砂男/無気味なもの (河出文庫 ホ 3-1 種村季弘コレクション)

  • 河出書房新社
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感想 : 10
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  • Amazon.co.jp ・本 (196ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461373

感想・レビュー・書評

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  • 夜なかなか寝ない子を寝かせるために早く寝ないと砂男がやってきて目玉をとっていくぞと脅されたという幼児体験がヨーロッパの人たちに共有されている。それを踏まえて書いたホフマンの「砂男」。それをもとにして心理学者フロイトが無気味さの正体に迫る。
    無気味さとは何か。フロイトは驚くべき答えを提示する。まさに深層心理の真髄に触れるあっと驚く分析だ。
    ホフマンの小説とフロイトの論説をいっぺんに読める文庫本だ。編者は怪奇ものの大家種村季弘である。なんとも刺激的な本だ。心理学のみならず文学に興味のある人におすすめ。ミステリーの謎がとけるかも---。
    図書館蔵書なし
    yori

    • tokudaidokusho2さん
      日本とヨーロッパで恐怖対象が異なること、作品の分析が合本されていることなどに、興味をそそられ、読んでみたいと思う。ただ、怖い話は苦手なので、...
      日本とヨーロッパで恐怖対象が異なること、作品の分析が合本されていることなどに、興味をそそられ、読んでみたいと思う。ただ、怖い話は苦手なので、最後まで読めるか自信がない。
      kame
      2018/11/13
  • 再読。ホフマンの有名な「砂男」と、砂男も引用に使われているフロイトの分析論「不気味なもの」を一緒に読んでみようという試みが面白い。フロイトよりも種村季弘の解説のほうがわかりやすいけど(苦笑)

    何かと性的なことに結び付けたがるのはフロイト先生の癖ですが、眼球喪失=去勢コンプレックスだと言われてしまうと、では女性の立場は?というツッコミは入れたくなる。女性器を不気味だという男性の話も、むりやりこじつけなくても、単に形状気持ち悪いだけでしょ?(苦笑)

    「砂男」ホフマン/「無気味なもの」フロイト/「ホフマンとフロイト」種村季弘

  • 科学と精神の話、ラヴクラフトに勝る

  • 『ホフマン物語』に出てくる自動人形オリンピアのエピソードの原作『砂男』を読んでみたかったのである。

    『砂男』って、民間伝承の眠りの精のことなのかと思いきや、そんな話ではございませんでした。


    フロイトによる解説みたいな『不気味なもの』のほうは、よく書いてあることの意味わかんないから、ほとんど読み飛ばした(((^^;)

  • 最初は書簡のやり取りが繰り返される。
    主人公が子供の頃、寝ない子供の目をくり抜くという
    怖い話を聞かされていて、
    実際に毎晩訪ねてくる父の友人が砂男だという恐怖と
    大人になった今、またその砂男が自分の家を訪ねて来るのだと
    義理の妹に訴えるが、それは妄想だと諭され心配される。

    そんな中、自分のアパートメントの向いの窓から見える少女に
    恋するが、結局はそれは自動人形であったと後々気づき……
    というような話。

  • 久々の再読。
    E.T.A.ホフマンの怪奇小説「砂男」と、
    フロイトによる作品の分析・解説「無気味なもの」のカップリング本。
    砂男(der Sandmann)は、ドイツ民間伝承中の睡魔で、
    彼が夜、砂を投げると、人は目を開けていられず、眠らざるを得なくなるという。
    「砂男」はそれをモチーフにした、
    父を死に至らしめた(と思われる)怪しい男の呪縛から逃れられない青年の悲劇。
    フロイトは、青年ナタナエルを狂気に追いやるコッポラ【※】の名を
    眼球喪失=去勢不安に関連づけており、
    両編を翻訳・解説する種村氏は、
    一度遠ざかった恐怖の対象(父の死に関係する弁護士コッペリウス【※】)が
    今度は晴雨計(気圧計)・眼鏡・望遠鏡売りコッポラとなって再び接近してくる有り様を、
    キリスト教の力によって抑圧されたはずの吸血鬼信仰が民衆の記憶に沈潜していて、
    そのイメージが繰り返し夢魔となって立ち現れることと重ね合わせている。
    ……じゃあ、「砂男」も一種の吸血鬼小説と捉えていいのかな?
    それから「もう寝る時間だよ」と寝室に押し込められたにもかかわらず、
    親の様子が気になって、こっそり覗きに行った子供が恐ろしい仕置きを受けるという条に、
    何やら意味深なものを感じますね、いかにもフロイト的な例のアレというか(笑)

    【※】コッポラの名はイタリア語で眼窩を意味するcoppoに由来し、
       コッペリウスもコッポラの類型。

  • ホフマンの怪奇小説「砂男」と、それをもとにフロイトが展開した精神分析の論文。フロイトは、ドイツ語の heimlich が、「人にとって馴染んでいる」という第一義から派生して、「人の目から隠されている、密かな」という反対の意味(unheimlich)をも併せ持っているという事実に着目する。そこから、「無気味なもの」とは"嘗て慣れ親しんでいたが・一旦は抑圧されて・それが再び顔をもたげてしまった心象に対する情動"だ、とする。フロイトの文化批判には興味があるが、精神分析そものもを如何なるものとして――科学か、文学か? 論理的な展開か、想像力の飛翔か?――受け取ればいいのか、いまだによく分からない。

  • ホフマンの『砂男』とその分析を含むフロイトの論文『無気味なもの』の合本。ナタナエルが自動人形オリンピアに恋するのは、ナルシシズム愛であり「無気味」ではないとフロイトは断じる。「無気味なもの」とは新奇でも見知らぬものでもなく、心的生活に古くから馴染みのあるものであり、ナタナエルにとっては幼少時の眼球障害及び眼球喪失の不安(抑圧されたコンプレックス)が成人後にも蟠り、それが去勢不安であると結論づけている。『砂男』に繰り返し登場する眼球モチーフと、砂男はその度に愛を妨害する「恐ろしい父」。心の内部の反復強迫を思い出させるものが無気味として感じられるのである。

  •  これ「砂男」っていう有名な小説が載っている。だけど書かれたのが1800年代だから、あまりおもしろくないのかな、と思っていた。ところがむちゃくちゃおもしろい。読んでてわくわくする。江戸川乱歩みたいな、童話みたいな、ファンタジーみたいな、とにかく「次のページをめくりたい!」っていう興奮があった。出てくる小道具も「自動人形」「望遠鏡」みたいな感じで冴え渡る。ところがこの本、なぜか絶版。何回も復刊されてるけれど、すぐ絶版。残念。(けー)

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著者プロフィール

E. T. A. ホフマン
1776~1822年。東プロイセン、ケーニヒスベルクに生まれる。裁判官となるが、失職後は劇場監督に就任し小説や音楽評論を書き始める。のち裁判官復職後も創作を続け、幻想的で特異な独自の世界を構築した。

「2022年 『ホフマン小説集成』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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