世界の涯の物語 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (373ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462424

作品紹介・あらすじ

現代ファンタジーの源流であり、いまなお魔法のきらめきを失わない特別の作家ダンセイニの初期幻想短篇集二冊を完全収録。盗賊サンゴブリンドに下された過酷な運命。"絶無の都"へいたると予言された子供の旅。老人から買った魔法の窓が見せたもの。水夫が偶然知った海の秘密…。神話的な物語に、ユーモアに満ちたほら話が織りまぜられた珠玉の三十三篇。

感想・レビュー・書評

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  • 時々日本語が変で意味がとれないことがあった。
    翻訳者の日本語の文章力がイマイチだし、古めかしい単語を使いたがるところも読みにくい。
    幻想小説は地名や種族名が現実にないものなのだから、文章はしっかりわかりやすくないと何もわからないんだが。

    それでも短編なので、ダンセイニが描きたかった世界を想像した。
    「彼はいかにして予言の告げたごとく〈絶無の都〉へいたったか」が好きだった。
    ピポグリフに乗った少年が絶壁を飛び越えてみた風景の美しさと醜さが感じられてよかった。

  • 目次
    ・ケンタウロスの花嫁
    ・宝石屋サンゴブリンド、並びに彼を見舞った凶運にまつわる悲惨な物語
    ・スフィンクスの館
    ・三人の文士に降りかかった有り得べき冒険
    ・偶像崇拝者ポンボの身の程知らずな願い
    ・ボンバシャーナの戦利品
    ・ミス・カビッジと伝説(ロマンス)の国のドラゴン
    ・女王の涙をもとめて
    ・ギベリン族の宝蔵
    ・ナス氏とノール族の知恵比べ
    ・彼はいかにして予言の告げた如く<絶無の都>へいたったのか
    ・トーマス・シャップ氏の戴冠式
    ・チュー・ブとシ―ミッシュ
    ・驚異の窓
    ・ロンドンの話
    ・食卓の十三人
    ・マリントン・ムーアの都
    ・なぜ牛乳屋は夜明けに気づいたときに戦慄き(おののき)震えたのか
    ・黒衣の邪な老婆
    ・強情な目をした鳥
    ・老門番の話
    ・ロマの略奪
    ・海の秘密
    ・アリが煤色の地(ブラック・カントリー)を訪れた顚末
    ・不幸交換商会
    ・陸と海の物語
    ・赤道の話
    ・九死に一生
    ・望楼
    ・こうしてプラッシュ・グーは〈誰も行こうとしない国〉にやってきた
    ・チェスの達人になった三人の水夫の話
    ・流浪者クラブ
    ・三つの悪魔のジョーク

    ロード・ダンセイニって、ゴリゴリのゴシック小説を書く作家だと思っていました。
    誰と勘違いしていたんだろう。
    不条理でダークなファンタジー、つまり稲垣足穂やイタロ・カルヴィーノのような作品でした。
    解説を読むと、稲垣足穂は本当にロード・ダンセイニから強い影響を受けたようです。

    ひとつひとつの作品は短くて、伏線もなければおちも特にありません。
    『驚異の窓』までの前半が第一章の『驚異の書』、『ロンドンの話』からの後半は第二章の『驚異の物語』となっています。
    ざっくりとした違いは、前半が人間以外の物が多く住む世界の涯を舞台にした作品が多く、後半は人間世界の中でのちょっとした異世界という感じです。
    でもそれは全く別の位相ではなく、ゆるく繋がっていて、世界はとてつもなく大きくて、人間の手が触れてはいけないところもたくさんある、というお話。

    だからほぼほぼハッピーエンドにはなりません。
    『ギベリン族の宝蔵』でははっきり書いてあります。
    ”したがって、この物語はめでたしめでたしでは終わらないのである。”
    合掌。

  • 『驚異の書』『驚異の物語』を合わせた短編集。ここじゃない場所に連れて行ってくれる力がまさに驚異。

    ダンセイニの物語は、小学生のころの読書体験に近い感覚を与えてくれる。脳に読書用の領域があるとして、その旧皮質寄りの部分が発火する感じだ。読めているかどうかなどまったく気にせず、テクストが自分の中に響かせるこだまも意識しないでひたすら読んでいた時代の読み。書かれていることは別世界のごく一部であって、「向こう側」にはもっと広い世界があってさまざまなものが存在しているという感覚。なつかしいと同時に、今もなおそういう読み方をさせてくれる本があることに幸せになった。ときどきはここに帰ってきたい。

    文庫なのにシームの挿絵がたくさん収録されているのもうれしい。「向こう側」への想像がいっそう広がる。

  •  どことなくラヴクラフトっぽいと思ったらラヴクラフトがフォロワーだった。「なぜ牛乳屋は夜明けに気づいたときに戦慄き震えたか」とか、雰囲気が似てる。

     幻想小説に飢えて読んだけどWW1以前と以後では幻想小説の在り方が変わっていると顕著に感じる。

  • 本来の意味での、幻視する大人のための童話集って感じだ…
    しかしシドニー・H・シームの挿絵がどれも凄い…闇のおとぎ話の世界だ…

  • 2004-05-00

  • w

  • ファンタジーの世界では名高い作家だが初読になる。結構前に読み始めたのだが時間がかかってしまった。コンパクトながら詳しい解説にもあるようにラヴクラフトやアーサー・C・クラークにも影響を与えた偉大な作家のため、やや重めに扱われたきらいがあり、そのユーモアの面をより広く紹介したかったとの訳者の一人中野善夫氏が書いておられ、皮肉だったり意外なオチだったりそういった作品が目立つ。ただその中でも好みとしては、妄想の中に逃げていく主人公が現代的な「トーマス・シャップ氏の戴冠式」、水晶の力に頼ってチェスにはまるボンクラ3人組の「チェスの達人になった三人の水夫の話」、悪魔の3つのお願いが元と考えられる笑死のジョークについてのユーモア小説「三つの悪魔のジョーク」などより日常性の
    強いものの方がより好み。一方壮大な冒険譚の一部の様な「陸と海の物語」もまた魅力的だった。

  • 盗賊や海賊や泥棒のたぐいのならず者主人公率が高い、ほら話的短編集。『女王の涙を求めて』が好き。

    (訳者あとがきより)
    オリジナル短編集に掲載されたシドニー・H・シーム(Sidney H. Sime)(1867-1942)の挿し絵をすべて収録。
    ダンセイニとシームは『ぺガーナの神々』からの切っても切れない関係であり、なかには挿し絵が先にあって、それを見たダンセイニが想像力を喚起されて作品を書いたものもあるという。

  • 「指輪物語」で旅にでるところまで行き着かなかった以来、ドラゴン、魔法使い、騎士、ライオンもどき、丸メガネ小僧の出る俗にいう「ファンタジー」には寄り付かないことにしている。で、ダンセイニも、ラブクラフト、足穂への影響ということで気になりつつ避けていたわけだが、家にあったので読んでみると・・・、10ページに満たない小説?叙事詩?散文詩?によるいろいろな場所にある世界の涯の物語は、ぐるぐるぐると想像を喚起させる。「なぜ、牛乳屋(ミルクマン)は夜明けに気づいたときに戦慄(おのの)き震えたのか」を知りたいなら読むべき。
    ファンタジーというより、ラファティとかの人をくったような法螺話の雰囲気。山尾悠子もこの流れ。
    ぜひ、ダンセイニに「指輪物語」を5ページぐらいでまとめてもらいたいもの。

    第一次世界中の1916年に書かれたアメリカ版『驚異の物語』の序文の言葉が胸を打つ。(引用参照)

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著者プロフィール

本名はエドワード・ジョン・モートン・ドラックス・プランケット(1878‐1957)で、第十八代ダンセイニ城主であることを表すダンセイニ卿の名で幻想小説、戯曲、詩、評論など多くの著作を発表した。軍人、旅行家、狩猟家、チェスの名手という多才なアイルランド貴族だった。『ペガーナの神々』をはじめとする数々の著作により、その後のファンタジイ作家たちに多大な影響を与えた。

「2015年 『ウィスキー&ジョーキンズ』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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