愛人 ラマン (河出文庫 509B)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (221ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309460925

作品紹介・あらすじ

18歳でわたしは年老いた-。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インドシナを舞台に、15歳のときの、金持の中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。センセーションをまきおこし、フランスで150万部のベストセラー。J・J・アノー監督による映画化。

感想・レビュー・書評

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  • この作品は映画でセンセーショナルな反響があったと記憶していますが、こうやって原作を読むとこれは年寄り婆さんの遠い昔の思い出に耽った繰り言ですね。(笑)
    少女時代に彼ー愛人とひたすら性愛に溺れた日々の感傷に耽るみたいな感じですかね。

    ただ、マルグリット・デュラスの少女時代はかなり悲惨だったようで、当時生まれ住んでいたベトナムでは父が早くに亡くなり母が土地投資に失敗し、母や上の兄からはモラハラ紛いのことをされていたようです。
    なので家庭的な要請や自己逃避など複雑な背景があったように思いますが、金持ちのちょっと気弱な中国人男性に目をつけたのもある意味必然だったのかもしれないですね。
    15才のマルグリットは、三つ編みに縁の平らな男物のソフト帽をかぶり金ラメの靴をトレードマークにして男を誘惑し周囲の気を惹く術を心得ていたのでしょう、これに金持ちの愛人の黒塗りリムジンで学校に通っていたとはかなり異様な光景でみんなさぞ近寄り難かったでしょうね。(笑)

    年老いたデュラスはそうした孤独な日々と愛人との関係がふつふつと思い出される境地になったのでしょう。
    この本では年寄りの昔ばなしよろしく、時空間がころころと変わるだけでなく、自分自身の主語でさえ、私だったり彼女だったりと主観と客観も入れ替わったりするわ、話が愛人と思っていたら友達の話だったりその親の話だったり、そうかと思うと兄の話になっていたりと状況がすぐに変わるので読みづらいことこの上ないですが、こうしたデュラスのごちゃ混ぜの記憶が怒濤のようになって思い出されるのを文章化するのはさぞ大変だったでしょうね。
    生々しい少女時代の過去を題材に、ある意味、内面を見つめ直し、熱量や香りや匂いまでもそのままに赤裸々な描写で文学にまで昇華させるところなどはさすがとしか言いようがないですが、ここまでくると、もはや年寄り婆さんの自慢話の域に達しているかもしれません。(笑)

    原作の方はデュラスの複雑な心境を淡々と描写していましたが、映画の方はエロティックな方で話題だったように思います。
    ぜひ映画の方も鑑賞してみたい。(笑)

    • 淳水堂さん
      mkt99さんこんにちは。
      デュラス読んでました。
      「愛人」で書いた体験を小説にしたのが「太平洋の防波堤」ですね。かなり好きな小説です。...
      mkt99さんこんにちは。
      デュラス読んでました。
      「愛人」で書いた体験を小説にしたのが「太平洋の防波堤」ですね。かなり好きな小説です。
      母や兄のことは、暴君なところもあるけれど、決して嫌っていないような、なんも複雑なのかな。
      2021/03/15
    • mkt99さん
      淳水堂さん、こんにちは。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      返信が遅くなり申し訳ありません。m(_ _)m

      ...
      淳水堂さん、こんにちは。
      コメントいただきありがとうございます!(^o^)/

      返信が遅くなり申し訳ありません。m(_ _)m

      私はデュラスはちょっと前に原作・脚本の映画『モデラート・カンタビーレ』を観たのと、本作の『愛人 ラマン』を読んだだけですが、孤独な女性の闇を描く作家さんだと思いました。
      母と兄については酷いことをされたけど肉親だけに愛されたいという微妙な葛藤があるんですかね。

      デュラスの本は今やあまり本屋で見かけなくなってしまいましたが、また他にも読んでみたいと思います。
      ブックオフで探してみようかな。(^_^)
      またいろいろと教えてくださいね。(^o^)
      2021/03/21
  • 作者の自伝的小説。少女の愛と死、情念と苦悩の物語。作者は、作者自らの経験をもって、生きることがいかに愛と死に近く狂気に満ちているか詩情豊かに描いている。読者を作者の心酔する「美」の世界に誘う。

  • カイア・ガーバーの人生を変えた5冊──カミュにカーヴァー、デュラスなど、「必要なときに、必要な本がやってくる」。 | Vogue Japan
    https://www.vogue.co.jp/lifestyle/article/us-vogue-kaia-5-books

    『愛人(ラマン)』 ニンフェットの告白 その1 - rocorinne bookworm(2016-2-26)
    https://rocorinne.hatenablog.com/entry/2016/02/26/000333

    『愛人 ラマン』(河出書房新社) - 著者:マルグリット・デュラス 翻訳:清水 徹 - 辻原 登による書評 | 好きな書評家、読ませる書評。ALL REVIEWS(2017/11/24)
    https://allreviews.jp/review/1736/

    愛人 ラマン :マルグリット・デュラス,清水 徹|河出書房新社
    https://www.kawade.co.jp/np/isbn/9784309460925/

  • 小説ではなく詩のような、
    たゆたうようなうねるような、
    この文章をそのまま飲み込んでいくことが、
    この人の小説を読むということなのかな。

    わかりにくいといえば確かにわかりにくいけれど、
    イメージを直接注ぎ込まれるような
    この書き方が私は好きです。

    誰とどこにいても本心をみせない主人公に、
    心惹かれるものの、理解や共感はしにくかったのですが、
    船上で不意に訪れた裂け目のようなシーンに、
    もしかしたらそういうことだったのかもしれないと
    思いました。
    そうだったのなら、幼くいびつな愛が切ない。

    <引用>ーーそして彼女は突然、
    自分があの男を愛していなかったということに
    確信をもてなくなった、
    ――愛していたのだが彼女には見えなかった愛、
    水が砂に吸いこまれて消えてしまうように、
    その愛が物語の中に吸い込まれて消えていたからだ、
    そしていまようやく、彼女はその愛を見出したのだった、
    はるばると海を横切るように音楽の投げかけられた
    この瞬間に。 (180ページ)

  • 文章が独特で、一人称から三人称になったり実験的な小説だったように思う。それでもデュラスの言葉は芳しく広がり、とても自由奔放のそのものだ。
    ストーリーを堪能するまえに、まずはデュラスの背景を知らなければならないように思う。自伝的小説による宿命だ。

    「十八歳でわたしは年老いた」嵐が過ぎ去ったあとのデュラスは何を見ただろう。
    中国の男性と白人の娘による決して官能的ではない、愛の物語。



  • こちらの作品、ブクログに登録した日は、2015年2月18日ですが、レビューを書いていなかったので、本日(2021年7月5日)書きます。

    著者、マルグリット・デュラスさん、どのような方かというと、ウィキペディアには次のように書かれています。

    マルグリット・デュラス(Marguerite Duras, 1914年4月4日 - 1996年3月3日)は、フランスの小説家、脚本家、映画監督。

    ヌーヴォー・ロマンの作家の一人に数えられることもあるが、キャリアの点でも作風の点でもヌーヴォー・ロマンの枠内には収まらない。


    この本の内容を、適当なところからコピペすると、


    18歳でわたしは年老いたー。あの青年と出会ったのは、靄にけむる暑い光のなか、メコン河の渡し船のうえだった。すべてが、死ぬほどの欲情と悦楽の物語が、そのときからはじまった…。仏領インドシナを舞台に、15歳のときの、金持の中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。センセーションをまきおこし、フランスで150万部のベストセラー。J・J・アノー監督による映画化。

  • 「仏領インドシナを舞台に15歳のときの、
    金持ちの中国人青年との最初の性愛経験を語った自伝的作品。」(表紙裏より)

    映画は観ていないが、予告編の雰囲気に記憶があるので、
    エロティックで妖艶な恋の物語だろうと思っていた。

    ところがなんと哀しい可憐な少女の心。
    そして文章の美しさ。

    インドシナのメコン川デルタ地帯、靄と湿地とのけだるい空気。
    愛人との出会いの迫力、愛人と過ごす時間の濃密さ。
    そのひまに見え隠れする少女の家族。
    その家族の精神のあやうさ、すさまじさ。そして、貧しさの原因。

    文章が美しいと言ったが翻訳とて、言葉というより構成がいいのかもしれない。

    一人称、三人称と自在に変わり、情景もめくるめく、時も行ったり来たり、
    まるでデュラスが思い出を思いつくまましているようにみえて、
    しかし、印象深い作者の思索。書きたい意欲。みずみずしさ。

    作者これを書いたとき60歳だったのだ!

    もうひとつ。
    この本の表紙、18歳の美少女が作者自身で、
    みかえしの老いた作者のお顔をみて、のけぞってしまった。

  • 1984年ゴンクール賞受賞作品。
    1992年発行の文庫本が本棚に積まれてました…(;'∀')

    1929年のフランス領インドシナ。
    関係も家計も破綻した家庭の貧しいフランス人少女が
    華僑の中国人青年と愛人関係を持つようになる。
    しかし、人種差別的にはフランスが強く中国は
    弱い立場なので少女の家族を含んで非常に
    ゆがんだ関係が築かれる。

    日本では1992年に映画が公開されました。
    映画のちょっと妙な服装をした少女と
    イケメンだけどおどおどした中国の青年、
    よどんだメコン川がはっきりと思い出されます。

    友人と観に行きました。懐かしいなぁ。

  • 映画を2〜3回観てから読んでみた。本の方が間に今現在の描写が何度も出てくるので、回想感が強い分ちょっとあっちこっち気が飛んでしまうかも。
    読んでも観てもお話のような運命の出会いだよなぁと思う。男はロリコンでもなさそうだし、むしろ15歳という歳に似合わず大人びている彼女に一目惚れしたんだろう。その男が大金持ちで彼女は家が貧乏で苦労している…なんて。なんてドラマみたいなの!交際?している間は淡々と付き合って深入りはしないようにしていたけれど、最後の客船での涙は愛していたから流れたのよねぇ。それでもあの当時もう2度と会えないかもしれない距離に帰ってしまったことは、彼女にとっては忘れられる、思い出にできる機会ではあったよな。全てをサイゴンに置いてきた。
    読み終えた今、あたしはホーチミン(サイゴン)に居て、この地で映画も本も目を通せて良かった。異常と言っても良いスピードで経済発展をしたサイゴンにインドシナの面影はもう無く、港も寮の建物も残っては居るけれど映画のソレでは無い。映画撮影当時、色補正やセットの作り込みはしているだろうけれどあの時が1930年代を辛うじて感じ取れる最期の時だったのではと思う。

  • 1929年、仏領インドシナ(現在のベトナム)で暮らす15歳半のフランス人の少女は、裕福な中国人の青年と出会い彼の愛人になる。少女の家庭は貧しく、父の死後は教師の母の収入のみで生活してきたが、土地購入の失敗など不運ばかりが続き、さらに横暴で支配的な上の兄、その兄だけを溺愛する母の難ありな性格などもあり、少女は孤独だ。彼女が家族の中で愛しているのは大人しい下の兄だけ。母親は少女と中国人男性の関係をお金目当てで黙認している。やがて少女はフランスに帰国することになり・・・。

    デュラスが70歳の時に発表された自伝的小説。1992年に映画化されたときに文庫化されたので、その時ぶりの再読。映画も当時観ました。14歳の少女がお金持ちに嫁ぐ『第三夫人と髪飾り』というベトナム映画を最近観て、急にこの『愛人』のことを思い出し(ベトナムと少女繋がり)無性に読み返したくなったのでした。

    解説によると、もともとデュラスの思い出の写真にコメントをつける体裁の本の企画があり、そこから発展して結果この小説になったらしい。確かに、写真についての言及、そこから喚起される記憶、という感じのエピソードが多々あり、映画は少女と中国人青年との恋愛部分だけを抜き出してありましたが、小説のほうはもっと時系列バラバラの雑多な回想といった印象。母親や兄たちのこと、高校の寮の女友達、他の作品でも繰り返されるモチーフやエピソードが、思いつくままに挿入されているかのような。

    映画のように恋愛部分だけを物語として抜き出すなら、最初はお金のための割り切ったつきあいだったのが、いつのまにかこの中国人青年を愛していた(かも)というお話になるのだろうけど、70才のデュラスの回想はもっと客観的で分析的な語り口なので、あまりべたべたした感傷はありません。どう感想を書けばいいのか困ってしまうけれど、ただただデュラスの人生の年輪を感じさせられました。

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著者プロフィール

仏領インドシナのサイゴン近郊で生まれる。『太平洋の防波堤』で作家としての地歩を築き、『愛人(ラマン)』はゴンクール賞を受賞、世界的ベストセラーになる。脚本・原作の映画『ヒロシマ・モナムール(24時間の情事)』、『モデラート・カンタービレ(雨のしのび逢い)』、『かくも長き不在』は世界的にヒット。小説・脚本を兼ねた自作を映画化し、『インディア・ソング』、『トラック』など20本近くを監督。つねに新しい小説、映画、演劇の最前線にたつ。
第2次大戦中、ナチス占領下のパリでミッテラン等とともにレジスタンスに身を投じ、戦後も五月革命、ヴェイユ法(妊娠中絶法改正)成立でも前線にたち、20世紀フランスを確実に目に見える形で変えた〈行動する作家〉。

「2022年 『マルグリット・デュラスの食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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