見えない都市 (河出文庫)

制作 : Italo Calvino  米川 良夫 
  • 河出書房新社
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本棚登録 : 739
レビュー : 78
  • Amazon.co.jp ・本 (240ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462295

感想・レビュー・書評

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  • 戯れの中に秩序が芽生えている。

    マルコ・ポーロの見聞録として構成された
    この都市カタログは奇形児ばかり集められたような印象ではある。
    けれども、過剰も欠落もそこにはない。
    ありのままの都市が確かにある。

    水道管だけで成り立つ都市にしろ、
    郊外しかない都市にしろ、
    旅立つことしかできない都市にしろ、
    それらの描写は緻密だが、その合間には空虚しかない。
    語られたものがすべてで、都市は外側に屹立する。

    見えない都市であるのは、彼らが目を閉じているからだ。
    目を閉じ、身をおいているのだ、言葉の都市に。

    目を開けば、この日常こそが
    過剰と欠落の充溢であることが感じられるよう。

    もちろん、都市カタログとしても十分に楽しめます。
    あと、解説もなかなか気が利いている。

  • たくさん出てくる幻想都市の記述が抽象的すぎて、どうもピンとこなかった。けど、都市は頭の中にあるモノであるという発想が新鮮。
    話し手のマルコ・ポーロに興味が湧いた。

  • フビライ汗に、マルコ・ポーロが帝国内の55の「都市」の様子を報告するという形式の小説。

    「都市」の姿は、そこで生活する人間の内面の反映である。フビライはマルコ・ポーロのさまざまな「都市」についての報告を通じて、「帝国」の姿を理解しようとするが、それはそのまま人間の精神を理解しようとする試みでもある。

    しかし、この「都市」。一体何なのだろう? マルコ・ポーロが語る「都市」は、いずれも異形の街ばかりであるが、その光景はどこかでみたことがあるような気分にもさせられる。そう、それは「記憶」のなかにある「都市」なのだ。「記憶」のなかにある、いわばすべての都市の雛形とでも言えるような、「最初の都市」とは? マルコ・ポーロは言う。「それはただ例外、禁止事項、矛盾、撞着、非条理のみによってできあがった都市でございます。」

    フビライは、マルコ・ポーロの報告から、さまざまな「都市」を支配する秩序を理解しようとするが、そこにあるのは理解を拒む「無限の異形性と不調和」ばかりであり、結局手にするのは「無」でしかない。

    フビライが知ろうとしているもの。そこに、この小説に込めた筆者の思いが込められているように思われる。フビライは言う、「朕がその方の声を通じて耳傾けておるのは、都市が生存し続けてきた目に見えぬ理由、またそれゆえにおそらくは滅んでもなお再生するであろう理由なのだ」。

    そして、最後のマルコ・ポーロの言葉。印象深いので、そのまま引用してみます。
    「生あるものの地獄とは未来における何事かではございません。もしも地獄が一つでも存在するものでございますなら、それはすでに今ここに存在しているもの、われわれが毎日そこに住んでおり、またわれわれがともにいることによって形づくっているこの地獄でございます。」
    「これに苦しまずにいる方法は二つございます。第一のものは多くの人々には容易いものでございます。すなわち地獄を受け容れその一部となってそれが目に入らなくなるようになることでございます。」
    「第二は危険なものであり不断の注意と明敏さを要求いたします。すなわち地獄のただ中にあってなおだれが、また何が地獄ではないか努めて見分けられるようになり、それを永続させ、それに拡がりを与えることができるようになることでございます」

    55の「都市」の話のなかでは、筆者が「永続させ」「拡がりを与え」ようとしているものが描かれていると見ることができるのでしょう。ひとつひとつの話が2ページほどしかないので、お酒のおつまみをちょっとずつつまんでいるような感覚で読める小説でした (笑)。

  • ようやく積読解消…! 

    あとがき読んで構成というか小説構造が整った作品なんだなと知りましたが、

    マルコ・ポーロの静かな語りで、奇妙な都市をめぐるものだと楽しんで読んだりしてました。

  • マルコ・ポーロがフビライにさまざまな都市の話をするだけの物語。

    構成は幾何学的ともいえる凝り方をしている。基本的には、語り手マルコ・ポーロが話す物語の断片の組み合わせ。
    内容は幻想小説という形式に仮託した都市論。
    幻想小説ゆえに、空気の代わりに土がある都市や、破壊を遠ざけるために建設が続く都市など、不可思議な様相を呈した都市と出会うことができる。

  • 都市が主人公の幻想小説。膨張する都市、ぶら下がり都市、ぼんやりした都市などが独特の法則にしたがった順序で語られている。

  • 建築をする方法、都市をつくる方法を考える。
    こういう方法もあります。

  • いくつかの都市はいまもなお教訓的で示唆に富んでいるが、個人的には「連続都市」のような「ものの捉え方」にまつわる内容のものが面白いと思った。一文が一息で読むには長すぎて瞬時に理解できないことも多かったが、おおむね文章の美しさと多様な姿の都市の面白さに助けられて読み進めることができた。

  • 言葉の選び方が秀逸。

  • フビライ・ハンの部下のマルコ・ポーロが、皇帝の領土の街を観察していろいろ報告するよ!あれれ、その街しってる...それってきのう夢でみた街!その街はアレにでてきたアレじゃないっすか...?私の街、そこ!!そうだね、都市の性質、性格ってそういうもの! そもそも二人が会話してるのかすらあやしい、いろんなギミック搭載の入れ子式モザイク式幻想小説。飽きないおもちゃみたいに、しょっちゅう読みかえしたくなる。

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著者プロフィール

1923年キューバ生まれ。両親とともにイタリアに戻り、トリノ大学農学部に入学。43年、反ファシズム運動に参加、パルチザンとなる。47年、その体験を元に長篇『くもの巣の小道』を発表、ネオ・リアリズモ文学の傑作と称される。その前後から雑誌・機関誌に短篇を執筆し、49年短篇集『最後に鴉がやってくる』を刊行。エイナウディ社で編集に携わりつつ作品を発表、一作ごとに主題と方法を変えながら現代イタリア文学の最前線に立ち続ける。主な長篇に『まっぷたつの子爵』(52年)『木のぼり男爵』(57年)『不在の騎士』(59年)『見えない都市』(72年)『冬の夜ひとりの旅人が』(79年)などがある。85年没。

「2018年 『最後に鴉がやってくる』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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