悪徳の栄え 下: マルキ・ド・サド選集 (河出文庫 516E マルキ・ド・サド選集)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (328ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309460789

感想・レビュー・書評

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  • この眼がすべる感じ・・・なんだか解った。
    厨二病のブログにありがちな「俺の悪いこと自慢~俺って異端?~」を読まさせられているときのそれだ!

  • 本作は、息付く間もなく悪徳の栄光を突っ走り、もっとも豊饒で残虐な幻想が織り成される、サドの傑作長編小説です。
    本作が所謂「サド裁判」の根源になったのは言うまでもなく、澁澤の翻訳発表当時から、「芸術とワイセツ」を世に問い続けてきた稀代なる作品と言えるでしょう。私はこの作品を、後世にも遺していくべき不朽の傑作だと思っています。

    さてさて、読み始めたら止まらない、それがサドの小説です。私の場合、もはやサドは封印(敬遠?)対象になるほど良くも悪くも強烈な作品ゆえ、澁澤の批評を読むくらいに留めておいたのですが、やっぱり読んじゃいますよね。そして一度手をつけたら最後、どんどん読んでしまう。5日もあれば、上下巻を読破するのには十分でした。

    まさしく悪徳のバイブルとでも言えそうな本作では、主人公のジュリエットを初め、様々な登場人物が悪徳の限りを尽くし、これに耽ります。形式としては連作小説に近く、短い各々のエピソードが連なるようにして全体が構成されていますが、そのどのエピソードにしたって、ぬるいシーンはひとつもありません。只管に自然と悪徳を礼讚する哲学パートと、血みどろの法悦境シーンが延々と、これでもかと続きます。悪徳のバイブルと書きましたが、その流血淋漓たるや凄まじく、ページをめくる度に陰惨な思考と情景に侵食されていくのです! またその残酷極まる描写もどこかこざっぱりしていて、想像では追いつかないようなユートピアが、たった一行の中に凝縮されていたりします。

    改めて、やはり凄まじい作品です。昔読んだ時は、その言い回しや冗長な哲学開陳パートよりも、残酷さの中に齎される感受性や衝撃に強い感化を受けたものでしたが、今読むと、澁澤さんの抄訳しかり、サドの思考しかり、考えさせられるものがあります。いみじくも訳者あとがきで澁澤さんが言うように、まさしく本作は「裏返しの教養小説」なのであって、繰り返して述べるようですが、一読の価値は大いにあると思います。

    (下巻のとんでもエピソード)
    下巻は哲学開陳パートはもはや少なく、ひたすらにジュリエット残酷な放蕩が続いていった印象です。就中「ローマの大饗宴」「デュランとの再会」ではサドの想像力におけるユートピアが隆盛を極めており、また、フォンタンジュやジュスティーヌの悲惨過ぎる最期も、この作品を悪徳を象徴しているように感じます。

  • リベルタンとして道徳から逸脱し、悪徳の哲学をもって残虐な悪事の限りを尽くす。物語が進むにつれて目を覆いたくなる非道な描写が増していく。

  • 上のほうがおもしろかった(下になると登場人物の常軌を逸した行動に慣れてきてしまっていたので)けど飽きはしなかった。一瞬で読み終わった。
    訳者の善し悪しはわたしにはわからないけど、台詞ひとつひとつが小気味良くて笑える。

  • *おすすめコメント
    サディストという言葉の語源の、サド侯爵が書いた小説。本作の訳が猥褻物だとして、裁判にもなった、「悪徳の栄え事件」が有名である。サド侯爵が描く内容は、聖書をはじめとしたキリスト教批判であるという見方もあり、非常に興味深い。本書を読むことによって、己の善悪観に対する客観的批判が出来るようになると考察する。今後、本校の図書館にもぜひ置いて頂きたい作品。

    *学生へのメッセージ
    何が善か、あるいは何が悪か、法や慣習的に妄信している善悪観をいま一度、考え直すことをおすすめする。肝要たるは、自分でものごとの本質を見極め、その上で己の正義を作り上げることである。本書をその一助として頂きたく思う。

    *図書館に所蔵はありません。

    推薦者:学生(商船学科)

  • 悪徳の哲学小説。

    悪徳=自然の第1法則
    美徳=利己主義
    美徳=悪徳
    よって、人間における一切は悪徳。

    言わんとすることは分からんでもないが、
    余りにも頭のネジが飛び過ぎてる。

  • タイトル通りです。
    残忍極まりない悪事と快楽、そしてカネに溺れることへの哲学小説。
    平たく言うと、野蛮人の集まりです。
    ですが、目からウロコもいいことに、並の人間では到底体験と理解に苦しむこの散々たる悪事にもなんと哲学や道徳がある!
    この哲学小説のいいところは、どっちに転ぶか?ということと、感化されないこと、また、目で文字を追いながらの逆説的教訓になりうることだと思います。
    野蛮人の哲学なんて洒落臭い!と思いがちですが、正直理解に苦しんだので、すっかりとは飲み込めませんでしたが、美徳も同じという紙一重的な描写には、大変考えさせられました。
    善と悪とは何か?
    悪はこれを読めば、うっすらと掴めるのではないでしょうか。

  • 話が思わぬ幻想の方向へと進みはじめたのでびっくりした。これでも抄訳なのだから、ほんとうはもっとしんどいんだろうなぁ。

  • 好みか好みでないかを単純に考えると微妙。

  • 後半は冒険活劇の体を帯び、陰惨な場面描写に耐えれば荒唐無稽な話の展開やら、宗教批判やら、専制主義の批判やらでなかなかおもしろかった。
    18世紀末から19世紀にかけて新たな思想が芽生える時期だったのかな〜という気もした。
    まぁ、ただの気のせいかもしれないが…

    Mahalo

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