推し、燃ゆ (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (160ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309419787

感想・レビュー・書評

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  • 推しは背骨みたいなもの。かあ。
    わかる気もする。
    自分自身が不安定な時は、何かにとても寄り縋りたくなる。
    それが物や遠い人ならオタクと言われ、彼氏や彼女ならメンヘラと言われたりもする。
    (スポーツなどだととても健康的だと思うが)
    その時、それらは背骨で、それがなくなると途端に自分が立てないような感覚になるのかも。
    なくなったら案外なくなったほうが人間らしい生活ができたりもするが。

    自分の意思が及ばない他者に縋り過ぎる、その不安定さってあるなあ。
    個人的には、推しはほどほどに推していきたいと改めて思った。

  • 芥川賞受賞作で文庫になったので、読んでみた。
    高校生のあけみは、高校生活も上手く行かず、バイト先でもなじめず、生きづらさを感じて、毎日を過ごしていた。
    そのあけみの生きがいは「推し」
    その「推し」がファンを殴って、炎上したらしい。
    だからと言って、特に何が起きるわけでもない。
    高校を辞めて、バイトもクビになり、家族に見放されても、あけみの日常は「推し」だけ。
    その「推し」の突然の引退宣言。
    最後の生きる糧のようなものも失ってしまう。
    タイトルや表紙のイメージからは想像も出来ないくらい、内容は重い。
    「推し」がいない自分には主人公の気持ちが理解出来ないし、この本を読めば「推し活」を楽しんでいる友人の気持ちが分かるかとも思ったが、そちらも全然見当違い。
    読む人によって、意見の分かれる作品かもしれない。

  • 推すことで繋がるコミュニティがある
    推すことで自分を保つことができる

    他人は関係なく、自分を持っている人なんだと
    思う。

    アイドルでも小説でもスポーツでも、
    時期によって変わったとしても、
    自分の信じる対象があることは、
    嬉しいことなんだと思ったよ。

  • 「推しが燃えた。ファンを殴ったらしい」
    高校生のあかりは、アイドル・上野真幸(まさき)を推している。彼の活動をすべて拾い集め、彼を解釈することにのめり込んでいた。家も学校もバイトもうまくいかない中で、それだけがあかりを成り立たせる「背骨」だった。しかし、推しが炎上してしまったことで、彼女の生活は変わり始める──。

    第164回芥川賞受賞作。「推し」という響きに共感を覚えて、文庫化を機に手に取った。推しという概念や、アイドルとファンについての小説かと思いきや、それはあくまでテーマを伝えるための手段だと感じた。なので、そういうものを求める人や、真幸はなぜファンを殴ったのか?ということが気になって読みたい方にはお薦めしづらい。ぼくはそういうものを予想していたけど、良い方に裏切られたのでよかった。

    ぼくが作品を読んで一番感じたものは「他者との隔絶」だった。お互いのことは決して理解し合えない。人はどこまで行っても「孤独」に生きていく。そんな現実を映し出す鏡だった。それを描く手段の一つが、推しとファンの関係性。どんなに応援しても解釈しようとしても、間には埋まらない溝がある。それを生活のすべて──背骨とまで言い切るあかりは危ういのだ。アイドルという偶像が消えた瞬間、虚像で隠されていた現実が彼女を襲う。推しに憧れ、もはや一体となっていた彼女から「推しという背骨」がもぎ取られた瞬間の、肉体を実感するシーンはまるで自分の骨を拾い集めて生まれ直しているようだった。

    あかりと家族との関係性も「他者との隔絶」を表していると思う。診断名は具体的に表記されていないものの、アスペルガー症候群や学習障害と推測できる描写がある。彼女は普通に生きることが、すでに生きづらいのだ。それを言語化できないもどかしさ。診断がついても家族からは理解されずに「普通」であることを要求される。この作品を読んで感じたのは「普通」は「不通」であるということだ。誰にもその人なりの普通がある。当たり前だと思っても、相手にとっては当たり前ではないかもしれない。それを疑問に思わない普通は暴力だ。ただ、そんな暴力は現実にもありふれているんだよね。家族だろうが他者である以上、理解はされない。それをただただ残酷に、現実的に描いている作品。あかりも世界を閉じているし、家も外界から閉じている。ここで地域の支援という他者が家に入るといいんだけどね。ぼくに初めて寄り添ってくれた人は地域包括支援センターの相談員さんだったから、そういう選択肢があることが「普通」になってほしいと思った。

    自分なりに長々と書いたんですが、文庫版あとがきと、金原ひとみ先生の解説がわかりやすいのでお薦めです。そこを読むと印象がかなり変わるかも?

    p.13,14
    寝起きするだけでシーツに皺が寄るように、生きているだけで皺寄せがくる。誰かとしゃべるために顔の肉を持ち上げ、垢が出るから風呂に入り、伸びるから爪を切る。最低限を成し遂げるために力を振り絞っても足りたことはなかった。いつも、最低限に達する前に意思と肉体が途切れる。

    p.14
    保健室で病院の受診を勧められ、ふたつほど診断名がついた。薬を飲んだら気分が悪くなり、何度も予約をばっくれるうちに、病院に足を運ぶのさえ億劫になった。肉体の重さについた名前はあたしを一度は楽にしたけど、さらにそこにもたれ、ぶら下がるようになった自分を感じてもいた。推しを推すときだけあたしは重さから逃れられる。

  • なんとも言えない感情が浮き出てくる作品。高校生のあかりにとって、何もかもうまくいかない毎日の中で、「推し」は全てで、生きる糧だったのだろう。その「推し」が居なくなるとは、背骨を無くすこと。その先の長い長い人生これからどう立ち向かうのか。新しい「推し」に出会えるのか…

  • 話題の本なので読むべきと思い購入。
    まず思ったのは、作者の技術が豊富。比喩などで感情の表現を細かく表すのが上手い。若いからと侮ってはいけない。
    ただ、途中から何を言っているのかわからなくなってしまい、途中で断念。特に17ページで頭が混乱した。時間が経ったらもう一度挑戦したい。
    ひとまず評価は星3にしました。読了した後に評価が変わるかもしれません。
    また、前述した難しい表現と現代口調の会話の混在に違和感を感じたのも断念の理由の一つでした。

    自分の読書傾向や苦手なジャンルが分かってきたので、今後の教訓にしたいと思う。
    とても失礼だとは思うが、中古で購入して正解だと思ってしまった。
    作者の他の本も読んで評価したい。

  • 芥川賞に納得。
    芥川龍之介が現存していたらこんな作品を書いていただろうと感じた。

  • 少し難しかった。
    けど、私も推しがいるので、気持ちが分かる部分も多々あり、少し感情移入しながら読めて、ウルッときた。

  • ブクログで上位でしたので読んでみた。
    推し活ってすごいな。
    自分も好きなアーティストやスポーツ選手は居るけど
    とてもじゃないけど自分の生活すべてを捧げるのは無理だ。

  • ここまで推しに熱中できるということに、この作品を読んでの感想としては珍しいかもしれないが羨ましく思った。確かに読了感は良くはなく、推し活っていわば依存と近いということはわかっているのだけれど、そこまで自分がのめり込める存在がいることが羨ましいなと。

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著者プロフィール

1999年生まれ。2019年、『かか』で文藝賞を受賞しデビュー。同作は史上最年少で三島由紀夫賞受賞。第二作『推し、燃ゆ』は21年1月、芥川賞を受賞。同作は現在、世界14か国/地域で翻訳が決定している。

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