心霊殺人事件: 安吾全推理短篇 (KAWADEノスタルジック 探偵・怪奇・幻想シリーズ)

著者 :
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 132
感想 : 8
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  • Amazon.co.jp ・本 (304ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416700

感想・レビュー・書評

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  • 河出から安吾の推理もの短編集。個人的に安吾はやはり桜の森~や夜長姫~が好きなのであまり探偵もののイメージがなかったけれど、結構沢山書いていたんですね。

    表題作は、ケチな高利貸しの金持ちが急にビルマで死んだ長男の幽霊が出たからと降霊術師を呼び寄せたため、ほかの兄妹たち4人は怪しみ、奇術師・伊勢崎九太夫に降霊術のトリックを見破ってくれるように頼むが、実験中に依頼主の高利貸しが殺されてしまう。親族間の遺産争いによる殺人かと思われたが・・・。結末は意外とあっけない。熱海の大金持ちの邸宅で、別館が焼失し中から焼死体が発見される「能面の秘密」も同じく九太夫が探偵役。

    面白かったのは「南京虫殺人事件」南京虫といっても本当の虫のほうではなくて、女性もの腕時計のことを通称でそう呼んだらしい。美女が沢山出てくるのでそれだけで豪華な感じがする(笑)探偵役も婦人警官の娘と、ちょっとポンコツな警官の父のコンビで、シリーズにもできそうだし、もっと長編にも出来そうな題材だった。

    「山の神殺人」は新興宗教みたいなものの信者を利用して殺人を教唆するような話で、ありえそうなところがゾッとした。「選挙殺人事件」と「正午の殺人」は、探偵役が『不連続殺人事件』の巨勢博士。収録作品いずれも、真犯人、犯行の手口などきちんと解明はされるけれども、動機や心理には安吾はあまり重きを置いていないようで、わりと終盤でぱぱぱっと種明かしして終了、アフターフォローはない。

    最後の「アンゴウ」だけはややリリカルで、かつての蔵書がめぐりめぐって本人の元に戻ってきたときに本に挟まれていた暗号、主人公は妻の浮気を疑うが、思いがけない真相が。

    ※収録
    投手殺人事件/屋根裏の犯人/南京虫殺人事件/選挙殺人事件/山の神殺人/正午の殺人/影のない犯人/心霊殺人事件/能面の秘密/アンゴウ

  • それまでの九つの短編がエンターテイメント色の強い探偵小説なのと打って変わって、最後の『アンゴウ』がずるいくらいに哀切極まる。

  • このくらいの時代の科学程度が、推理小説は楽しめます

  •  外国の古い作品の場合、日本語訳するときに現代風の口調とか表現にすることで、今っぽくなるというか、読みやすくなるけど、日本のヤツの場合は、そうはならないですからね。
     表現とか、よく分からないところもあったけど、楽しめました。
     事件解決のところが、最後一気にバタバタしてる感じはしたけど。

  • この短編集は、他の作家の探偵小説に比べて、犯罪に至るまでの犯人の心の動きにあまり焦点を当てていなくて、ただトリックそのものに注目している感が強いのが面白い
    それでいて、犯人をきめてしまうことに固執するのではなく、容疑者の誰もが怪しい、というオチになる話も独特
    直前に夢野久作や江戸川乱歩を読んだせいもあって、安吾の作品は幻想的な雰囲気や怪奇趣味が薄くて、登場人物に不良っぽさがあるなぁと思った
    みんな人間的にどうしようもない部分があるのだけど、そこがむしろ愛嬌になっている
    とりわけ、「正午の殺人」が好きだと思った 「影のない犯人」も、登場人物がそれぞれまあまあ破綻してて面白い

  • 坂口安吾の推理短編が河出文庫から。『KAWADEノスタルジック』のラインナップは本当に凄い……。
    『不連続殺人事件』にしろ、本書にしろ、言わば正統派の謎解きパズルであり、好きな人間には堪らない。

    ……ところで、本書と同日に発売予定だった小栗虫太郎はどうなったのだろうか?

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著者プロフィール

(さかぐち・あんご)1906~1955
新潟県生まれ。東洋大学印度倫理学科卒。1931年、同人誌「言葉」に発表した「風博士」が牧野信一に絶賛され注目を集める。太平洋戦争中は執筆量が減るが、1946年に戦後の世相をシニカルに分析した評論「堕落論」と創作「白痴」を発表、“無頼派作家”として一躍時代の寵児となる。純文学だけでなく『不連続殺人事件』や『明治開化安吾捕物帖』などのミステリーも執筆。信長を近代合理主義者とする嚆矢となった『信長』、伝奇小説としても秀逸な「桜の森の満開の下」、「夜長姫と耳男」など時代・歴史小説の名作も少なくない。

「2022年 『小説集 徳川家康』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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