法水麟太郎全短篇 (河出文庫 お 18-5)

著者 :
制作 : 日下三蔵 
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 144
感想 : 11
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  • Amazon.co.jp ・本 (456ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416724

感想・レビュー・書評

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  • 『黒死館殺人事件』で有名な名探偵・法水麟太郎。法水麟太郎物の短編を発表順にすべて集めた短編集。


    衒学趣味ってどういう事なのかいまいちつかみ切れていなかったのですが、この本を読んで何となく理解できた気がします。
    他の方々も書いている通り内容は難解ですし、トリックや動機もそんな事ある? と驚くものばかり。「そうはならんやろ」「なっとるやろがい」という懐かしのネットミームが頭をよぎりました。
    とはいえ、お寺や礼拝堂、劇団などを舞台にした様々な事件の数々は神秘的でとても心惹かれます。詩的な幻想怪奇の世界に溺れるような雰囲気を楽しむくらいでも良いのかも。

    メインとなるトリックや動機の中に、病気や障害、精神疾患や信仰などのセンシティブな要素を大胆に組み込んでいる所は現代の小説などではほぼ無くなっている事だと思うので、そういった部分は時代を感じて興味深いです。

    1つ困ったのが、事件の見取り図について。細かな図面に手書き(手書き風?)の雰囲気ある説明が書いてあるのですが、細かすぎる上画数の多い漢字+雰囲気ありすぎる独特な文字のせいで字が潰れてしまい読み取れない箇所があります。
    せっかくの素敵な図なので、もう少し大きく載せて欲しかったです。

    ちなみに、一番最初の事件が一番難解で、徐々に読みやすくなっていくので、いっそもう逆順に読むのもアリではないかなと個人的には思いました。

  • 祈祷中に僧が息絶えたー後光殺人事件
    さるギリシャ正教会で僧が殺されたー聖アレキセイ寺院の惨劇
    尼寺で修行僧が不可解な死を遂げたー夢殿殺人事件
    ある離島の怪しげな研究所で所長の死体が発見されるー失楽園殺人事件
    ハムレット上演中のオフェリヤ女優の死ーオフェリヤ殺し
    艇長と盲いた乗組員たちー潜航艇「鷹の巣」
    惨い演劇をみせる劇団の人間模様ー人魚謎お岩殺し
    他1本を含む法水麟太郎シリーズ短編集。

    うーーーん。わからん。
    一番面白かったのは「人魚謎お岩殺し」
    といって何が面白かったかというと、大部分をちゃんと読めたという理由。
    他のものはほとんど意味がわからない。
    まず、固有名詞が何を指しているのかがわからない。比喩を汲めない。説明があるのに状況がつかめない。情景が浮かばない。読み終わっても被害者が誰だったのか何人死んだのかトリックはどうだったのか、まったく思い出せない。推論の根拠がフロイトだったりするし。
    あーだよこーだよと探偵が細かく解説してくれはするのだが、まったくどういう犯罪の手順だったのかわからない。
    各作品で描かれているおどろおどろしさ、禁忌に触れた感覚などは雰囲気としてわかるのだが、読後感は「ほんでなんやったんやん?」となってしまう。
    推理小説というよりはほぼホラーという理解でOKでしょうか。
    文庫版の装丁すらもソレらしくてインテリアとしてはいいのかもしれない(←
    他の方のレビューもみて「何がそんなにわからないのか」と挑戦したのですが、うーん、「なるほどわからん」
    しっかり理解してる方、映像にしてくれないかな。そしたら否応なく世界に入り込めるのに。
    入り込みたいのにわからないからできなかった。
    求ム、映像化。

  • 危うく挫けそうになった一冊。知識不足もあり、名詞がわからなかったり時代背景も曖昧で、さらに少し独特な漢字の使い方がされていて難読でした。なんだか読むことに必死で内容が印象にのこらなかった。

  • 『黒死館殺人事件』を何回読みだしても必ず途中で挫折してしまうので、短編集なら読めるのじゃないかとトライした。読み終えた~。読み終えたけど内容はサッパリ分からなかった(笑)。
    探偵役の法水が天才すぎて謎を解明されても理解出来ない。そしておびただしい数のルビ。誰か、この著者の作品を現代語訳してくれないだろうか?(^-^)
    まあ、それもこれも私の理解力不足なだけで、じっくり吟味して読めれば多分傑作なのだろう。「聖アレキセイ寺院の惨劇」の動機には驚かされたし、取り敢えずこの奇書が読めて良かった。

  • 『黒死館殺人事件』でおなじみ名探偵(元捜査局長、現刑事弁護士)法水麟太郎(のりみずりんたろう)が活躍する短編を年代順(昭和8~12年)にすべて収録。

    衒学的なのは相変わらずで、そこはあまり気にしないのだけど、謎が解けてもいまいちスッキリしないのがどうもいただけない。殺人現場の道具立て、設定はとても豪奢で興味をそそられるのだけど、探偵役の法水の超人的頭脳に凡人の読者は追いつけないので、推理の経過にスリルが感じられず、結論だけ聞かされることになるから、一緒に謎解きする楽しみがないのが不満なのかもしれない。法水先生のご高説を拝聴するだけでは、目からウロコのカタルシスもなく。

    「夢殿殺人事件」を例にとるとそもそも、殺人に使われた「玉幡」というものの形状がわからないので(自分の無学を晒してるだけかもしれないごめんなさい)、なるほどそんなトリックが!となれないし、そのような驚異的なトリックを編み出す犯人は当然、法水に匹敵する博識と頭脳の持ち主でなくてはならないはずなのに、そうでもないことが大半だし、動機も弱い。当時の流行だと思うけどフロイトを引っ張り出して来たり、心理試験めいたことをして犯罪心理を分析するのも個人的にあまり説得力を感じず。

    とはいえやっぱりその豪奢な設定を楽しむのが法水麟太郎ものの醍醐味ではある。寺院や教会、あやしげな研究施設はもとより、「潜航艇「鷹の城」」では潜水艦で起こった殺人をニーベルンゲンの伝説になぞらえたり、「オフェリヤ殺し」は当然ハムレットの舞台上での殺人劇、「人魚謎お岩殺し」は乱歩的な孤島で生まれたシャム双生児と旅芸人一座の秘密など猟奇味満載、それなりに面白く読めました。

    ※収録
    後光殺人事件/聖アレキセイ寺院の惨劇/夢殿殺人事件/失楽園殺人事件/オフェリヤ殺し/潜航艇「鷹の城」/人魚謎お岩殺し/国なき人々

  • 縦横無尽な知識と推理で事件を解決する超絶探偵の短編集。先に黒死館殺人の方を読んでいるがコチラも十分に難しい。見取り図等あるのは親切。
    作者の中でも黒死館殺人は大きかったのか作中でも結構触れられていた。


  • 学生(らいすた)ミニコメント
    江戸川乱歩、横溝正史も認めた独特な世界観。名探偵・法水麟太郎(のりみず・りんたろう)の活躍に注目。

    桃山学院大学附属図書館蔵書検索OPACへ↓
    https://indus.andrew.ac.jp/opac/book/648242

  • 挫折。

  • 法水麟太郎ものの短編が1冊に。
    ひとくちに『法水麟太郎もの』といっても、冒険小説風のものから、正統派の探偵小説まで、バリエーションに富んでいる。『黒死館殺人事件』のイメージだけで読み進めていると意外だった。そもそも小栗虫太郎は冒険小説も書いていて、そういう部分が少し顔を出しているのだろうか。
    巻末の解説によるとエッセイも文庫になるらしい。手軽に入手可能な小栗虫太郎の本が『黒死館』だけだった頃を考えると、隔世の感がある。河出文庫には足を向けて寝られないと思っているが、同じようなことを感じているのは私だけではないだろうw

  • 法水麟太郎モノの短編を発表順に収録(残りの長編2編、黒死館と二十世紀鉄仮面は既刊アリ)。
    年代順に並べて読んでいくとやはり後半の作品になるに従って描写が読みやすくはなっていってるなぁという印象。(当時流行の秘境冒険モノテイストも入ってきて大衆小説色も強くなってくるからかもしれませんが)
    しかしそれにしても、ページを繰る度に迸る法水の衒学趣味には翻弄されるし、肝心の事件のトリック部分は頭の中に「???」が飛び交ってしまうのですが(笑)、だがそこが良い。その翻弄される感覚含めての虫太郎テイストなので、存分に堪能いたしました。

    後光殺人事件、聖アレキセイ寺院の惨劇、夢殿殺人事件、失楽園殺人事件、オフェリヤ殺し、潜航艇「鷹の城」、人魚謎お岩殺し

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著者プロフィール

小説家。1901年東京生まれ。本名、小栗栄次郎。1927 年、「或る検事の遺書」を、「探偵趣味」10月号に発表(織田清七名義)。1933年、「完全犯罪」を「新青年」7月号に発表。「新青年」10月号に掲載された「後光殺人事件」に法水麟太郎が初めて登場する。1934年、『黒死館殺人事件』を「新青年」4~12月号に連載。他の著書に、『オフェリヤ殺し』、『白蟻』、『二十世紀鉄仮面』、『地中海』、『爆撃鑑査写真七号』、『紅殻駱駝の秘密』、『有尾人』、『成層圏の遺書』、『女人果』、『海螺斎沿海州先占記』などがある。1946年没。

「2017年 『【「新青年」版】黒死館殺人事件』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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