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本 ・本 (208ページ) / ISBN・EAN: 9784309419657
感想・レビュー・書評
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王谷晶『ババヤガの夜』河出文庫。
新道依子という美形ではないが、無骨で恐ろしく喧嘩が強い女性を主人公にしたバイオレンス・アクション小説。
前半の面白さが全て吹っ飛んでしまう、まるで途中でストーリーを放棄したかのような端折り過ぎた急展開と呆気ない幕切れが、余りにも勿体無い。
町でヤクザ相手に大喧嘩しているところを仲間のヤクザに拉致された新道依子。ヤクザの大邸宅に連れ込まれた新道はヤクザの親分の娘の尚子の護衛を命ぜられる。お嬢様育ちの尚子に対して、がさつな新道という水と油の二人は次第に距離を縮め、互いのことを話し合うようになる。
ところが、尚子の婚約者で残忍な拷問が趣味の変態ヤクザを新道が暴漢と間違えて殴り倒したことから事態は急展開する。
面白かったのはここまで。ここからは、まるで結末を焦ったかのように、話は一気に40年後に飛ぶ。
定価748円
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めったに手に取らないジャンルの小説だが、ダガー賞受賞の報につられて、読んでみた。
特異な境遇に育ち、不可思議な運命で出会った二人の間に引力が生じ・・という話だと思う。その舞台背景として描写される暴力は、なかなか凄惨。ちょっと書割りのように作り物めいてもいる世界観だが、そういうところが英訳バージョンではうまくハマるのかもしれない。 -
主人公の新道依子は、歌舞伎町でチンピラとの乱闘中に拉致され暴力団会長の内樹の屋敷に運ばれる。そこで内樹が溺愛する娘、尚子のボディガード兼運転手をさせられることになる。祖母の語るロシアの森に住む妖婆ババヤガに憧れ暴力的で冷酷ながら弱者には慈悲的な依子と、ミソジニーな父親に支配され自由を束縛された尚子、当初は互いの境遇に嫌悪感を抱きながらも、二人の間に微妙な信頼関係と愛情が芽生える。二人の真逆のキャラクターが面白く一気に物語に没入させる。細部まで描かれた残虐な暴力シーンには圧倒されるが後半の二人の何十年に及ぶ逃避行についての描写が省かれているのに物足りなさを覚えながら読了。
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バイオレンスアクション小説と銘打たれているこの小説は、文芸路線の色が濃い河出文庫では、異色と言っていいか。
しかも女性を主人公にしたミステリーなどのエンタメは、大概美人との設定だが、この小説の主人公は美人とはされてなく、そこでも異色な作品。
この女性めっぽう強く、暴力団相手に互角以上の闘いを演じているアマゾネスのような。
他のレビューでも指摘されているが、前半の胸のすくようなスピーディな展開が、後半ガラッと変わってしまうのがチト残念。
数年後の二人が、あの二人とは、予想はされたが意外感も。 -
不条理な暴力と不器用な暴力。
様々な暴力のカタチが交錯する。
人は何処に幸せを求める。 -
めちゃ面白い!
映画も本も漫画も暴力ものは好きではないのだけど、これはめちゃ面白い。
モチーフか?文章か?
やつぱりダガー賞はさすがだなあ。
★もっとあげたいくらい。 -
ダガー賞、おめでとうございます。スピーチがとてもクールてした。
バイオレンス小説は過去にも大分読んでいますが、読後感が今までとは違い不思議な感覚です。女性を感じさせないキャラクターを描いた本は多いけれどもこんなにナチュラルでわざとらしくないことにものすごく好感を持てる。 -
今日の朝、ダガー賞とかいうイギリスの推理小説の大賞をとった「Otani Akira」の本、何かと思ったら、前に読もうと思ってチェックしていた王谷晶という人の作品だったので、迷わず購入した。面白くて一気に読んだ。とってもいい土曜日だった。
女が主人公のハードボイルドは日本ではあまり馴染まない、ちょっと難しいのかなあと思っていたが(一部例外はあるが)、主人公の新道はカタギなのに暴力に血がたぎる強い女で、しかも山奥で爺さんに鍛えられたというアウトローぶり(日本では学校に行かないだけアウトローだ)。地道に働いて、独り日々体を鍛えている(に違いない、筋肉隆々なんだから)、車の運転もできる(私は苦手)、腕っぷしも強い、かっこよくて惚れた。免許証を確認したヤクザの子分が「道産子です」と報告していて、北海道出身の私はさらに惚れた。
一見か弱そうなヤクザの親分令嬢の尚子も実は弓のようにしなやかで強く、丈夫でタフ、さすがヤクザの娘。型にはめるのが第一の任侠から外れて型にはめられないのだ。
最後はほろっとして涙出た。こういうのを読むと、ほんとに、女も鬼婆になることを夢に見たっていいのだよなと思う。女の体を超えた鬼婆は型にはめることもできない、どこからも自由なのだ。
私には娘が2人いるので女の子のエンパワーメントが必要なことはよくわかっている。が、自分がどこまで自由だったかというと、全然自由じゃなかった気もする。好き勝手にはやってきたけれど、それでもいろんなところに遠慮して引き下がって・・・みたいなこともずいぶんしてきたのかなと。
歳をとっていく女は若い女、母親、子供のいない女、仕事してる女、〇〇な女とか捨て去って、鬼婆的なものを目指すのがいいのかもしれないが・・・なかなかできないよなーと思う50歳の私である。だからこういう本を読んでスカッとしたいのである。名前とか関係とかどうでもよくて、外側は偽物でも中身は本物、みたいな実感が結局生きてるってことなのかなと思う。 -
ダガー賞受賞とのこと夜のニュース番組で知ったので読んでみた。
ジャンルとしてはバイオレンスアクションになるのかな?展開が早くて小一時間で読了。
受賞のニュースでは、北野武の世界とLGBTの要素も…みたいな感じだったけれど、自分としては(任侠の世界の暴力性は感じるけど)依子とお嬢さんの関係性の変化がメインだったかなと。
そこに嫌な感じを受けないから、サクサク読めたのかもしれない。
個人的には依子のキャラクターが斬新で…暴力的なことにワクワクするって何!??となったけれど、これは依子が女性だから驚いてしまっただけで、男性であれば驚くことも違和感を感じることもなく読んでいただろうと思って、改めて自分も育ってきた価値観に染まってるんだなと感じた。
この作者が他の小説でどんな話かいてるのか読みたいなと思った。
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