- Amazon.co.jp ・本 (192ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309415796
感想・レビュー・書評
-
佐藤春夫 著「南方熊楠」、1952.3刊行、2017.11文庫。熊野が生んだ2人の偉人。田辺の南方熊楠を新宮の佐藤春夫が描きます。明治・大正・昭和にわたる75年の生涯、碩学で英雄、斗酒をも辞せぬ酒仙、純真で野人、また赤裸々な自然児。いわば超人。また、母国語同様に操った22~23ヶ国語という熊楠伝説もあります。小説家佐藤春夫の巨人南方熊楠への敬意が諸所に感じられます。これは伝記なのか小説なのか!
詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
2017年12月19日から、国立科学博物館で『南方熊楠生誕150周年記念企画展 南方熊楠-100年早かった智の人-』がはじまりますので、ナイスタイミングでの文庫でしたよ、河出書房さん。(150周年だから文庫化したのかもしれませんがw)
伝説的な諸々の逸話に対する佐藤春夫の考察、面白かったです。 -
熊楠自身の書いた本は実はそれほど読んでいないのだけれど、熊楠について書かれた本やエッセイ、というのは結構読んできた気がする。というか熊楠自身の著書よりもしかして熊楠について書かれた本の数のほうが多いんじゃなかろうか。こちらは熊楠と同郷で生前面識もある佐藤春夫が1952年(昭和27年)に書いたわりとお堅い感じの評伝。書かれた年代が年代なので文章としてはけして読み易くはないのだけれど、佐藤春夫なのでそれなりには読ませる。
大学予備門(同級生は漱石や子規、秋山兄弟ら)を中退してアメリカに留学、そこでも大学中退してなんだかよくわからないけど曲馬団と一緒にキューバに行って象の世話をしたり、今度はイギリスに渡って大英博物館の嘱託みたいな仕事をしたり、そこで孫文と知り合い大親友になったり、若かりし熊楠はかなり波乱万丈。このへんは熊楠ゆえ伝説化されて眉唾みたいなエピソードもたくさんあり(キューバ革命に参加したとか、孫文と知り合ったのはそのときだとか)佐藤春夫は冷静にそれらを否定している。
途中「念友」だった羽山兄弟とその姉妹たちとのエピソードなどは興味深かったけど、後半のほとんどがが昭和天皇との思い出話になっていて、そのへんは退屈というと不敬かもしれないけれど、けして分厚くもない熊楠の伝記としてはちょっと偏りすぎかなという印象を受けた。
個人的には曲馬団と一緒に南米にいっちゃったエピソードとかがやっぱり好きだなあ。そういえば安岡章太郎の『大世紀末サーカス』(http://booklog.jp/item/1/4093523045)でも熊楠のこのエピソードは紹介されていたっけ(厳密には曲馬団と一緒に南米に行ったのではなくキューバに行ってから芸人と仲良くなったらしい)。幕末明治期の海外留学生が同じく海外で巡業している芸人と仲良しになる、というのはわりと定番「あるある」だったっぽい。