日本怪談集 奇妙な場所 (河出文庫)

制作 : 種村季弘 
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 53
レビュー : 6
  • Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309416748

感想・レビュー・書評

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  • 夏になる前に先取りで怪談集を、ではありません。これには深いわけがありまして・・・。

    一流どころの作家たちが書いた名作怪談を種村季弘さんの編集です。わたしの好きな日影丈吉さんから始まって、幸田露伴、森鷗外、吉田健一、佐藤春夫、吉行淳之介、大岡昇平、内田百けん、日野葦平・・・現代作家では筒井康隆、笹沢佐保、当然、泉鏡花、小泉八雲も選ばれますよね。

    ラフカディオ・ハーンの『貉(むじな)』なぞは落語でおなじみ、「なあんだ」ですけど、何度読んでも笑える怖さですよね。家鳴り震動、物体移動あり現代で言えばはポルスターガイスト。果ては幽霊、怨念、因縁、さまよう魂など、人間の意識の中での超常現象か。

    ま、お好きな方には由緒正しい読み物ですね(笑)

    さてさて深いわけと申しますのは、ネット上の知り合いのお嬢様がこの文庫のカバー絵を作画なさっていらして、わたくしの孫娘が高校のデザイン科に入学したばかりで将来を応援しているものですから、とても関心があったのであります。さっそく購入、読みましたら孫娘に贈ろうと。

  • 河出文庫の怪談シリーズ日本編その2。こちらは家、坂、沼、と場所にまつわる怪談を収録。こちらも「憑りつく霊」編と同様、明治の文豪から昭和のベテラン作家までビッグネームが勢ぞろい。ゆえに既読の作品もやっぱり多いけれど安定感は抜群。

    筒井康隆「母子像」、半村良「終の岩屋」なんかはそちらが本領の作家だけに一種の異次元SFとしても読める。吉田健一「化けもの屋敷」は、もう1冊に収録されていた「幽霊」同様、怖がるどころか幽霊一家とほのぼの同居。足穂「山ン本五郎左衛門~」は本人の短編集および他のアンソロでも何度も読んだので今回は飛ばしちゃった。(カタカナなので読み難いのよ)

    坂道シリーズ、鴎外の「鼠坂」と大岡昇平「車坂」は偶然ではなく編者の故意だろうがどちらも坂の上の家で語られた話の内容が、戦時中に中国で侵略した村の若い娘をみつけて強姦後殺害した男の話。せいぜい祟られるがよかろう。こちらは極端な例ではあるが、他にも戦中戦後の話がとても多いのが日本の怪談の特徴…というか平成以前の文学にそれだけ多いモチーフだったのだろう。

    好みだったのは、お馴染み悪夢系の百けん「遊就館」、大好物の河童もの火野葦平「紅皿」、そして小田仁二郎「鯉の巴」は、巴と名付けた鯉を溺愛する独身男がついに鯉と交わるも、人間の嫁を貰った途端に巴を捨て…という異類婚姻譚。巴ちゃん、最初から人間の姿で出てきてあげればよかったのにね。

    都筑道夫「怪談作法」はちょっと変わり種で怪談のオチの付け方講座みたいな、武田百合子「怖いこと」はエッセイ、小沢信男「わたしの赤マント」は子供の間で口コミで広がる都市伝説(口裂け女とか)のひとつ「怪人赤マント」について雑誌の読者投稿欄で討論される形式になっていて斬新。最後を澁澤龍彦「髑髏盃」で締めくくるあたり種村季弘らしい。

    最後に。各国怪談読み比べてみてお国柄の違いなどもっと出るかなと思ったらそれほどでもなく、別の方の感想にもあったけれどどちらかというと編者次第という感じ。個人的には日本は別枠として、自分の好みと一致したのはラテンアメリカとロシアの怪談でした。

    ※収録
    <家>
    ひこばえ(日影丈吉)/母子像(筒井康隆)/化物屋敷(佐藤春夫)/化けもの屋敷(吉田健一)/出口(吉行淳之介)/百物語(森鴎外)/山ン本五郎左衛門只今退散仕る(稲垣足穂)
    <坂>
    遊就館(内田百けん)/狢(小泉八雲)/鼠坂(森鴎外)/車坂(大岡昇平)
    <沼>
    沼のほとり(豊島与志雄)/幻談(幸田露伴)/紅皿(火野葦平)/鯉の巴(小田仁二郎)
    <場所>
    老人の予言(笹沢左保)/怪談作法(都筑道夫)/怖いこと(武田百合子)/わたしの赤マント(小沢信男)/終の岩屋(半村良)/雪霊続記(泉鏡花)/髑髏盃(澁澤龍彦)

  • やっぱり怖いから読めないかも

    河出書房新社のPR

    旧版(但しPRなし)
    http://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309402444/

    妻子の体が半分にやせ細り死ぬ家、出所したばかりの犯罪者と相部屋になった男の恐怖体験…身の毛もよだつ怖い話から、尻子玉を奪い合う河童やのっぺらぼうなど昔ながらの怪談まで収録。新旧怪談の中から種村季弘が選りすぐった日本怪談アンソロジー! (紀伊國屋書店)

  • 怪談アンソロジー。「場所」がテーマになっているけれど、時代も読み心地も様々です。もちろん怪談だけれど、怖いだけじゃなくって愉快な物語もあったりして。
    日影丈吉「ひこばえ」と筒井康隆「母子像」は何度読んでも怖いなあ。半村良「終の岩屋」も何とも言えない恐ろしさを感じる作品でした。たしかにすっきりしそうではあるのだけれど。どうなるのかを誰も知らないというのは……ああ、やっぱり怖い!
    ちょっと読むのにてこずりましたが稲垣足穂「山ン本五郎左衛門只今退散仕る」がとんでもなく愉快な話で楽しめました。怪異は次々起こるのだけれど、どれもユーモラスで楽しいなあ。いや、その場にいればそれどころじゃないのかもしれませんが。そしてそんな状態にありながら、とりあえずすぐに寝てしまう平太郎(笑)。すげー。

  • 丸善150周年記念として復刊された本です。
    一般の本屋さんでは11月発売の様ですが、丸善ジュンク堂と通販のhontoでは3月から発売中です。

    種村さんがどういう基準で選んだものか「怪談」と言う視点では、ちょっとズレている感じもします。ジワッとは来ますけど余り怖くは無い。
    とは言え錚々たる執筆陣です。文豪や曲者的作家が並びます。この中で私が近しいのは筒井康隆、火野葦平、都筑道夫さんくらいですね。あとは名前は知ってるけど読んだことの無い作家さんが並びます。元々、アンソロジーは普通読まないのですが、どこか翻訳物を読んでるような吉田健一の文体に驚いたり、泉鏡花の幻想に浸ったり、森鴎外の外国単語交じりの文章(アクサンチュエエって結局なんなんだ?)に時代を感じたりしながら読了しました。

    『ひこばえ』 日影丈吉
    『母子像』 筒井康隆
    『化物屋敷』 佐藤春夫
    『化けもの屋敷』 吉田健一
    『出口』 吉行淳之介
    『百物語』 森鴎外
    『山ン本五郎左衛門只今退散仕る』 稲垣足穂
    『遊就館』 内田百閒
    『貉』 小泉八雲
    『鼠坂』 森鴎外
    『車坂』 大岡昇平
    『沼のほとり』 豊島与志雄
    『幻談』 幸田露伴
    『紅皿』 火野葦平
    『鯉の巴』 小田仁二郎
    『老人の予言』 笹沢左保
    『怪談作法』 都筑道夫
    『怖いこと』 武田百合子
    『わたしの赤マント』 小沢信男
    『終の岩屋』 半村良
    『雪霊続記』 泉鏡花
    『髑髏盃』 渋沢竜彦

  • 丸善150周年限定復刊、河出文庫のラインナップは、『日本怪談集』『イギリス怪談集』『中国怪談集』。本書は『日本怪談集』の、旧版では『上巻』に当たる1冊。
    定番のアンソロジー・ピースからマニアックなものまで、様々な作品が収録されているが、『怪談』と銘打ったアンソロジーで、まさか吉田健一の名前を目にすることがあろうとは(因みに吉田健一は下巻に当たる『取り憑く霊』の方にも収録されていて、最早、吃驚を通り越して衝撃だったw)。
    吉田健一の小説作品に『不幸そうな登場人物』はいない。過去に色々あったと思しき登場人物はいるが、皆、呑み、食べ、ただ生活を楽しんでいる。吉田自身が常に『人間らしく生きる』ということに拘っていたのだから当然と言えるが、吉田作品は幽霊もただ普通に生活しているのだ。そういう作品をセレクトした種村季弘は凄い。
    他の収録作では矢張り内田百閒、森鷗外。意外なところでは笹沢左保が面白い。

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著者プロフィール

1933年東京生。独文学者。『ビンゲンのヒルデガルドの世界』で1996年度の芸術選奨、斉藤緑雨賞受賞。第一著作集「種村季弘のラビリントス」。ホッケ、マゾッホの翻訳・紹介者でもある。

「2020年 『ドイツ怪談集』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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