、宮崎駿「風の谷のナウシカ」完全版(※映画ではなく原作)、そして石牟礼道子「苦海浄土」の3作。大真面目にきちんと語られているので、この部分だけは是非とも多くの人に読んでほしい。
終盤で、主人公は突如あることをひらめく。不可能なことはない何でもできる宇宙人ジョージ、彼に「何もかも全部元に戻して」と頼めばいいのではないか!しかしすぐに彼は思い直す、なぜなら「たぶん、それは間違ってるから」。起こってしまったことを、なかったことにはできない、というシンプルなメッセージ。現実には宇宙人ジョージはいないので、何もかも元通りにできる魔法などもとより存在しないのだけど、それでも「なかったこと」にしようとする人間はいて、私たちはせめてそれに抵抗しなくてはいけない、と柄にもなく強い気持ちをもちました。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
うーん。
すごく「良くわかる(良くわかる気になる)」箇所と、極端に「なんかどうでもいいじゃん」箇所の差が激しい。
そもそも僕にとってこの著者の作品って「とんでもなく面白い」と「死にたいほどにつまらない」の差が激しい。
そんな両極端が一つの作品の中に混在している感じ。
玉石混交ってところか。
決して不謹慎だとも思わないし、連発されるいわゆる「放送禁止用語」にも特に嫌悪感は覚えなかったが、電車の中では少々読みづらいか。
いずれにしても読む人を選ぶ作品……あ、それっていつものことか。