- Amazon.co.jp ・本 (435ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309461915
作品紹介・あらすじ
一九三○年代のロサンジェルス。大恐慌に見舞われ失業者のあふれる下町を舞台に、父親との確執、大人への不信、容貌への劣等感に悩みながら思春期を過ごす多感な少年の成長物語。ブコウスキーの自伝的長篇小説。
感想・レビュー・書評
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チャールズ・ブコウスキーが主人公ヘンリー・チナスキーに託した描く、自伝的長編小説。
暴力的な(といっても当時はある程度一般的だろうが)父と、それに服従する母。大恐慌時代で荒んだ下町での陰鬱なある種の諦念がただよう空気。喧嘩や揉め事の絶えない人間関係。そんな中で、腹を立てながらも、なんだかんだ友人が出来たり離れたりと生活をしていくチナスキーの姿は、エンタメ的物語的ではない、ある種の真に迫ったリアルがあるように思える。
劇的な救いは無い。ためになる教訓も無い。そこにはヘンリー・チナスキーという男が辿った足跡があるだけだし、それが文章として成したものを文学という。
大統領のスピーチを聞いてきてレポートを書く課題を出され、父に家の用事を強要されてるためスピーチを聞けなかったチナスキーが、でっち上げた作文を披露してその面白さを受け入れられるシーン。
あれは間違いなくブコウスキーの原体験であり、創作を貫く初期衝動なのだろう。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
著者、チャールズ・ブコウスキーの自伝的要素のある小説。主人公ヘンリー・チナスキーの、1922年の1、2歳の記憶から1945年の日本の真珠湾の報道がされている時期までの生活を描く。父親からの虐待、学校教育への不信、喧嘩、容貌の劣等感など少年時代によくある悩みに加えて、特殊な家庭事情、社会状況も描き出し、読み進めるうちに面白くなっていった。社会と自分にうんざりしている様子に共感しつつ、不思議と絶望感は感じられないんだよなぁ…ラストのボクシング・ゲームは印象的。
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ブコウスキーファンなら必読の作品だろう。作者の分身ともいえるヘンリー・チナスキーの成長物語である。
貧しい幼年時代からカレッジを卒業して作家修行を始めたところまでが書かれている。後の『ポスト・オフィス』『パルプ』『詩人と女たち』とつながっていくインフラ作品と考えた場合、この自伝的要素が深い小説は、ブコウスキーファンとしては、見逃せない作品であるわけだ。
この作品がすばらしいのは、ありのままの日常を“ありのまま”に捉えているところで、その一生懸命さに思わず応援のエールを送りたくなってしまうだろう。ある種の差別(敵国出身という人種・移民)を受けながらも貧しい少年時代をけなげに生きるチナスキーがいじらしくなってしまうし、戦争を控えた時代背景と、父親との対立、性への目覚め、将来への不安と野望、そして、時折垣間見えるブコウスキーらしさともいえる一流の倦怠感と醒めた意識が作品全体にわたって滲み出ている。
ブコウスキー作品の魅力に触れるなら、まずこの作品からとも言っていい定番となりえる佳作である。 -
1930年代の大恐慌の時代。父親が失業者で子どもを虐待するような家庭で育つ主人公。
多感な少年は、こんな生きづらい時代にどのように成長していくのか。
反骨心、劣等感など読むべきところはあるけれど、共感できる部分はあまりなく、淡々と過ぎてしまったというのが正直なところ。 -
めちゃくちゃニキビに悩んでてほんとブコウスキー推せますよ
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傑作
原題は HAM ON RYE
つまり、ライ麦パンのハムサンド
意味がありそうで特になさそうな、それは無情とも即物とも違う諦念なのかぶっきらぼうなのか、その雰囲気を感じさせるタイトルだか、なぜか、「くそったれ少年時代」という、愚にもつかぬ邦題。
ブコウスキーらしさ!といって読者に媚びる態度すら見えるこのタイトルが大嫌いだった。その方が売れる?ブコウスキーが売れるタイトルをつけると?
Womenが、「詩人と女たち」なのは翻訳の範囲として許せるとして(意味は多少変わっても、わかりやすくするもので、媚びてない)、こういう改題をする権利は翻訳者や編集者にあるのだろうか、、、 いや、それは著作権としての法的な権利の話ではない。
まぁ、そのお陰で翻訳本を読めてるんだと言われればその通りなんだけども、こういう、読者のレベルを下げるような翻訳は、結果的に読書のレベルを下げていくと思う。
日本語訳するなら、「ハムサンド」とかそれくらいのぶっきらぼうレベルでもよかったのかもしれない。
いや、それがうまい訳とは思いませんが、少なくとも「くそったれ少年時代」という本棚に並べたくない愚かなタイトルほどではない。 -
おもしろい
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3冊目のブコウスキーはチナスキーの少年〜成人する辺りまでの本作。太いストーリーは無く、思い出した通りにエピソードを積み重ねている感じ。割とずっと絶望的な状況であるのに、読んでるこちらは楽しい。相変わらず下品で喧嘩っ早くて口が悪い……にも関わらず、魅かれるところがあり、なんだか私はこのチナスキーといると気持ちが落ち着いてくる(間違った感想……?)。
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30過ぎてブコウスキーなんて残酷すぎる。もっと早くに読んでしまえばこんなに滅入ることはなかった。ガリ勉メガネの黒髪真ん中分け大学生がパンクという言葉を彼に見出したところでそんなものはパンクでもなんでもなく、自転車屋で修理する類いのパンクだ。穴が空いて、塞いで欲しくて、何かを埋める。そんな人生は誰にだって起こりうるし、その大半が20代に起こるからこそ急いで読まなくてはならない。文字が読めるようになったあたりでブコウスキー。っていうのが丁度いいのではないでしょーか。
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ブコウスキーの半自伝的な作品。
最後は真珠半攻撃を受け海兵の友人を見送るという。
しかしながらドイツで生まれた彼、ジャップをぶち殺すということはアメリカ側の意志。
少年時代の終りの彼が友人と別れるその日はひとつの季節が終わる。しかしながら大恐慌時代のアメリカ、ロサンゼルスの貧しい人々の暮らしのどこにも行けない閉塞感、金持ち達との別世界。
やっぱり現在とアメリカの作家であるロストジェネレーションと呼ばれた一群が過したその第二次世界大戦前の時期とか似ている。
ブコウスキーの怒りが現れる詩や小説がなぜ生まれたのかがわかる彼の少年期。