古代文明と気候大変動: 人類の運命を変えた二万年史 (河出文庫 フ 8-1)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (397ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463070

作品紹介・あらすじ

地球は一万五〇〇〇年前、氷河時代を終えて温暖化を迎え、人類は"長い夏"に育まれてきた。絶えず変動する気候に翻弄されながら、古代文明はいかにして生まれ、滅びたか。気候学の最新成果を駆使し、その興亡史を鮮やかに描き出すとともに、洪水や干魃などの大災害に対する現代文明の脆弱さに警鐘を鳴らす、壮大な人類史。

感想・レビュー・書評

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  • 2万年の昔から数えれば、一番人間を殺してきたのは気候かもしれない。
    メソポタミアも、シュメールも、アッカドも、ミュケナイも、ヒッタイトも、ケルトも、ローマも、マヤもインカも。
    全ての過去の文明は気候にもてあそばれ、滅ぼされたといっても過言ではない。
    干ばつや寒冷化による生活の破壊は一地域の飢餓にとどまらず、民族を移動させ、略奪・侵略・征服を促す。
    そしてその波は連鎖的に広がり、世界のかたちを大きく変えていく。

    南西アジアを覆った1万1000年前からの1000年にわたる干ばつ。
    主にヨーロッパにて前6200年から400年間続いたミニ氷河時代。
    前5600年、かつては湖であった黒海が誕生することとなった大洪水。
    前3800年、地軸の傾きの変化により1000年以上にわたる乾燥化。
    前3200年から前3000年までの急激な乾燥化と寒冷化。
    紀元前2200年ごろ、火山の噴火により278年にわたる干ばつ。
    紀元前1200年、1年で地中海地方の勢力図を大きく変えることになった大干ばつ。
    そして19世紀にも、熱帯地方で2000万人以上の農民が干ばつから派生した事象で死亡した。

    斯様な激動の1万5千年間は、過去40万年間の中で見れば最も気候的に安定した時代であり、
    中でもこの100~200年間は、稀に見る気候に恵まれた時代であった。
    もちろんこんな幸福がこの後も続く保証はない。
    気候変動の原因は種々あるが、明日の気温低下が次の氷河期に繋がったとしてもなんの不思議もない。

    過去の人類は、養える人数を減らし、危険な移動を繰り返すことでなんとか少数を生き残らせることができた。
    現代社会は100年に1度の災害に対応可能なように制度・機構を準備することはできたが、
    千年、万年に一度の異常に対しては何もできない。

    明日の食料・燃料が人口の10分の1しかないとわかってしまったら、人は、国はどうなるか。
    物語の中でしか想像されてこなかった大きな犠牲に直面するときは、いつか必ず来る。

  • 人類史だけ見ていては気がつかないゲルマン人の大移動やら、ヒッタイトやマヤ文明の突然の崩壊、そうしたものが地球規模の気候変動で引き起こされたというのはとても興味深い。
    地球が温暖化してくると、氷河が溶け出してメキシコ湾流を止め、偏西風を凪させるため、寒冷化が進むというバランスが凄まじい。人間は無力だなと感じてしまう。とはいえ、二酸化炭素の影響も無視できないように思われる。

  • 地球は一万五〇〇〇年前、氷河時代を終えて温暖化を迎え、人類は“長い夏”に育まれてきた。絶えず変動する気候に翻弄されながら、古代文明はいかにして生まれ、滅びたか。気候学の最新成果を駆使し、その興亡史を鮮やかに描き出すとともに、洪水や干魃などの大災害に対する現代文明の脆弱さに警鐘を鳴らす

  • この書籍では、古代文明と地球規模の気候の変動の関係からその後など書かれています。

  • 2008年(底本05年)刊行。著者はカリフォルニア大学サンタ・バーバラ校人類学名誉教授。環境考古学の観点から人類史を纏め、現代社会への警鐘をも加味した書を刊行し続ける著者。本書は、旧石器時代を中核に、エジプト、メソポタミア(シュメールからアッカド王朝も)、ローマ帝国とケルト人、中南米のマヤ文明とプレ・インカたるティワナク文明等、広範囲に叙述。エジプト古中新の各王国の大まかな変遷、あるいはアッカド王朝成立過程を環境面で切り取る等、無味乾燥になりがちな古代史もなかなか興味をそそる。が、やはり旧石器時代。
    ジャレド・ダイヤモンドが森林保全を高らかに唄う一方、B.フェイガンは、生活圏における人類の増加(人口密度の稠密化)を問題にするように感じた。大きく一般化すれば(多少の地域・時代的差異はあるが)、植物性食物の経年的利用の可能(ドングリ等の堅果類から小麦等の穀物へ)→定住化と人口増→都市の形成→環境変動への脆弱化→乾燥(要因は多々)→都市の巨大化→支えきれない乾燥→崩壊へ、というシナリオが其処彼処で見られたということを指摘していく。「増えすぎた人口を…移民させる」で始まるフィクションが現実に必要とも思えそう。
    本書に限らず、欧米の最近のサイエンス・ドキュメンタリーで地球温暖化が起こっていないことを前提とする番組は見ない。本書も人為的な温室効果ガス(CO₂よりもメタン)増大を環境負荷の大きな要因とし、温暖化→各地域における環境変動偏差の増大が、人類に与える影響に警鐘を鳴らす。温暖化が生じていない等の言説が一部あったが、グリーンランド氷床の消滅→大西洋深層海ベルトコンベアーの機能不全の懸念に想いを致せば、安穏な言い方が良くもできたものだ、とも。
    ところで、本書にもあるようにメタンの温室効果が絶大であり、この放出が進んでいるとの情報がある(記憶違いかもしれないが、温暖化によるシベリア永久凍土の解凍により)。そもそも、かつて地球で起きた大量絶滅の要因として大気中のメタン濃度の増大があったと聞く一方、メタンを主成分とするメタンハイドレードの採掘を、日本の未来のE源として手放しで礼賛し推奨する動きがあるとも。手放しではなく、かかる環境負荷の懸念を払拭する対応策等、関連情報の開示の必要性を強く思う所以。

  • 新書文庫

  • 古代文明に大いに影響を与えた気候変動の様子がとてもわかりやすく書かれている。単なる歴史としても、古代の様子を明らかにした技術解説としても、昔々の物語としても読めて面白い。
    ネイティブ・アメリカンの口承史たる「一万年の旅路」にあった、ベーリング海横断のくだりがどうも腑に落ちなかったが、氷河期には海面降下していて陸続きだったとの話は、長年の疑問が氷解した。
    年表が便利。

  • 11/24読了

  •  近年、地球温暖化が一層の深刻を招き、温室効果ガスについての情報も広まっていったが、この本を読んでいかに地球が気温の変化を受けて現代に至るかがよくわかった。毎日を当たり前のように過ごしているが、20世紀から現在にかけて、地球の歴史から見て比較的気温は安定しているのである。我々の祖先は、過去7〜8万年の間に少なくとも9回の氷期をくぐり抜けてきたことが今日まで判明している。
     よって、現在の温暖化は地球の気候変動のはてない自然のサイクルの一部なのだと主張する人もいるそうだが、著者は過去150年間の地球温暖化は、過去1000年におけるどの温暖化の時代よりも長期に渡っており、それは一部には我々人類の活動ゆえに引き起こされたものだと考えている。人間と自然環境および短期の気候変動との関係は、常に流動的であったのだ。
     気候の変化が寒暖、乾湿をくり返して大きく変化してきた間も、人類はどこかで生きていた。その間ほぼずっと、気候が悪化すれば、住みやすい場所を求めて移動し、よい時代が戻って人口が増えれば、新たな場所に移っていくという暮らしが続いた。しかし、およそ12000年前に農耕が始まって以来、やがて一つの土地に定住するようになった。こうして文明が始まるのだが、増え続けた人口がその土地の環境収容力を超える日がやってくる。そこで大きく気候が変動すると、もはや対応しきれず、多くの人は死に、生き残った者は各地へ離散していくのであった。
     気候の変動は、人類が温室効果ガスを増やそうと増やすまいと、いずれ必ず起こる。人間は自然とともに生きるしかないことを、より多くの人間が理解することがまず大切なのである。

  • 『ぼくらの頭脳の鍛え方』
    書斎の本棚から百冊(立花隆選)10
    地球科学
    文明がこれほど気候と密接に連動していたとは。文明の未来はどうなるか。

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著者プロフィール

イギリス生まれ。カリフォルニア大学サンタ・バーバラ校の人類学名誉教授。考古学関連の著作が多数あり。『歴史を変えた気候大変動』、『千年前の人類を襲った大温暖化』、『海を渡った人類の遥かな歴史』など。

「2023年 『歴史を変えた気候大変動』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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