悪徳の栄え 上: マルキ・ド・サド選集 (河出文庫 516E マルキ・ド・サド選集)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (352ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309460772

感想・レビュー・書評

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  • 誰かが罰してくれると思ってる内は、知識だけの理性に騙されている野蛮な動物。
    自罰も満足にできない動物を、人権なんておめでたいもので守ってしまったが運の尽き。

  • マルキ・ド・サドは、今から195年前の1814年12月2日、74歳で天寿を全うしたフランスの作家。

    人類史上最大の淫乱放逸な性倒錯の実践者にしてその記述者。黙って密かに楽しめばよいものを、公然と大ぴらに侯爵という地位を笠に着てやったものだから、反社会的というレッテルで見られて、合計およそ30年と1か月投獄され、パン1本を盗んで19年牢獄にいれられたジャン・バルジャンより過酷な人生を実際に送った人。

    でも、その監獄生活のおかげで著作を書けたというのですから、容認というか、彼を牢屋に入れてくれた人に感謝状を。

    というより、サディズムという言葉を現代にまで残したというか、人間の崇高で野蛮な根源的性行を現代に根づかした偉大な預言者。

    サドを知れば知るほど、人間がこれほどまでに性的欲望に狂気・執着するのだということを思い知らされて、私たちのレベルではお話にもならないことを、否応なしに自覚させられます。

    それから、何といっても、このサドをあの澁澤龍彦訳で読める幸せ。

    ・・・まだ言い足らない感じ、もっと何か書かなくちゃ

  • う・・・うん・・・そっか・・・。(感想)

  • 目からウロコがあまりに落ちるので、自分の目には一体何枚ウロコがあったんだろうか、と思った作品。後半は、ぶっ飛ばしすぎですが、前半はもう頭がんがん叩かれてる感じでした。そうか、そうなのか!と。

  • 革命後フランスで発禁になった、著者サド自身が投獄されてまで貫きたかった哲学の、代表作。
    発禁になった理由は「猥褻だから」だったらしいけど、
    エロじゃなくてグロです。これ。まぁエロもグロの一部といえなくもないから何ともいえんけど・・・グロイのダメな人はきっと一章目でギブ。
    いかに社会の中で悪徳を成すことが、正しいのか。胃がもたれるほど強調してきます。今私たちが善徳と信じてるものを完膚なきまでに破壊してるから、常識を一回離れないと困惑が溶けない。

    正義や美徳みたいに、広範に認められる価値観をpraiseするのは比較的簡単だけど、悪徳や犯罪を論理的に支持した作品が、その後何世紀も評価されることって、そうはない。「偉大な文学作品」って、その時代時代の価値観に疑問を提示してるものが多いけど、実際にそれに反する価値観を立てるにいたる作品って、あんまりなくない?
    そういう点で、一回は読んでみようと思ってた本ではありました。だからサドの哲学の部分とかは、長くても理解しようと、結構努力した方なんです・・・が
    結局なんか・・大切な何かを奪われたような、いけないものを読んでしまったような、正体不明の世界をすぐ隣に感じる不快感を覚えたような、それでいて偉大な作品を鑑賞した後のあの恍惚感を得たような・・・
    もう何がなんだか。
    こんなにも複雑な読後感を味わったのは、とりあえず久しぶりです。


    この、想像できる限り最悪な慣行が蔓延する画を、「気分悪い」と思いつつも最後まで読んでしまうのは、澁澤龍彦の訳の力だと思います。
    澁澤氏の訳は、本当に綺麗です。書かれてる内容と響きとしての言葉の間のギャップが、不気味さを一層強く演出してます。下品な派手さはないのに、華やかで・・・非現実的。笑顔で、純粋な歓びのもと殺戮をはかるジュリエットたちの雰囲気、ぴったりそのままです。
    言葉のもつ雰囲気を、別の言葉で表現することほど無意味なことはないと思うから、実際に読んでもらわないと伝わらないと思うんだけど、ぜひ体験してほしい。心に余裕があるようならば。

  • サドとニーチェは高校生のときに読んで、自分の道徳観がぶち壊された感覚がありました。
    その最たるものが本書です。

    ちなみに、澁澤龍彦が『美徳の不幸』(ジュスティーヌっていう清純な女の子がめちゃくちゃ酷いめにあう話)の前書きの部分を、「ジュスティーヌになりたがらない女はいない」って訳してたんだけど、本当は「ジュスティーヌになりたがる女はいない」ってするのが正しい、っていう話も聞きました。ぜんぜん違うじゃん! これって、いったいどちらが正しいんでしょうか?
    フランス語に詳しい人がいたら教えてください。

  • バタイユからの延長で読んでみた。誤解を恐れずに一言で言えば、おっさんが性癖による願望を書き連ねた便所の落書き。
    批判の意味で言ったんじゃないです。褒めても無いですが。取りあえず読んでても下半身が全く反応しなかったのでよかった。サドからすると損してるって話かもしれないが。

  • あまりに残酷な描写の連続に気持ち悪くなってきたので、上巻を読んだあと少し時間をおいて下巻を読みました。。(^_^;)自然が要求するところに従うという悪徳の哲学は一面では賛成だが、自然の悪い面しか見ていないように思います。自然は実り豊かな面や美しい姿もわれわれにあらわしてくれるからです。
    人間が動物と異なり、悪徳だけではないことは、人間が他人を守るために死ぬことができることにより証明されると思う。

  • 劇物ですw読む際はご注意ください。

    『サディズム』の由来になった筆者の世界に洗脳されそうです。

    官能的でドラスティックで反道徳的で…。

    確かに美徳がちょっとずつ退屈に思えてきた気がします。

  •  上下巻。
     上巻は、ジュリエットが自責の念にとらわれることなく悪徳を弄するに至るまでの、道徳観念を突き崩す先人達の甘いささやき的な哲学によって成っていました。ニーチェの道徳の系譜とかにも通ずるところがあるのかなーって思いました。
     ノアルスイユ格好良かったー!! もう、上巻の見所はノアルスイユの格好良さでいいです個人的に。「一言言ってくれれば、それほど危険でもなく、好きな時に盗みも出来る愉快な宴席をお前に設けてやったのに!」まじですかー!!
     あと、ジュリエットの相手を落とす手管が見事でした。サン・フォンもクレアウィルも落ちる落ちる。人を気持ちよくさせる方法を熟知しているのだろうなあ。「女は男を気持ちよく欺すもの」みたいな思想がたびたび出てくるのだけど、まさにそれ。「あなたのお足元で、あたし、一生過ごしたい」とかかわいすぎる。

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