- 本 ・本 (336ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309463544
感想・レビュー・書評
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ああ読み終わってしまった。またしばらくしたら三部作通して読みなおしたい。幼い頃に姉とともに兵士にさらわれ、エトラという都市の館奴隷として暮らしていた少年、ガヴィアの物語。ゲド戦記では自分自身の内面の葛藤が主に描かれていたのに対し、こちらは自分だけではどうしようもない部分をも含む社会の制度や偏見や価値観を、どう把握してどう消化してどう向き合って乗り越えるのか、、、ということが描かれているように思いました。
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2020/5/24購入
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上巻だけでは何とも言えない。ただ前2作と比べて、奴隷制というさらに難しいテーマをどう料理していくのか興味深く思う。それにしても善悪を完全に二分せず、残酷さも、幸福感も描ける手腕はさすが。
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西のはての年代記Ⅲの上巻~ガヴは西のはての都市国家群のひとつであるエトラのアルカ家の少年奴隷だが,幸せなことに姉がいて面倒を見てくれエヴェラ先生から目を掛けられ次の教師としての教育を受けている。そして,これから起こることを思い出す特別な力がある。思い出したのは,緑の幟を立てた兵士がエトラの町を荒らして回っている様子だった。2歳年長の主人の次男トームと同じ日に生まれた奴隷のホビーは戦争ごっこで苛めに来る。ホビーの目の上を木の剣で傷つけた後は奴隷達によって井戸に逆さ吊りにされ殺され掛けた。トームは奴隷に武器を持たせたことと幼い奴隷の男の子を叩いて殺したことにより夏の農村でのバカンスに同行を許されず,ホビーも男奴隷のバラックに移って力仕事を担うことになる。長男のヤヴェンは優しい陽気な人柄で20歳の士官となると慈愛に溢れる女主人により姉のサロを与えられ,姉も幸せだ。南の都市と抗争が起き,北のカシカーが城壁に迫り,市には独裁官が置かれ,食糧は配給になり,悲壮感が増していく中で,奴隷はバラックに閉じこめられるか,公益の為に使役される。ガヴは城壁防備のための石班に配属され,班長になっていたホビーに執拗に苛められる。姉はヤヴンの子を産んだが月足らずと栄養不足で1時間後には亡くなり,ガヴは知識を頼りにされて書物を父祖廟地下に移動させる任を与えられる。他の館の者から自由に関する詩を教えられ感銘を受ける。南に展開していた連隊が漸く引き上げて市内からの攻撃でカシカー軍を撃退し,姉とヤヴンの幸福な時間が訪れたのも束の間,ヤヴェンが軍務で町を後にした隙をついて,トームとホビーは姉ともう一人の乙女を他の館の別荘に無理矢理連れて行き,姉はプールで溺れて殺された。姉の埋葬後,墓地に留まったカヴは茫然自失となって町に帰らず,荒れ野に赴いた。野人クーガと一夏を過ごし,冬はブリギン一統と,春には森の心臓・バーナの所へ移動し,知識を愛されてカヴは新しい国造りの相談相手として遇される~ル=グウィンと云えばゲド戦記。暗いお話だったが,彼がカリフォルニア生まれ,私の親と同世代だとは知らなかった。西のはての年代記は「ギフト」「ヴォイス」とこの「パワー」。ギリシアやローマの奴隷制がヒントだな。それよりも細かい描写なのは,どうしたら奴隷制を維持できるか,安定させられるかを作者が考えた末だろう。例えば,生まれた子はすぐに交換に出され,母と子の絆を断つとか。絹の囲いに門番を立てるとか。さあ,下巻に取りかかろう
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自らのおかれた立場や状況について考える。幼い頃はなにもわからず、ただただその時々に真摯に向かい合うことで全てはうまくいくと信じていてよかった。いつかどこかのタイミングで、それがそうでないと気づく。もしくはそれがそうではないと考えてしまうことでそうではなくなってしまう。そこからどう生きるのか。それはもちろんすぐに答えのでる問題ではないのだろうけど、たとえばこの本を読んで考えたりしてみるのだ。
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都市国家でよい待遇とは言え奴隷として育ったガヴィア。
姉を喪った事がきっかけで、お館を出て行ってしまう。
心も身体も放浪する彼が、時間によって、出会った人々によって少しずつ癒されていく。
悲しいことがあったら、ちゃんと泣くんだよガヴィ
著者プロフィール
アーシュラ・K.ル・グウィンの作品





