完全版 最後の角川春樹 (河出文庫)

  • 河出書房新社 (2025年3月6日発売)
3.83
  • (2)
  • (2)
  • (1)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 56
感想 : 1
サイトに貼り付ける

本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています

Amazon.co.jp ・本 (472ページ) / ISBN・EAN: 9784309421766

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • 熱量と波瀾
     角川春樹の伝説については、阿川佐和子との対談で知ってゐた。
     戦艦大和を勘で発見したとき、おれは神だ。と感じたといふ法螺吹き具合で、カリスマ経営者――といふよりは、人たらしのやうな喋り方、阿川を圧倒させてゐたと記憶する。

     角川一族は、米騒動に関りのある米穀商・角川商店を築いた祖父に流れをもつ。
     父親・源義が学術書の出版社として始めたものを、息子が新潮社の向かうを張る土着民俗学ホラーエンターテイメント出版社にして、映画商法で一大出版社に仕立てあげた。

     角川春樹は、中上健次よりヤクザである。
     かの芥川賞受賞作家・中上健次は、小島信夫を追ひかけまはし、三島賞選考会で大江健三郎に向かって、おまへ悪人。と連呼した。
     なんとその中上は、角川春樹との初対面時に、土下座をしたといふのである。若い頃は角材で全学連の200人の学生に向かって突撃したらしく、2つの組事務所からオファーがあったさうだ。
     他にも松田優作も角川に土下座してるし、いやはや。

     しかも、このインタヴューですらすらと飛びだす文学、それも主に和歌の造詣には舌を巻いた。下手すると学者より上かもわからない。
     西行の話をする際に、白河法皇の溺愛した幼女・彰子が出てくる。映画『犬神家の一族』のときも、犬神統・犬神筋といふ犬の首を用ゐた呪術の系譜について。その撮影地・諏訪を古事記からひもといて、アマテラスに歯向かったタケミナカタのはなしをする。
     知識量がそこらへんの三文文士よりすごい。これは神がからうとしてゐる。

     ミャンマーに逃げこんだ国民党軍がアヘンの栽培をして再起を図ってゐる、その地へ出向くなどのハードボイルド旅もたびたび敢行してをり、真似できない御人である。

全1件中 1 - 1件を表示

著者プロフィール

伊藤彰彦【いとう・あきひこ】
1960年愛知県生まれ。映画製作者・映画史研究家。1998年、シナリオ作家協会大伴昌司賞佳作奨励賞受賞。2011年、『明日泣く』(色川武大原作、内藤誠監督)の製作、脚本を担当。著書に『映画の奈落 北陸代理戦争事件』(国書刊行会、のちに講談社+α文庫)。

「2017年 『無冠の男  松方弘樹伝』 で使われていた紹介文から引用しています。」

伊藤彰彦の作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×