さかしま (河出文庫 ユ 2-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (387ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462219

作品紹介・あらすじ

「生産」を至上の価値とする社会に敢然と反旗を翻し、自らの「部屋」に小宇宙を築き上げた主人公デ・ゼッサント。渋沢龍彦が最も愛した翻訳が今甦る。

感想・レビュー・書評

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  • 【あらすじ】世の中いやになったのでひきこもっていろいろ連想を働かせていたら躰を壊しちゃいました。ああ、いやだなあ。

    【笑えたところ】インテリアへの異様なこだわり。ひきこもりだから。
    文学への衒学趣味は完璧。あ、でも忘れてた、音楽にもまずまずこだわりあるんだよーとエクスキューズ。その必死さ。

    いわば趣味ブログ。私ってこんな高尚な趣味なんですよーとアピっている。

    しょうもないが嫌いになれないパーソナリティ。
    それは亀の甲羅へ宝石を象嵌させたり、酒の組み合わせを口中オルガンと見做したりするような、一種の諧謔による。
    神経の病と腐肉への偏愛も。

    想像力による現実の塗り替え。の、勝利と敗北。

    貴族/ブルジョア/カトリック(の堕落)

    「あれはみんな梅毒なんだな」
    うん。この一言に尽きる。

  • 主人公のデ・ゼッサントは今風に言うと、デカダンというよりはむしろ引き蘢りの帝王といった趣きで(笑)金に明かして理想の住処を構築し、本と妄想に埋もれて余生を暮らすという、同じ引き蘢り体質の人間としては非常に羨ましい限りの環境。衒学的だなと思うのはデ・ゼッサントがというよりむしろ、彼の趣味はそのまま作者のユイスマンスの趣味だからでしょう。訳注だけで、本文の5分の1くらいはあるのじゃないかしら(苦笑)。なんにせよ、この主人公の引き蘢りデカダンっぷりは、どこかしら滑稽でもある反面、羨ましくもあったりする。100年たっても、人間の思考パターンって大差ないんだね…。

  • デカダンスを夢み、襤褸とサロメと梅毒のかたまりになった者へ。
    飢餓を喰い気が狂い、さかしまに取り憑かれた者へ。
    斬首を望み、おどろおどろしいアウトローに嗤笑する者へ。
    奈落の赤と黒を取り入れ、偶像への供物を貪る者へ。
    この言葉を贈ろう。

    「Salut!」

  • ウエルベックの「服従」の流れで読んでみた。
    1884年の小説だけど、とにかく暗い。
    いくらお金があっても、病気になるとネガティヴになる感じがリアルに書かれている。
    そしてとにかく性格が悪い。金持ってるやつが性格悪いと最悪だっていうw

    好きなのは
    主人公のデ・ゼッサントが、歯医者が怖くてたまらないけど、引き下がれなくなって歯を抜く場面。(こわい!)
    あと芸術作品をコレクションしているけど、その割に「最近の芸術は全部ダメ」とか思っているところ。「わかる、わかるよ!」と思った。

    あとはまあ、この時代にベルエポックを準備してるわけだから、そこまで悲観的にならないで!って未来から

  • 再読。
    衒学的な夢想には何度読んでも圧倒される。しかし、理想郷は永遠に続かない……。
    作中では様々な芸術について言及があるが、一番凄いのは色彩感覚だと思う。割と悪趣味スレスレのところにあるが、妙に心に残る。それを『文章』で表現しているのはかなり凄い。
    それにしても、こういう生活、いっぺんしてみたいもんだw

  • 反自然主義、反小説であり、デカダンスの聖書と呼ばれ、ワイルドやブルトンに影響を与えたらしい。人工的な楽園に閉じこもり高度に洗練された収集物を前に奔放な想像力は時間や地理上の制約を受けることなく旅をする。想像力の前では現実は無力であり虚しい幻想である。没落する貴族になりかわり台頭してきたブルジョワへの痛烈な皮肉、カトリシズムの堕落と古き良き中世への憧れが強く感じられた。

  • 退廃的、厭世的。自分で作り上げた孤独の世界。薄暗さの中に翳った金属や宝石などの鈍い輝きが見えてくるような描写だった。
    文学的な知識はなかったのでよくわからないところは多かったが、ルドンやギュスターブ・モローなどの画家の作品は知っていたので、その部分は世界観が映像でイメージできた。
    亀の話は嫌な記憶として残りそう。なんとも不思議な読後感。 

  • 読了までかなり時間がかかりましたが、やっと読み切ることができました。デカダンスの聖書とまで称される本書は暗鬱に燦然と輝く人工楽園。一寸の隙もない緻密で偏執的とも言える過剰な文章は、読み始めはなかなかついていけませんでしたが、途中から主人公デ・ゼッサントが必死に築き上げようとする「小宇宙」を一緒に眺めるような気持ちで読み通すことができました。「さかしま」は煌びやかな魔術的書物、神秘的な暗黒世界、デ・ゼッサントの病める精神そのもの。翻訳者である澁澤龍彦氏によれば、凝りに凝った原文の難解さ、辞書にも見当たらない奇異な単語の頻出、ラテン文学や神学関係の参考資料の乏しさ等により、かなり悪戦苦闘したそう。ユイスマンスの他の作品も気になります。

  • 引きこもり貴族が世界中から宝石とか花とか香水を買い漁って部屋にぶち撒けて遊ぶ、スーパーこどおじ小説。

  • 絶対最後まで読めない、と思って読み始めたら、意外な程に面白い。
    貴族ゼッサントの趣味を語るだけのお話なのに。何故か引き込まれて読める。
    このゼッサントの、好きな空間で自分が認めるモノだけを愛でて生きていきたい気持ちは分からなくもない。

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