とうに夜半を過ぎて (河出文庫)

  • 河出書房新社
3.90
  • (17)
  • (33)
  • (22)
  • (1)
  • (0)
本棚登録 : 480
感想 : 36
本ページはアフィリエイトプログラムによる収益を得ています
  • Amazon.co.jp ・本 (480ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309463520

感想・レビュー・書評

並び替え
表示形式
表示件数
絞り込み
  • いつの間にか秋も深まり、冷たい雨が降って来るこの季節に決まって読みたくなる作家がブラッドベリ。もうタイトルからして最高。
    切なさの上にブラックな苦さを加えた短編集。なんであんな文章書けるんだろう。

  • SF界の巨匠が綴った幻想と怪奇の短篇集。SFかと思いきや、収録されているのは幻想・怪奇短篇が多く、やや肩透かしを喰らったものの作者の知見と発想力の豊かさに脱帽するばかりである。文章が素晴らしく、翻訳が上手いというのもあるが、表現はいずれも詩的で美しい。ポスト・アポカリプスものである短篇「青い壜」の書き出しは個人的にかなりお気に入りで、描写の見事さもさることながら、物語性の高い出だしとなっている。

    話として気に入ったのは少年期の思い出の美しさとその忘却をパンというモチーフに込めた「黒パン」で、時に生々しく蘇ろうとも、過去は過去でしか無く、思い出は思い出でしかないということが、黒パンを通してとても残酷に描かれている。オチが秀逸。舞台設定、シチュエーションが光ったのは「板チョコ一枚おみやげです!」だろう。必要とされていない教会の懺悔室にいる初老の神父の元に、突如チョコの香りを漂わせた巨デブがやってくるというまことにシュールな短篇である。まるでコントのような会話劇には何度もクスリとさせられたし、最後のささやかな贈り物には謎の感動があった。チョコを通じた小さな奇跡の短篇である。上記のように、青い壜や黒パン、板チョコなど、一つのモチーフを使った短篇がブラッドベリは非常に上手い。好みからはやや外れるものの、短編の物語性の高さは随一であろう。

  • SF王道的な『青い壜』『第五号ロボットGBS』や『灼ける男』『十月のゲーム』といった怪談、『語られぬ部分にこそ』『非の打ち所ない殺人』のような美しくて不思議で寂しいブラッドベリらしい話が久しぶりに読めた。

  • ブラッドベリ、やっぱり良い!!

    以前読んだ「10月はたそがれの国」ほどのインパクトはないものの、
    どれも美しい情景描写の中に、ヒヤリとするような怖さがあり。
    文章に酔いしれる事の楽しさを思い出させてくれます。

    最初の「青い壜」から引き込まれました。
    死に絶えた廃墟の町を進む二人の男。彼らは<青い壜>を探している。
    その中には一体何が入っているのか??オチも秀逸です。
    冷たい月に照らされた骨と砂塵だらけの都市の描写が素晴らしかった。

    「十月のゲーム」の恐ろしさ!!思わず2度読み返してしまった(笑)
    ハロウィーンに、地下室の闇の中で行われるゲーム…

    過去から既に死んだ作家を連れてくる「永遠と地球の中を」も好き。
    これは長編で読んでみたいなぁ。

  • 「なんとか日曜を過ごす」が一番好き。ブラットベリ良い。何で今までよまなかったんだろう。何となくブラットベリを湿っぽい話みたいに勘違いして思い込んでたからな。今まで読まないでごめんなさい。読みますよ〜これから
    「とうに夜半を過ぎて」自殺した少女についての救命士たちの会話が・・・かなり深刻。火星年代記の一編といってもおかしくない「永遠と地球の中を」も面白い。「ジェイミーの奇跡」子供の頃(今でもか)よくこう言うふうに考えていたっけ。もしこのまま影の中を歩いて帰れらた願いが叶うみたいな・・・ブラッドベリ、いいな~

  • 「青い壜」「救世主」の切なさ、「日照りの中の幕間」「ある恋の物語」の絶望、「第五号ロボットGBS」の諧謔味、「十月のゲーム」の息苦しさ。「楽しいか」と言われると応えに窮するけれど(後味の悪い作品もかなりあるので(^_^;)、「読む価値があるか」と言われたら間違いなくお勧めできる短編集です。
    鳥好きの鴨的に一番のおススメは、「親爺さんの知り合いの鸚鵡」。こんな話が本当にあったら、人生捨てたもんじゃないと思います。

  •  ブラッドベリの短編集です。ふしぎだったり恐ろしかったり、手触りはいろいろだけれどどれも美しい21編。SFというより幻想小説だったり、心理小説ふうのものが多かったかな。訳者のことばを借りれば「恐怖小説」ということになります。
     収録作品が多いので、好きなものもいろいろありますが、一作選ぶとしたらだんぜん『第五号ロボットGBS』。宇宙船の乗組員ウィリスと「ジョージ・バーナード・ショーの姿をした楔形文字盤記念ロボット」ショー先生のお話です。片や生身の若者、片や老人の姿をしたロボットであるこの二人の、師弟であり友人である温かな関係が、なんだかとてもうらやましかったです。
     あとは雨とハープの音のある情景が鮮やかな「なんとか日曜を過ごす」とか、苦しく切ない父子の和解を描いた「願いごと」、ちょっと意味深で短編映画みたいな雰囲気のある「語られぬ部分にこそ」、教会の懺悔室を舞台にした交情と救いの物語「板チョコ一枚おみやげです!」なんかが好き。
     これも通勤電車で読んでいて、朝から落ち込むこともしばしばでしたが、やはり読めてよかったです。

    • diver0620さん
      こんにちは。積読状態なのですが、やっぱりおもしろそうですね。
      >雨とハープの音のある情景が鮮やかな「なんとか日曜を過ごす」
      う〜ん、気になり...
      こんにちは。積読状態なのですが、やっぱりおもしろそうですね。
      >雨とハープの音のある情景が鮮やかな「なんとか日曜を過ごす」
      う〜ん、気になります。

      引用、しびれます!
      2011/07/14
    • マオさん
      diver0620さん、こんにちは!
      わたしもしばらく積読していたんです。でもすごくおもしろかったですよ。
      「なんとか日曜を過ごす」は、すご...
      diver0620さん、こんにちは!
      わたしもしばらく積読していたんです。でもすごくおもしろかったですよ。
      「なんとか日曜を過ごす」は、すごく劇的な展開があるわけでもない小さな作品ですが、心の揺れ方と着地点がなんともいいんです。
      引用は「語られぬ部分にこそ」からです。こちらもお気に召すといいなと思います。
      ぜひ読んでみてくださいね!
      2011/07/14
  • どれも面白かった!

    特に好きだったのは以下7つ。

    『青い壜』:火星で青い壜を探し続ける男の話
    『灼ける男』:湖へ行く途中で出会う奇妙な男の話
    『第五号ロボットGBS』:宇宙船の中での老人ロボットとの話
    『非の打ち所ない殺人』:学生時代に嫌っていた相手を殺しに行こうとふと思いつく話
    『ある恋の物語』:13歳の少年と24歳の先生の恋の話
    『語られぬ部分にこそ』:祖父が孫と同居人男性(おそらく恋人)の家に急にやってくる話
    『十月のゲーム』:理不尽に妻と娘を疎んでいる夫がハロウィンに地下室でゲームをする話

    一番好きなのは、『語られぬ部分にこそ』かな。
    祖父の苦悩と青春の甘さと永遠には続かないかもしれない関係をどうか永遠であれと願う切なさがよかった。

  • 幻想的なSFあり、ホラーあり、胸を掻き毟られるようなノスタルジーありと、ブラッドベリの全引き出しを開けた様な贅沢な短編集。ブラッドベリってどんな作家なの?という人は早い段階で読んでおくと良いかも。

    「日の打ち所ない殺人」「ある恋の物語」は作者の最高傑作に入ると思う。表題の「とうに夜半を過ぎて」は人間のエゴや正義感、愚かさを予想もしなかった視点から描いた傑作だと思う。

  • 読了。古い幻想短編小説集。読みやすい。まずまず。

全36件中 1 - 10件を表示

著者プロフィール

1920年、アメリカ、イリノイ州生まれ。少年時代から魔術や芝居、コミックの世界に夢中になる。のちに、SFや幻想的手法をつかった短篇を次々に発表し、世界中の読者を魅了する。米国ナショナルブックアウォード(2000年)ほか多くの栄誉ある文芸賞を受賞。2012年他界。主な作品に『火星年代記』『華氏451度』『たんぽぽのお酒』『何かが道をやってくる』など。

「2015年 『たんぽぽのお酒 戯曲版』 で使われていた紹介文から引用しています。」

レイ・ブラッドベリの作品

  • 話題の本に出会えて、蔵書管理を手軽にできる!ブクログのアプリ AppStoreからダウンロード GooglePlayで手に入れよう
ツイートする
×