高慢と偏見 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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感想 : 13
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  • Amazon.co.jp ・本 (528ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309461649

感想・レビュー・書評

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  • 翻訳が定番で、かっちり目のものらしい。最近は、もう少し現代風のくだけたものも出ているようですが、このクラシカルな感じが好み。BBC放送の画像が表紙と口絵に使われていて、想像しやすくて良かった。ただ1巻組なので500ページにぎっしり字が印刷されていて、少々目につらく、周りの余白もギリギリな感じ。

    登場人物の5人姉妹に愛称があるので、名前と愛称が頭に入るまでは、巻頭の人物リストに戻ってばかり。ですが、読んでいくと、登場人物の話し方と性格が描き分けられていて、生き生きとイメージできるようでした。

    生き生きとしたキャラクター性は、「赤毛のアン」や「若草物語」に通じるものがあって面白かったのですが、それらの話と異なるのは、階級の差が障害となっていること。さらに、階級や身分の差による障害というと、高貴な身分の男性が身分の低い、でも美しく優れた女性を愛し、愛をよすがに障害を乗り越えるというものがイメージされますが、この話では、よりリアルに描かれていて、そこが面白かったです。


    特に、ダーシーのエリザベスへの最初のプロポーズの場面。ダーシーが、「怒りをふくんだ軽蔑から、しだいに平静で不動な沈鬱さに変わって」(18章)、エリザベスの母親ら家族の様子から階級や環境の差を危惧して、自分の恋心を止めようと考えたり、友人のビングリーと姉のジェインとの恋愛を終わらせようと考えるのは、ある意味とてもリアル。でもプロポーズする際に「彼は愛情の問題については、誇りのそれについてほど口が達者ではなかった」、身分の低いこと、家族に問題があることをとうとうと述べていては、「あの憎らし誇り」「許しがたい自信」(34章)に対してYesという女性はいないとつっこみたくなるほどでした。


    タイトルのpride プライドは高慢であると同時に誇り、でもあって、誇りは決して悪いものではないけれど、高慢となれば欠点になるという点が、人の性格が多面的であることよく表していると思います。

    アクシデントで偶然、ダーシーの居住地を訪れることになって、さすが赤い糸の二人で、さらに二人を結びつける結果となるリディアの駆け落ちが起きるのですが、その時のエリザベスの心情、「自分の魅力が消えてゆきつつあるのだ」「愛がむなしくなったいまほど、彼を愛することができると心底から感じたことはなかった」(46章)もリアル。その時のダーシーの対応はプロポーズしたころより、ずいぶん成長していたようで、ダーシーもエリザベルも、「高慢」を抱えつつも、自分を振り返り「誇り」は持ちつつも「高慢」を昇華していっているところが共感でき、一方で、それでも最後までエリザベスが聖人になってしまわないで、自慢する気持ち、高慢が残り続けるところもリアル。

    キャスリン夫人が、噂の出所がエリザベルだと邪推して殴り込んでくるところは、とーっても面白い。そしてその結果が、むしろエリザベス達を結びつける結果になるところも、とーっても面白かったです。

  • 2014・5 

  • ロンドン郊外に住むお年頃の五人姉妹の恋愛模様。
    皮肉に彩られつつもユーモラスでもある。

    『高慢と偏見とゾンビ』を読んだ後にこの本を読んだので、戦士ではないエリザベスが新鮮でならない。
    殺意を実行へとうつさないエリザベスに驚き、心臓を抉り出して食べないエリザベスに若干の物足りなさを感じる。
    きっと読む順番をまちがえた。

  • 「ツンデレ」それはまさに、本小説主人公・高慢担当のダーシー氏のためにある言葉といえよう。 

    しかし「コイツ・・ツンデレもええ加減にせえよ・・」と冒頭、何度思わされたか知れないダーシー氏の心情の描写に触れるにつれ「本当はイイ奴かも・・・」 → 「あれ・・・ダーシー好きかも・・・だめ!アイツはツンデレなのに!」とほだされていく筆致の突破力よ! やはり、落差パイルドライバーはコロッといき易いですねw

    イギリス社交界版ビバヒルか?と思いきや、イギリス独特の階級社会の考え方や、文化にも触れられる一冊。こういうのが理解できてから古文を学び直せば、また違うのかなとも思った。

    最後までよく分からなかったのが、人が集まると突然開始される「かるた遊び」。

    私の知ってるカルタといえば百人一首や「忍者ハットリくん☆かるた」なんだけれども、本小説に出てくるカルタは、どうも親族でする麻雀的だ。
    なんなんだろう・・・

  • イギリスの貴族生活の中で、それぞれの人間描写が実に巧みな作品。
    限嗣相続という制度がミソになっていて、その制度の中で、それぞれの悲喜こもごもが様々な場面で示され、ついつい続きが読みたくなる展開。
    後半はあっという間に読み切り、めちゃ面白い一冊だった。
    主人公のエリザベスの人間観察も鋭かった。

  • 19世紀にオースティンが書いた、イギリスのアッパーミドルクラスのひと組の男女を軸に展開していく物語。中流階級以上といえどその中でも階級の低い一家のエリザベスと、大金持ちで美男とされるダーシーの二人が出会い、なんやかんやを経て、結婚する、という流れなのですが、これがなんともおもしろい。
    社交界とか恋愛小説とかあまり好き好んで読まない類なので、オースティンにもこれまで近寄ってなかったのですが大きな勘違いをしていたようです。

    別に物語の中では殺人事件が起きたり魔法が使えたり、そんな劇的なシーンはありません。ただエリザベスたちが笑い、憤り、迷い、誤解したり和解したりする日常を描いたものです。しかし物語はエリザベスという知的で、ユーモアがあり、少しシニカルでお茶目な一人の女性の目線で語られていくので、うんざりするような舞踏会や甘ったるいメロドラマなんて要素はこの作品のどこにもありません。
    ヴィクトリア朝前後の地位ある階級の一家の女性は、夫に従うことや貞淑さ、淑やかさが美徳とされており、そんな女性観がわたしはあまり好きではなかったのですが、エリザベスはこれでもかというくらいその女性観から外れ、知性と理性と鋭い観察眼で、自分が尊敬するに値しないと思った相手には容赦なく振舞います。特に、ダーシーやコリンズの結婚申し込みをぴしゃりと断った時など見ものです。
    そんなふうに、エリザベスの、周囲の人物に対する現代的な視点によって読者は当時のイギリス上流社会をおもしろおかしく見ることができるのです。

    なんだかその小説のスタンスって前読んだ何かに似てるな?と思ったら、「ブリジット・ジョーンズの日記」でした。ブリジットの日記は現代版「高慢と偏見」とも言われてるみたいで、もともとモチーフにしてたみたいですね!ブリジットのボーイフレンドはマーク・ダーシーという名だし。全然知りませんでした。

  • 『世界十大小説』上・下(サマセット・モーム)に選ばれた名作です。冒頭の一文“It is a truth universally acknowledged, that a single man in possession of a good fortune, must be in want of a wife”はこれだけで小説の主題が表していると激賞されています。初めに書かれた1797年のときはFirst Impressions(第一印象)という題で、父が出版交渉するものの断られてしまいます。
     ロンドン郊外のロングボーンで暮らすベネット家の生活が描かれています。主に長女ジェインとビングリー、そして次女エリザベスとビングリーの親友ダーシーが、それぞれ多くの困難を乗り越えて結婚までたどり着く話です。けれど、べたべたのロマンス小説ではありません。何事に関しても無関心な父、娘たちを年収が多く身分の高い男性に嫁がせようと奮闘する母、美人で賢く礼節をわきまえている上2人の姉に比べ、世間を知らず勝手わがままな下3人の妹。あなたのそばにも必ずいるような人々がたくさん登場します。
     わたしは主人公のエリザベスのような女性になれたらと思いました。初めはひどい偏見でダーシーを軽蔑していましたが、自分の過ちを認め常に真実をみようとする姿勢で、姉の力強い支えになり、母や妹の品のなさに嘆き、ダーシーに日増しに信頼と愛情を募らせる彼女には好感が持てます。

  • ロンドン郊外の田舎町に住まうベネット家には長女ジェイン、次女エリザベスをはじめ年頃の5人姉妹が。
    ある日、近所に越してきた青年・ピングリーとジェインは舞踏会で出会い、お互い惹かれ合う。
    一方エリザベスはピングリーの親友で資産家のダーシーの気位の高く人を寄せ付けない態度に傷つけられ…。彼の高慢さはエリザベスの偏見なのか?
    より良い結婚相手を捕まえようと奮闘する女性達を中心に繰り広げられる人間模様。

    先日WOWOWで放送していたのに触発され再読<font size =1>映画は原作小説の最後のシーンまでなかったのが残念★そこまで入れようとすれば長すぎ!になるんだろうケド…せめて姉妹2人の結婚式までは入れて欲しかったナ</font>
    映像で見た後だとダンスのシーンや衣装、自然やお屋敷などの風景が思い浮かべ易くて良いです♪

    純粋で人を疑わぬ質、悪く言えば人に左右されやすいピングリーとジェイン
    最初の印象が悪く、人知れず善行をするダーシーへの感情に揺らぐエリザベス
    妥協と打算で結婚を決めるエリザベスの親友シャーロット
    その場の感情で突っ走る無分別な5女リディアの恋
    その他いろいろ画策する女性陣が、昔も今も変わらず“こういう人いる!”て感じで面白いです☆
    ダーシー氏は最初の態度もだけど“金持ちで名家の自分の申し出が断られる筈がない”と思ってるトコロが問題なんだよね★
    エリザベスがコリンズ氏の申し出を断った際、父親が言ったセリフが好き
    文学作品だけどロマンスです
    私の持ってるのは河出文庫版なのですが…訳がかたい感じ?多分ちくま文庫版の方が読みやすいハズあと、違う人の書いた続編が2作ある様で…あまり評価が宜しくないので手は出しませんが。ちゃんと完結しているものに何故そういうのが作られるのか謎だ★

    20071105

  • 2000
    2009

  • ツンデレダーシーに萌え死ぬ英国物語

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著者プロフィール

ジェイン・オースティン(Jane Austen)
1775年生まれ。イギリスの小説家。
作品に、『分別と多感』、『高慢と偏見』、『エマ』、『マンスフィールド・パーク』、『ノーサンガー・アビー』、『説得されて』など。
1817年没。

「2019年 『説得されて』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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