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本 ・本 (280ページ) / ISBN・EAN: 9784309463551
感想・レビュー・書評
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2020/5/24購入
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まやかしではない本当の自由。しかし、それを得るためには、矛盾した、かりそめの自由、権力をいくつもくぐり抜けなければならなかった。読後、深い深いところからの静かな喜びがこみ上げてきた。
3部作を通して、本当に多くのものを感じた。主人公と共に生き、私も成長したのだ。物語の力がここにはあった。 -
西のはての年代記Ⅲの下巻~バナーの率いる森の心臓に攫われてきたイラードはメルと云う名の妹を連れていたが,バナーから逃れるためにイラードがカヴの部屋に隠れていたことで命を狙われると恐れる周囲が森を出ることを勧めた。行く場所は故郷である水郷地帯しかない。14・5年前に攫われた時の姉と自分の名前だけだったが,すぐに伯母が見つかり,伯父の許へ送られた。水郷では男と女が別れて村を作り,男は狩りや漁で手に入れた水鳥や魚を持って女の許に行き,料理をして貰うのだ。大人の儀式と釣りの腕で認められたガヴは暫く後,自分の力の話を始めるが,伯母が同じ力を持っている事を知り,他の大人に葦の島に連れて行かれる。カヴは偉大なる目になれるという目使いのドロドは麻薬効果のある茸を使って思い出しをさせる。死に掛けているところに伯母が現れ,小さな子を連れて追っ手に迫られつつ二つの川を越えていく姿が見えたという言葉で,自由を求めて旅立つ。預けた金の入った巾着を取り戻そうとクーガの洞窟を訪ねると,クーガは小川の中で半ば白骨化した姿をしていたが,居間となる洞窟には彼の宝の塩箱が置かれ,きちんと巾着も納められていた。クーガを埋葬し,バナーの森を訪ねると,多くの死者を出した戦乱の果てにエトラとカシカは同盟を結び,不足した奴隷を補うために,森の心臓を焼き払い,イラードも連れ去られていた。メルを救い出したカヴィアは大学のある北東のメサンを目指すが,行く先々で吟遊詩人とも云う逃亡奴隷を執拗に追い掛けるエトラの者の噂で持ちきりだ。カヴィアは追っ手がホビーであることを直感し,村や町を避けて二つ目の川を目指す。渡し場近くでホビーを現れるのを見て,慎重に二つ目の川を越える。後ろを向こう岸に着いて振り返ると乗り手を失った馬が溺れかけている姿を見る。メサンに着いた二人は,自由の詩を書いたオレックを訪問し,自由と家と仕事と大学での学生という身分を得る~あれっ,これで終わり?
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上巻に続いて一気に読了。
「パワー」は主人公の持つ特別な「力」だけでなく、他人を自在にあやつる「支配力」、「暴力」、そして言葉の持つ「力」を指しているんだと思った。
三部作を通じてル=グウィンが読者に伝えたかったのは言葉の持つ力を信じるということなのだろう。 -
辿り着く先のことを考える。それはどこなのか。それはほんとうにどこでもよくて、ただ自らの強く願った先に辿り着いたかどうかだけが、重要なのだろうか。
主人公たちの旅する世界が、読みすすめるほどに色濃く浮かんでくるようになるいっぽうで、物語は終わりへと近づいてゆく。この親しみと寂しさの入り交じる感情を強く得るかどうかは、よい本を読んだかどうかをはかるいいものさしになる、と思う。 -
さまようガヴィア。クーガに拾われ、森の心臓で暮らし、水郷にたどり着く。そこも違う。
本当の自分の場所を求めて、再び出発する。オレックのいるメサンを目指して。
居場所が見つかって一安心したけれど、彼の旅はまだまだ続くのだろう。未来へ
著者プロフィール
アーシュラ・K.ル・グウィンの作品





