塵よりよみがえり (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (264ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309462578

感想・レビュー・書評

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  • この作品の空気感、ずば抜けて好き。

    人間ではないある一族に育てられている十歳の少年ティモシーを中心に、

    短編形式で話は語られる。

    家族のキャラクターが素敵。

    姉のような存在は、魂を飛ばせる美しい眠り姫のような少女セシー。

    おばあちゃんは、エジプトのミイラ。

    いつもはしゃぎすぎる従兄弟たち。

    個性的な家族の中で、ティモシーは走り回り、人間としての自分の役割を

    まっとうしながら生きている。



    とくに、セシーの話が好き。

    少女の特技は、魂を飛ばして、他人の目や体で世界を見ること。

    心が世界中を駆け抜けていく表現が素晴らしい。

    そして、読むにつれ、その世界観になれていくのが不思議。

    そんなセシーが恋をしたらどうなるのか。

    たった数ページにしかその恋は描かれていないが、

    セシーとあの青年の掛け合いは、忘れられないものがある。

  • 「ブラッドベリだー」と、書店で即買いしてしまいました。
    読んだ感想も、「ああ、ブラッドベリだー」でした。
    ブラッドベリといえば十月ですが、この話はまさしく十月の民の物語。

    五十五年の歳月を経て完成された、短編を数珠つなぎにした物語。
    歳月って不思議ですね。往年の短編に漂うどこかしら暗く埃っぽい、タールのような闇の雰囲気がこの物語では薄れているような気がします。もっと陽晒しにされた古びた洋書の雰囲気。
    やさしい感じが表に出た分、なんとなく光の見えるラスト。

  • 小高い丘の上に建つ屋敷に暮らす人ではない何かの老夫婦に拾われた少年ティモシーが、その何かの一族と別れるまでに過ごした最後の時間と回想を描く。比喩を多用した独特の文体で、読み慣れるのに少し時間がかかった。
    どうやら、この一族は、幽霊の存在を信じ、畏れる人間の「信心」によって存在が保たれているようで、数千年の時代を生きることも、死ぬこともなく長らえてきたが、いよいよ信心を持たない人間が増えたことによって、住める場所が少なくなっている。「ひいが千回つくおばあちゃん」は、自分たちのため、一族について書き、語り伝えてくれる人間として、屋敷に住む唯一の人間、10歳のティモシーに、一族の歴史を語り始める。
    そうした経緯を考えると、物語の最後、屋敷が焼失してから、ティモシーが、「ひいが千回つくおばあちゃん」(ネフと呼ばれるミイラ)を博物館に持っていき、「ここが最も安全な場所」だと言い、「1日の1回、話しかけてほしい」と学芸員に頼む際、自分のことを本当に信じてくれるかどうかを繰り返し確認するシーンなど、ティモシーと一族の関係を象徴していて、好きである。はじめ、自分も一族と同じように、生きてもおらず、死んでもいない者になりたいと言うティモシーが、屋敷が焼け落ちるにあたって、「ずっとみんなを見てきて、もしかしたら、人々がいつも生きてきたのとまったく同じように生きたいのかもしれないと思ったんだ」と語るのに対して、ネフが背中を押すシーンとかも好きである。

    彼らは、知られすぎてしまっても、誰からも知られなくなってしまっても、消えてしまう。それゆえに、断片的に語られる、一人一人の一族の物語には、どことなく悲哀がある。
    一番切なさがあったのは、オリエント急行に乗る「不気味な客」である。信心のない人間たちに囲まれることで、今にも死にそうな「不気味な客」は、事情を読み取った看護師の機転によって、一命を取り留める。歴史的に幽霊を描いた小説を朗読したり、子どもが、幽霊を信じる?、と聞かれて、信じると大きな声で返事をしたりするのを聞き、客は元気になっていく。しかし、客が元気になったとき、それに手を貸した看護師は、死んでしまう。霊と人間の関係を考えさせられた。
    ティモシーの存在は、物語の中でも、特別である。彼だけは、人間であるまま、彼らを知り、彼らを語り伝えることができる。

  • 再読。
    詩情という点で訳文がうーんな感じだけど、アイナーおじさんの男前っぷりとシシー(セシー)の我儘美少女っぷりで星2つ。

  • あまり読み慣れないジャンルというのもあって正直よくわからなくて、読んでいる途中でどこに着地するのか不安になった。しかし、いざ読み終わると美しい話だったと妙に印象に残った。表紙の絵も素敵。

  • ブラッドベリは最初に好きになったSF作家で、詩的で美しくて、物悲しいところが、思春期の心に響いた。
    これはファンタジーで、出来もいいときいていたので読んでみた。
    なんだか読みにくい。訳のせいかな。詩的な文章がこなれてない。
    小笠原豊樹は自身が詩人だったからか、本当にすばらしい訳だったけど、これは今一つ。
    読みなれていない人は挫折しそう。英語の得意な人は原書を読んだ方がいいかも。
    でもまあ、ブラッドベリの書こうとしていることは伝わったので、頑張って読んだ。
    最後は、ブラッドベリらしいせつなさと美しさに、なんだか懐かしい気持ちになった。
    しかし、もう少し読み易い訳じゃないと、ブラッドベリファン以外には勧められない。

  • ブラッドベリはいつ読んでもやっぱSFじゃなくて叙情詩

  • 新聞で亡くなったことを知って図書館で借りてきた。ミイラのおばあちゃん、意識を飛ばせる魔女、普通の男の子が出てくるお話。よくわからないところもあったけど終盤は良かった。構想に数十年かかったという大作。2012/382

  • さとるさんに借りた本。
    めちゃくちゃ好みで、むしろびっくりした!笑
    物語のつかみどころのなさといい、品のいいユーモアといい、なにより言葉が隅々まで美しい。
    今まで読んだどんな詩集より美しいかもしれないと思った。
    言い回しが絶妙すぎてうっとりする。
    ブラッドベリってSFよりなのかと思ってた。。。
    少なくともこれはおとぎ話に近いかな。
    10月の一族って良いね。
    あえてはっきり名指ししないセンスがとても好きだ。
    後で自分でも買おうっと。

  • [ 内容 ]
    小高い丘に建つ一軒の屋敷。
    住む者は、ミイラのおばあちゃん、心を自由に飛ばす魔女セシー、鏡に映らない夫婦、たったひとりの人間の子ティモシー。
    いまここで、魔力をもつ一族の集会がはじまる。
    そして、何かが変わる日もまた近い…ファンタジーの巨匠が五十五年の歳月をかけて完成させた、とても特別な物語。

    [ 目次 ]


    [ 問題提起 ]


    [ 結論 ]


    [ コメント ]


    [ 読了した日 ]

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著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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