ハローサマー、グッドバイ (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.87
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本棚登録 : 1277
感想 : 133
  • Amazon.co.jp ・本 (384ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463087

作品紹介・あらすじ

夏休暇をすごすため、政府高官の息子ドローヴは港町パラークシを訪れ、宿屋の少女ブラウンアイズと念願の再会をはたす。粘流が到来し、戦争の影がしだいに町を覆いゆくなか、愛を深める少年と少女。だが壮大な機密計画がふたりを分かつ…少年の忘れえぬひと夏を描いた、SF史上屈指の青春恋愛小説、待望の完全新訳版。

感想・レビュー・書評

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  • 本書は1975年に執筆されたSF青春ストーリーの古典的名作。
    本書を知ったのは、読書好きな人には有名な作品である「文学少年少女あるある」を面白可笑しく描いたギャグ漫画『バーナード嬢曰く1巻』で取り上げられていたからだ。

    『バーナード嬢曰く』は“名著礼賛ギャグ漫画”とも言われており、その中の主要登場人物であり大のSFマニアの神林しおり嬢が本書『ハローサマー、グッドバイ』を「SF史上屈指の青春恋愛小説」として激推しているのだ。

    本書は、ある星に住む人間と同じ姿かたちをした少年少女たちの恋愛を主題にした小説なのだが、SFとはいうものの、地球以外の星を舞台にしたということと、ちょっと変わった動物がでてくること、そして『寒さ』が悪の権化であるということを除けば、地球上の思春期を迎えた少年少女の恋愛小説と何ら変わりない。

    そして読み進むにつれこのまま恋愛の話で終わるのかと思いきやラスト50ページからの怒涛の展開には度肝を抜かれる。
    表紙のほのぼのとした可愛らしい女の子のイラストからは想像できない、まったくもって硬派な小説になっていくのだ。

    これはSFファンならずとも、まさに一読の価値ありだ。神林しおり嬢が激推しするのもうなずける。
    しかも、この本には著者が本書『ハローサマー、グッドバイ』から30年以上後に著した『パラークシの記憶』という続編も存在する。
    この続編もいずれ読んでみたい。

    と言う訳で、『バーナード嬢曰く』に取り上げられる本には、名作、古典が多く、読書通を自称する人たちにはちょっと読んでもらいたい漫画である。

    ・・・って、このレビュー『ハローサマー、グッドバイ』のレビューというよりも『バーナード嬢曰く』のレビューになってるんじゃね?

    • やまさん
      各位

      昨年ブクロクに登録した本の中からベスト7を選びました。
      なお、平成31(2019)年3月27日に読み終わった本からブクロクで管...
      各位

      昨年ブクロクに登録した本の中からベスト7を選びました。
      なお、平成31(2019)年3月27日に読み終わった本からブクロクで管理するようにしています。
      ① なんとなく・青空 / 工藤直子 / 詩 / 本 /読了日: 2019-12-11
      ② 螢草 / 葉室麟 / 本 / 読了日: 2019-12-16
      ③ あなたのためなら 藍千堂菓子噺 / 田牧大和 / 本 /読了日: 2019-04-10
      ④ 甘いもんでもおひとつ 藍千堂菓子噺 / 田牧大和 / 本 / 読了日: 2019-05-04
      ⑤ あきない世傳 金と銀(七) 碧流篇 / 田郁 / 本 /読了日: 2019-09-14
      ⑥ てらこや青義堂 師匠、走る / 今村翔吾 / 本 / 読了日: 2019-08-27
      ⑦ ひかる風: 日本橋牡丹堂 菓子ばなし(四)  / 中島久枝 / 本 / 読了日: 2019-07-23
      ※もしよろしければ、皆様の昨年感想を書かれたものの中からベストの順位を教えて頂けたら嬉しいです。

      やま
      2020/02/07
    • やまさん
      kazzu008さん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      松岡圭祐さんの「高校事変シリーズ」の本を書店で字の大きさを確認...
      kazzu008さん
      こんにちは。
      コメントありがとうございます。
      松岡圭祐さんの「高校事変シリーズ」の本を書店で字の大きさを確認してみます。
      読める字の大きさであれば、図書館に予約します。
      有難う御座います。
      やま
      2020/02/08
  • とある惑星を舞台とした、思春期の少年の冒険&恋愛物語。1975年の作品。

    この惑星には、寒さに異常な恐怖を覚える人々が住んでいる(会話の中にも、罵り言葉 "フリージング" が頻発する)。毎年夏には、海水が蒸発して水位が下がり、ドロドロとなった海水が北極から南極へと流れる粘流(グルーム)現象が起こる。人の他には、人の心を読み、人に寄り添い、ピンチには温かく手を差しのべる賢い野獣ロリンや、海に住む魔物アイスデビル、グルーム期の海の貪欲なお掃除屋グルームライダーなどが棲息する。二つの国(エルト、アスタ)があって、目下交戦中。

    エルトの首都(アリカ)から、夏季休暇を使って両親と共に海辺の町(バラークシ)の別荘を訪れたドローヴ少年。父親(バート)は政府の役人で、バラークシの新缶詰工場(戦時の食糧供給基地)建設に関わり、とても忙しい。反抗期のドローヴ少年は、昨年夏に出会った意中の少女ブラウンアイズ(居酒屋の娘)、傲慢で小心なウルフ(役人の息子)、高慢な少女リボン(漁師の娘)とその弟のスクウィントの四人で町周辺や海を散策する日々。役人と地元民の軋轢、敵国のスパイ騒動、スクウィント失踪事件や輸送船の座礁転覆、殺人事件など事件・事故に次々遭遇し、引っ込み思案だったドローヴは一夏ですっかり逞しく成長し、また、ブラウンアイズとの恋も成就させる、という青春ストーリーなのだが…。

    ラスト近くで、エゴの塊のような秘密計画が暴露され、ドローヴとブラウンアイズは引き裂かれてしまい、世界は極寒期を迎える、といういきなりSF色の濃い展開に。本作は、やはり恋愛小説というよりSF小説だな。

    恋愛、冒険、ミステリー,そしてSFの要素が散りばめられていて、読み応えのある作品だった。スロースタートな序盤を乗りきれば、展開が速くなり、ドンドン引き込まれていく。好きあったブラウンアイズとの仲を引き裂かれて基地に半ば幽閉されたドローヴが、おとなしく基地に留まり続けたところがやや不満ではある。

  • 読み終えて改めてタイトルを見返すと、また背筋がゾクゾク。
    可愛らしい少女の表紙絵からは想像だにしなかった展開と結末にもう虜。久々に眠気に打ち勝って徹夜で読み耽ってしまった作品。


    まず冒頭まえがきの〈作者より〉から既に面白いし、これが紹介するのに最適。
    「これは恋愛小説であり、戦争小説であり、SF小説であり、さらにもっとほかの多くのものでもある。」
    これがまた本当にその通りで、これだけたらふく盛り込んでいながら全てが完成されていて、青春小説としても身分違いの恋とか少年少女らの微妙な関係性とかが漂う夏の海の気配とも合わさって実にもどかしくも爽やかに描かれる。グルームワタリ鳥の光景だけで夏を感じられる程にのめり込んでしまった空気感にもう夢中さ。
    対極的に、少年少女らに忍び寄る戦争の気配やら大人たちが隠している’秘密’についてとかを察知するに及び、物語は一種のヒーロー譚のような様相をも纏い出す。
    が、終盤に差し掛かってからの転調が最高にキマっている。あれよという間に世界が一変し、それまでの空気がほぼ全て入れ換わり、からの、衝撃のラストで〆!本当にこの終盤の変わり身は凄い。「この夏のあと、ぼくたちはだれひとり、前と同じじゃなくなってる」(p283)ってさり気なさ過ぎる一文が今思えば恐ろしい。
    いや、変わらなかったのは少なくとも二人いるのか。そうだったらいいな。

    個人的にはオチについて物凄く語り合いたい!
    「俺はこう思ったんだけど、どう?」みたいのをやりたい!
    けど自分なりの解釈に満足してるしそれはそれでその方が良いのか。

    …p368の10行目から13行目の3行がアレよね?



    7刷
    2022.8.14

  • #日本SF読者クラブ 青春恋愛SF小説の傑作と言われているらしい。自分としては、青春小説としての印象が強い。ラストの「大どんでん返し」。これ意味が分からなかった人もいるのでは。

  • SF青春ラブストーリーの名作。架空の惑星を舞台にしているため、独特の固有名詞が多く、ガワはとっつきにくさがあるものの、その中身は極めて真っ当な少年少女のラブストーリーである。主人公ドローヴのやや大人びた語りを通して伝わってくる彼女、ブラウンアイズの愛らしさと二人の関係性は非常に甘酢っぱい。また口の悪い姉弟の、姉である美少女リボンとの三角関係や、役員の父を鼻にかけた高慢かつ小物であるウルフなど、他のキャラクターも生き生きと筆致で描かれている。特にヒロインであるブラウンアイズの身振りや仕草はどれも細やかで、一途な想いを見せたり、リボンに対する嫉妬の感情を垣間見せたりと、その愛らしい仕草を例に挙げると枚挙にいとまがない。その関係性の進展ぶりは読んでいるこちらが赤面するほどである。そんな子供時代の淡い恋物語の背後では、隣国アスタとの戦争の影響が徐々に忍び寄っており、粘流の訪れに従って不穏さが増していく。ドローヴとブラウンアイズ。役人の息子と酒場の娘という身分違いの恋が、そのまま議会の役人たちと町の人間との溝の深さに繋がっており、甘い恋に反して描かれている社会はハードの一語である。クライマックスはまさに怒涛の展開であり、明かされたこの惑星の真実と、緩やかな悲劇の始まり、変わっていく町の人々などを見るのは非常にキツく、ページを繰るのも心苦しかった。タイトルの意味も明らかになったため、てっきりそれが仕込んでいた大きなネタかと思いきや、この小説の真骨頂はラスト数ページに込められている。この壮大なオチはまさにSFならではの大どんでん返しであり、周到に張られた伏線と綿密に寝られた世界観設定の賜物である。人間によく似てはいるが、あくまで登場人物たちは人間型の異星人であり、ここは異星の文明である。それをあらためて再認識するとともに、オチが非常に理にかなったものであることには文字通り舌を巻いた。傑作である。

  • 夏休み。
    きっと、私たちにもこんな、甘酸っぱい恋愛の記憶と冒険のスリルと理不尽な社会に対する反発で胸がいっぱいだった季節があった。
    うそ、なかった。

  • 夏休みに読みたい小説、として紹介できる本を探していた時に評判が良い本書を発見しました。
    タイトルに「夏」とあること、SF小説でありながら少年の恋愛や成長をテーマとした比較的ライトな小説であることを知り、手に取りました。

    政府高官の息子であるドローヴは、戦争中という特殊な状況かでありながら父の権威による恩恵を受けています。夏には別荘地へ家族旅行をする余裕すらあるのです(もっとも、周囲とは違うのだ、という両親の姿勢に反感を抱いてはいるのですが)。
    しかし、ドローヴは夏の旅行を楽しみにしていました。昨年の夏、別荘のある港町パラーシクで出会った少女ブラウンアイズと再開できるかもしれない、と淡い期待を膨らませていたからです。

    親の庇護から抜け出たいとねがう少年の葛藤、仲間うちでの立ち位置をめぐる諍い、そして恋。
    舞台は地球とは異なる「異星」であり、SFならではの舞台設定があるものの、作品全体を通して描かれるのは少年主人公の成長ですから、YA文学としても多くの生徒に薦められる本だと感じました。

    個人的には、結末に「あまりに救いがなさすぎる」とも感じたのですが、このような結末以外には考えられない(ハッピーエンドになったらなったで、「ご都合主義」と思う気もします)作品ですし、「名作」として読み継がれていることに納得できる1冊でした。

  • 戦争で次第に世間がギスギスしていくなか、少年ドローヴは父母と夏の避暑地へと赴く。
    そこで初恋の少女と再会しお互いの気持ちを確認するが…。

    階級社会と戦争係争中での不穏な大人たちの動き。
    地球ではない別の星の生態系。
    凍える冷たさの中から忍び寄る狂気。
    寒さをおそれる人々の独特なスラング。

    ☆高校生くらいからかな。ジュヴナイル小説。主人公は中々癖がある
    リボンには幸せになって欲しかった。ヒロインよりも応援してた。
    ☆大人たちの幸せはなんだったのかな。
    ☆ロリンに包まれたい
    ☆続編読んでみよう

  • この表紙とタイトル、裏表紙のあらすじから、少年のひと夏の恋と成長を描いた話だと思っていました。
    SFという部分についてはタイムスリップかなぁと安易に想像していたのですが、見事に裏切られました。
    否、確かに途中までは少年のよくあるバカンスでの恋物語でした。それが後半の後半に様相が変わり、一気にSF色が強くなりました。そして確かに“どんでん返し”の結末でした。

     ただ、主人公のドローヴという少年の思春期によくあるであろう親や権力への反発は理解出来ますが、いずれ彼が成長して反発の対象であった親や権力に対して何らかの折り合いをつけていくだろうと思っていたので、ドローヴが大して変わることなく物語が終わってしまったのは少し残念に思いました。

    しかし、多少モヤモヤした感想はあるにしても、伏線のはり方、登場人物のセリフに込められた意味など、結末を知ってから再読するとまた違った読み方が出来そうな気がします。確かにSF恋愛小説の傑作かもしれません。
    面白かったです。

  • バーナード嬢曰く。に影響されて買った本。
    訳はちょっと読みにくい(直訳調)ところもあったが、丁寧に訳してくれているという印象。あとがきを見て訳者さんの苦労を知って、素直に尊敬した。
    途中までは☆3.5くらいの評価だったのだが、終盤で一気に☆5に。
    最初はこれジャンルSF? 異星設定以外、ファンタジーと言われた方がしっくりくるなあと首を捻って読んでいたのだが、うん、まぎれもなくSFでした。
    ……どうでもいいが、表紙の女の子ってブラウンアイズ? 彼女は海辺の町に育った健康的に日焼けした女の子ってイメージなのだが。本文中にも褐色の肌、みたいな表現があったような。

    この星に住む人間が寒さに発狂するほどの恐怖を抱いていて、フリーザー、フリージング(凍るほど~だ)という言葉が汚い言葉(英語でいうfu〇k)になっているという設定には目を瞠った。変った動植物の存在よりもこういう文化の設定が、この小説が異星の物語であり主人公たちが地球人ではないということを印象付けてくれたように思う。

    主人公は思春期反抗期少年って感じでひねくれている。自分の親を筆頭に、周囲の人たち(主に大人)を見下している。それは終盤まで変わらないのだけれど、読者目線で見ると、そんなに酷い人たちかなあ、と同情したくなる。特に主人公の父親とか。そりゃ権威主義的なところはあるけど、彼は彼なりに必死で、間違いなく家族を愛していたと思う。両親の愛情が最後まで主人公に伝わらなかったのは残念。

    全体的に、善悪がはっきり分かれているタイプの物語ではないのでいろいろ考えさせられる。たとえば主人公はパラークシの人々側に立っていて、議会・役人側を敵視している。頼んでもいないのに勝手に戦争を始めて自分たちに不自由を強いる議会を憎悪するのは当然なのだが、議会(国全体)から見ると申し訳ないとは思うが国を守るためには仕方ないんだ受け入れてくれ、と言うのは当然だろう。このあたり、パラークシが海辺の町だということも相まって日本の某問題と重なった。解決しようのない溝だ。
    (……まあ、終盤に差し掛かるまでは、の話だが)

    最後に。ロリンに会ってみたい。ロリンは主人公たちと人種が違うが人間で、毛が多いという見た目と文明を持たないことから蔑まれ使役されている、心優しい被差別者……という妄想を抱いてしまった。

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著者プロフィール

1932年、英国バーミンガム生まれ。SF作家。72年にカナダのブリティッシュコロンビア州に移住。『ブロントメク!』で英国SF協会賞受賞。2005年没。著書に『ハローサマー、グッドバイ』『カリスマ』他。

「2016年 『ブロントメク!』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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