高橋和巳コレクション 10 (河出文庫 た 13-11)

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  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (250ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309420110

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  • 「創造」の対義語は「破壊」ではなく「解体」であるべきだと常々思う。
    人間がものを作るとき、残念ながら論理なしには成し得ない。論理が私たちと現実を結びつけ、逆に論理が私たちを形而上へ導く。
    しかし、人間がものを壊すとき、残念ながら論理は必ずしも必要はない。論理のいらないものは「破壊」に、しかし論理は「解体」を作っていく。もしくは、「解体」というのは論理の創造の先にあるものなのかもしれない。

    この作品は、様々な内ゲバを通して、1人の学識のある人間が苦悩した軌跡であり、その自己論理の矛盾が自らを論理的に解体する、その様は、激しさは一見なくとも、壮絶な美だと、私は思う。
    そして、この解体はおそらく、根底に道徳的に善良な生徒たちなしには成し得ないのだろう。それは「私」が、それを見つめる眼を持っていたためであって、もしそれがなければこれは「破壊」であるはずであった。

    「……しかし、権力の論理のほかに、まだ今のところは、別の論理に従う営為もありうるのであり、じっと目を注ぎ、すべてを公開すれば、力で勝ったほうが道徳的に敗れるということも、証明しうる余地はまだなくはない。
    そしておそらくその全過程を完全に、書ききったとき、まぎれもなく、私自身は解体する。」

    そして、解体された後に何が残るのか。それが私たち世代の自覚せねばならぬところだろう。

  • 青春時代に読んだ高橋和巳に固執する団塊の世代のおじ様方の気持ちを積極的に理解したいとは思わないけれども、高橋和巳って人の在り方っていうのは、現在を生きる私にとっても、考えさせられるものがあるってことは確かです。もっと色々読んでみたい、そう思えた『わが解体』。『わが解体』にしても、『我が闘争』にしても、背筋がなんとなくピンってなります。そんな覚悟を感じる1冊。

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