くるみ割り人形とねずみの王様 (河出文庫―種村季弘コレクション)

制作 : E.T.A Hoffmann  種村 季弘 
  • 河出書房新社
3.70
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本棚登録 : 72
レビュー : 8
  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461458

作品紹介・あらすじ

チャイコフスキーのバレエで有名な「くるみ割り人形」の知られざる原作が、今、新しい訳でよみがえる。こっけいで不気味、気が良くて残酷、美しくて醜悪、エレガントでうさんくさい-ホフマンの描き出す世界を見事に体現した表題作のほか、幻想味あふれる「見知らぬ子ども」「大晦日の夜の冒険」を併録した、待望のメルヘン集成。

感想・レビュー・書評

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  •  バレエの『くるみ割り人形』の原作と言えば、話が早いのだろう。バレエは視覚に訴えるものだから、きっと華やかな感じだろうなあ。これを書いている私は、バレエ版を見たことがないのだけども……。
     しかし、チャイコフスキーの組曲『くるみ割り人形』は好き。舞台の世界を豊かな音色で表現しているから、音楽のみ鑑賞していても楽しい。おかげでCDのライナーノーツでおおよそを知ったけど、バレエのストーリーは可愛らしく単純化されている。何なら、ホフマンの童話はそれとは別作品と考えていいほどだ。

     ホフマンが書いたのはマリーちゃんで、舞台のはクララちゃんだ。この二人は名前が違うだけではなく、はっきり別人。くるみ割り人形への接し方も違っている。マリーは、人形を腕に抱くどころか触れないようにしているくらいで、態度に怯えを含んでいて慎重だ。
     くるみを割るための実用的な道具だから、愛玩物(可愛いお人形さん♡)という顔つきじゃない。というのもあるのだけれどそれ以上に、マリーはそのくるみ割り人形を見ると、何かを意識してしまうみたい。それを洩らしてしまうと面白くない。感じるしかないだろう。

     ホフマンの描いた物語は、暗いです。暗い童話って面白い。教育上配慮したおはなしより惹かれる。人形にねずみの血がつき、拭き取ろうとすると人形が動き出したように見える場面がある。マリーがビクッとして手を引っこめてしまう感じが、すごくなまなましい。とにかく子どもっぽくないというのが鍵。

     これは「世界でもっともかたいくるみ」を砕く物語。言葉にするとこれも野暮になるけど、読み落としたくないのがくるみのメタファーだ。「かたいくるみ」は、簡単には打ち砕くことのできない悩みの象徴。両親が自身に無関心で愛に餓えていたマリーには、強い「くるみ割り人形」が必要だった……。心の深いところに根差した作品だ。


    レビュージャパン掲載書評「世界で一番かたいくるみを噛み割ることの意味は?」

  • 再読。ホフマン作品の中でも比較的子供むけ?と思われる2作中心に収録。

    「くるみ割り~」は、ホフマン作品ではお馴染みコッペリウス型のキャラクターであるドロッセルマイヤー氏が役割的にそれほど邪悪でないものの、ラストが、個人的にはちょっと怖い。一見マリーが人間の王子様になったくるみ割り人形とハッピーエンドのようであるけれど、その直前に一度無駄にマリーが椅子から落ちて「失神」しており、目覚めてからの展開がやや唐突すぎるので、実はこれマリーの死にオチではないのかと勘ぐってしまう。でなくても7歳の女の子が王子様と夢の国へ行きまーす!で行方くらましたら現実には大問題なわけだし。

    「見知らぬ子ども」はハエの化身みたいな変なおっさん(悪魔?)の描写が面白いんだけど、オチ自体はちょっと謎だったかな。

    「大晦日の夜の冒険」は構成が消化不良感。作中小説である鏡像を悪魔に奪われた男の話は面白かった。

    ※収録作品
    「くるみ割り人形とねずみの王様 」「見知らぬ子ども」「大晦日の夜の冒険」

  • イヴに読了。まさにクリスマスの話。バレエの「くるみ割り人形」の原作だと、今頃知りました。曲は聴くけどバレエ見たないので(汗)他二作ともにに幻想的でどこか不気味で。大晦日の三作目はどこか日本の怪談にも近しいような気も。2013年はバレエとか観てみたいな。クリスマスに。

  • 短編3編。
    ホフマンのメルヘンチックな物語を初めてちゃんと読んでみた。
    表題作はバレエでも有名。
    シュタールバウム家の子供たちに贈られたクリスマスプレゼントの中で、
    7歳の末っ子マリーの心を射止めたのは、歯に殻を噛ませて割る、胡桃割りの人形で、
    彼女は深夜、その人形と他のおもちゃたちが、
    屋敷に侵入したネズミの軍勢と戦争を始めたのを目撃してしまった……という、
    かわいらしい物語だけど、
    怪しいドロッセルマイヤーおじさんのイメージが
    『砂男』のコッペリウス(コッポラ)とダブった(笑)

  • 知人に借りて読んだ
    バレエで有名だけど、小説が原作だとは知らなかった


    内容について

    短編が表題作含め3つ入っているだけど、僕が一番好きなのは2作目の見知らぬ子供だった
    全編通して不思議でどこか空恐ろしいような物語だった


    その他、気になった点について

    色々驚いた

    何より驚いたのが、なぜか語りかけられていること
    これはあとがきを読むと、作者がフリッツという男の子に聞かせた物語を文章にしていたものだということが分かるのだけど、本編中では全くその理由が分からない
    正直なんて不親切な読み物なんだろうと思ってしまう

    話し言葉で書かれているせいなのか分からないけど、情景描写が分かりにくかったり・・・うーん、表現が自分には合わなかったということだろうか

    でも、これがなぜか以上の様な気になることが、読んでいくうちに気にならなくなることが、不思議だった

    こういうのが名作と呼ばれる所以なのだろうか

    なんだろう、この物語たちをまだ受け止めきれていないというのが正直なところだと思う

  • 三作のうち、特に表題作が面白かった。騒々しくて悪夢のようにピカピカなお話。なのにダーク一辺倒にもならず、優しいメルヘン。語り手は不気味さと親しみを同じ顔に浮かべて目も眩むお話をまくし立てる。どのお話も夢と現実が地続きで転がりまくってキラキラしてる。くるみ割りと女の子の熱々なやりとりにたまにひやりと悪夢が忍び込むけれど、女の子はくるみ割り人形にお熱でそれには気付かない。変なおじさんに怖くて面白くて綺麗なお話をせがむなら、ホフマンに頼むべき。他の作品も積ん読リストに・・・。

  • ドイツ語のテキストで短いものを読んだのだが、短くしすぎて内容がいまいちよく分からずあらためて読んでみる。
    「えっ?こんな物語だった??」といまさらながら驚いたのは、メルヘンの2層構造。

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