- Amazon.co.jp ・本 (256ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309419992
感想・レビュー・書評
-
詳細をみるコメント0件をすべて表示
-
大河「光る君へ」で古典に興味が湧いてきた。「伊勢物語」は文より尾形光琳の「燕子花図屏風」から入っている。あの素晴らしい絵がこの「伊勢物語」に基づくものだとは、絵の解説を読むまで知らなかったのだ。この本では原文は無く、川上弘美の文のみ。この川上氏の文がとてもいいのだ。
文庫のページで2,3ページ、短いのは1ページに収まる。
男がいた。
男と女の説明
和歌
和歌の意味
と、この形式で語られる124の男の恋の物語。
あっさりと、成就しなかった状況が語られる。ここでの和歌の川上訳は素直。ここがすんなり入って行けたところなのかも。・・でも半分くらいまできて、同じような様相になんか飽きてきてしまった。
「源氏物語の結婚」工藤重矩氏の本を読んだので、ああ、成就しない、脇道の男女の恋物語、の話だ、まさしく、との感。
燕子花、のところは第九段にあった。これは長くて5ページあった。
池澤夏樹個人編集 日本文学全集03 「竹取物語/伊勢物語/堤中納言物語/土佐日記/更級日記」2016.1河出書房刊の文庫化。一部修正し、書き下ろしのあとがきと山本登朗氏の解題を加える。
2023.10.20初版 購入 -
ここのところ源氏物語の現代語訳や、町田康のギケイキの続きなど古典の現代語訳が続いたので、勢いで河出文庫の古典現代語訳シリーズに手を出してみる。こちらは川上弘美さん訳の伊勢物語。シンプルでわかりやすく、とても読みやすい。もともと原文がそうなのだと思うけれど、くどくどしい心理描写などはなく淡泊で、和歌にすべてをこめられている感じ。
章立てが細かく、もちろん後世に付け足されたりした成立経緯もあるだろうけれど、おもに「むかし、男ありけり」(現代語訳では「男がいた」)で始まる短いエピソードの連作集のような構成。一応、在原業平がもともとの著者であり主人公と言われているけれど、一人の人間の恋愛遍歴としては雑多にすぎるので、あくまで彼は軸として存在し、あとは継ぎ接ぎされたそれ以外の話も混在しているのでしょう。
有名なのは二条后(藤原高子)との叶わぬ恋のエピソードである六段目。鬼が出てきて女性をひとのみにしてしまうというアレですね。しかしこれ実際の鬼ではなく、高子の兄たちが業平から妹を奪い返しにきたことの比喩にすぎないこともしっかり書かれている。
個人的にちょっと悪趣味だけど面白かったのは六十三段。かなりの年齢を重ねて息子もすっかり大人になっているのにいまだに好色な女性がお相手を探しており、息子たちは業平なら相手してくれるかも、と彼を紹介(笑)どんな見境ない男だと思われてるのだ業平。しかし思惑通り、彼はどんな女性も差別せずお試しせずにはいられない(笑)川上さんの現代語訳でこの段のラストを引用しておくと「思う女にならば優しい男も、思わない女には優しくなどすまい。けれど業平は、そうではないのだ。思う女にも、思わぬ女にも、ひとしく心をくだくのである」
あと有名なのは六十五段あたりでしょうか。帝に想いをかけられている美しい年上の女性を好きになってしまった少年、成長して二人は情をかわすようになるも…という話で、光源氏と藤壺ぽいなあと思っていたら、解説でやはり触れられていて、元ネタのようなものと見られてるらしい。
最後の百二十五段も良い。男は病をえてもう自分は死ぬだろうと思い歌を詠む。「つひにゆく道とはかねて聞きしかど昨日今日とは思はざりしを」
あとがきで川上弘美さんも書かれてましたが、和歌というのは改めて深い。三十一文字の中になんと豊かな世界が広がっていることか。 -
時代背景や当時の風習を考えると、仕方がないのだろうし、そういう部分をことさら描いているということもあるのだろうが、それにしても男も女も情を交わすことしか考えていなかったのだろうかと、いささか食傷する。男のほうが女々しい(セクハラ発言?)のもちょっとイラッとする。
-
声に出して読むと
気持ちがしゅしゅしゅと入ってきて
心がさわさわしたり
わーとか、きゃーとか言ったりして
今も昔も変わらない
と思いました。 -
平安時代、夜這いって普通にやっていたんだな。あと、京都以外の地方に住んでいる人でも気の利いた和歌が作れたようですごい。
-
現代語訳の伊勢物語。俵万智さんの「恋する伊勢物語」いわゆる解説本を読んだら、やはり伊勢物語を読みたくなり読み始めた。
解説本を先に読んでいたおかげで、内容はすんなりはいる。
現代語訳なので「昔、男ありけり」が「男がいた」なのは少し味気なく感じるけど、通して読みやすい。
やはり業平はイケメンである。
数行でも言葉少なくても濃密な内容に感じるのは、日本語の言葉の持つ奥深さだろうか。
和歌とはこうも心に残るものかと改めて思う。
平安末期に書かれたものに、書き写すごとに人々が加筆しながら残されたもの。
何が史実で何が虚構か?はっきさせることなく読み手が思いを馳せながら読むのが伊勢物語の魅力なのだろう。
-
ワレカラを育ててみたくなった…
-
古典文学自体が教育の場で、軽視されつつある中、語り継ぐべき作品の一つと実感。川上弘美さんが分かりやすく、スッと心に入る現代語訳にしてある点も大きいと想う。
業平は女ばかりと情を交わすのではなく、お世話になった天皇や皇子、友人も大切にしている話もよい。お気に入りは六十三段。恋はどんどんすればよいと思った。