夏の夜の10時半 (河出文庫 テ 1-5)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (203ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461151

作品紹介・あらすじ

スペインへの旅の途上、運命の夏の一夜、人妻マリアは、夫ピエールとその若く謎めいた恋人クレールへの嫉妬に身もだえながら、幼い妻をその手にかけた殺人犯ロドリゴ・パエストラと悲劇的な邂逅を遂げる…。デュラスが、血と悦楽の国スペインを舞台に、それぞれ狂気を秘めた四人の男女の愛のかたちを流麗な筆致で描き切ったフランス文学の秀作、待望の文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 積ん読を風邪ひきの休日に。酷暑と喧騒、驟雨の中に倦怠感がまたもや優雅な一冊でした。(デュラスはモデラート・カンタービレから二冊目です)特になんだろう、殺人犯ロドリゴ・パエストラと視線を交わし、迎えるまでのしばらくは彼らのじりじりとした空気がすっかりこっちに伝染してどっと疲れてしまった。ゆらゆらと愛が壊れながら旅する一場を垣間見る読書は、薄い本なのに、濃密で、ひりひりと時間は長く感じました。いつかは『愛人』や池澤夏樹も編んだ『太平洋の防波堤』が読みたいです。ていうかデュラスとサガンて!反則の取り合わせ!

  • うだるやうな暑さ。むつとする熱気と湿気。これは紛れもない、アジアの夏ではないか。南の島に向かう飛行機の中、ふとそんなことを考へる。
    『モデラート・カンタービレ』あるひは『破壊しに、と彼女は言う』のやうな印象。アルコールに溺れるその姿は『これでおしまい』のデュラスの姿に他ならない。
    どこかで破綻や終焉が見えさうな漠然とした不安。デュラスといふひとは、ひとの関係の一瞬一瞬をこれでもかといふほどに切り取る。ロドリゴ・パエストラが黄金色の畑の中で、ぎらぎらと照りつける太陽の下で命を絶つことなど誰にも予測できない。一見すれば、妻の浮気がもとで殺しをしたやうに語られるが、それも誰にもわからない。それこそ『異邦人』のやうに「太陽がまぶしかったから」といふことを考へるマリアの言ふとおりではないか。
    時間は流れる。けれどそこに何か物語を進行させやうとするものはない。にわか雨が降り、夜が明け、日が昇る。時間の流れは極めて残酷に人物たちを過ぎてゆく。眠りさへもすがるしかないアルコールによつて満たされる。人物たちもその関係を今ここでみるしかない。どういつた経緯で旅行してゐるのか、何が目的でどこまでいくのか、そういつたことは何ひとつわからず、ただただローヴァーに乗せられる。さういつた人物に流れる人物たちの時間の流れとはまつたく無縁に、物語は進められるのだ。
    ひたすらに、この物語を「みる」ことを感じた。

  • デュラスの本は映画のようだ。

  • 無人島に持って行きたい本。
    何度読んでも飽きない、何度読んでもなにかを感じ
    させてくれる本。

    空想と現実が混ざり合い、複雑な三角関係が浮かん
    では消え、ヒロインのマリアの支離滅裂な想いによって
    何度読んでも混乱に落とされます。

    それでも読むたびに新しい発見があって、深い。

    なにかを学んだり、教訓にするものではなく夏の
    じっとりした暑さや驟雨をたっぷり感じさせてくれ
    ます。真夏のスペインを旅している気分。

    とにかく、自分を取り巻く現実を本当に忘れさせて
    くれるいい意味でどっぷりと重い小説です。

    これからも何十回も読むことでしょう。

  • 夏至も過ぎた、これからはまた日暮れがはやくなる。読み直すなら今のうちだ。というわけで、今宵はこれを。ちょうど雷鳴と雨音が。これを読むとお酒を飲んで沈没したくなる、それは『モデラート・カンタービレ』と同じ。(だけどきっと、映画的に想像できるようには綺麗に艶っぽく酔っ払うことはできないんだよな、……嘆息)。「マンサニリャ」というのはどんな味のお酒なんだろう、と、媚薬の名前のように聞こえるそのお酒に憧れてしまう。夏本、雨(驟雨)本。

  • 生における劇的な瞬間を描かせてデュラスの横に並ぶものはいないと思う。

  • 090809(a 090912)

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著者プロフィール

仏領インドシナのサイゴン近郊で生まれる。『太平洋の防波堤』で作家としての地歩を築き、『愛人(ラマン)』はゴンクール賞を受賞、世界的ベストセラーになる。脚本・原作の映画『ヒロシマ・モナムール(24時間の情事)』、『モデラート・カンタービレ(雨のしのび逢い)』、『かくも長き不在』は世界的にヒット。小説・脚本を兼ねた自作を映画化し、『インディア・ソング』、『トラック』など20本近くを監督。つねに新しい小説、映画、演劇の最前線にたつ。
第2次大戦中、ナチス占領下のパリでミッテラン等とともにレジスタンスに身を投じ、戦後も五月革命、ヴェイユ法(妊娠中絶法改正)成立でも前線にたち、20世紀フランスを確実に目に見える形で変えた〈行動する作家〉。

「2022年 『マルグリット・デュラスの食卓』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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