- Amazon.co.jp ・本 (424ページ)
- / ISBN・EAN: 9784309463834
作品紹介・あらすじ
世界最後の犬が死んだ。愛するものを失う痛みと、滅びゆくものへの哀惜、そして赦し…ヒューゴー賞、ネビュラ賞受賞の表題作、風変わりなタイムトラベル実験が巻き起こす恋愛喜劇「タイムアウト」他、魔術的なストーリーテリングを誇るSFの女王の短篇ベスト・オブ・ザ・ベスト。単行本未収録作を加えた新編集版、全五篇。
感想・レビュー・書評
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「これ、面白くなるのか?」
と、各短編を読み始めたとき、必ず一度はこう思った気がします。日常描写が長かったり、説明が不足しているように感じたりして、なかなか物語の筋がつかみにくいからです。
そして毎回、短編のラストに近づく頃には、手の平を返してる自分がいました(笑)
「女王様でも」は世界観が掴めたときに、物語の魅力が分かってくる短編。でもおそらく、この短編に心から共感できるのは、女性なんだろうなあ。男である自分は「女の人ってそんなに大変なのか……」と、ただただ恐縮するばかりです。
最後に収録されている「からさわぎ」も、世界観の意味が掴めると、面白くなる作品。そして前者も後者も、シニカルな視点がまた巧く効いています。
そして、ビックリしたのは伏線回収の巧みさ。
一風変わったタイムトラベル実験の顛末を描く「タイムアウト」は、タイムパラドックス的なものもあって、相当話の筋は練り込まれています。さらに、あのキーワードがこう作用してくるのか、というところもあり感心しきり。
「スパイス・ポグロム」は異星人とのコミュニケーションをテーマにした言語SF的な話。異星人のコミュニケーションのルールを見事に生かした物語の作りに、これまた脱帽。
そして表題作の「最後のウィネベーゴ」もスゴかった……。多くの動物が絶滅の危機に瀕した世界。その世界観は終末もののSFのような、哀惜があるのですが、この世界だからこそ起こりえる事件であったり、人の行動のロジックは、特殊設定のミステリとしても、かなりの面白さ!
そして、ラストのサプライズもあり、切なさもあり……「これ、面白くなるのか?」と散々手の平を返してきたにもかかわらず、また疑いながら読んでしまった自分が恥ずかしくなるくらいの作品でした(笑)
各短編、エンジンのかかりに時間はかかるものの、速度に乗ればあっという間に、面白いゾーンへ連れて行ってくれると思います。
そしてSFの世界観でありながら、細かな伏線回収や展開の巧みさは、精巧なミステリのようでもあります。SF作家のこの著者が「このミス」などでも評価されている理由も、身に染みて分かった短編集でした。詳細をみるコメント0件をすべて表示 -
SF。ファンタジー。短編集。
全体的に非常にコミカルでユーモラス。
社会風刺も効いている。
表題作の評価が高いようだが、個人的には「スパイス・ポグロム」がベスト。異星人とのコミュニケーションを面白おかしく表現した、コミカルな言語SF。 -
「スパイス・ポグロム」が大好き。映像化してほしい。全体的にラブコメディなので女性のほうが楽しめるかも。SF苦手な女性にすすめるならコレかな。
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アメリカSF界の女王、コニー・ウィリスの作品集。「女王様でも」が読みたくて入手したけど、色んな色の作品が入っていてよかった。しかし中編は1話1話がちょっと長い。そして説明なしに色々始まるので少し読みにくい。
・女王様でも
月経SF。
・タイムアウト
ロマンス、タイムトラベルもの。細かい芸が効いててよかった。
・スパイス・ポグロム
宇宙人とドタバタかわいいスクリューボールコメディ。個人的には途中ちょっと中だるみしたけど、ラストにかけてのドタバタ感はよかった。
・最後のウィネベーゴ
シリアス。現在と過去が入り交じって初めは読みにくいけれど、だんだん繋がってくる。「そして、すべてがそこにあった。」
・からさわぎ
ポリティカル・コレクトネスのせいで学校でシェイクスピアを教えられなくなる、という風刺の効いた短編。ザワザワとテンポがよい。 -
《目次》
・「女王様でも」
・「タイムアウト」
・「スパイス・ポグロム」
・「最後のウィネベーゴ」
・「からさわぎ」 -
地球上から犬が絶滅した世界を描いた「最後のウィネベーゴ」や、世界初(?)の生理をモチーフにしたSF「女王様でも」などを収録した短編集。他にも結ばれるはずのなかった男女のラブストーリーにSFやスラップコメディ要素を加えた「タイムアウト」「スパイス・ポグロム」など収録作に隙が無い布陣となっている。
個人的には現代の過剰なまでの言葉狩りを皮肉った「からさわぎ」もかなり好みだ。果たして未来のフェミニストや愛護団体の手にかかれば、シェイクスピアの戯曲はどんな改変を余儀なくされてしまうのか?
作風なのかもしれないけれど、登場人物の回想や移り変わりが唐突に入る話もあるので、慣れないと少し読み辛いかもしれない。 -
『スパイス・ポグロム』がとてもロマンチックだった。
コニーウィリスお得意のドタバタっぷりも良き。
ハッチンズ良かった~!! -
アメリカの社会病理をコミカルにシニカルに、時にはロマンティック、センチメンタルに抉り出します。
どの短篇も綺麗にまとまっていて完成度が高いです。
でもあまり響かないな〜。
SFに求めているもの、強烈なヴィジョン、胸踊る奇想天外なテクノロジーや魅力的な生物。
そんなものが足りないせいかもしれません。 -
『航路』が面白かったので短編集を購入。
とはいえ収録作は長めで、単純に数だけみると短編集というにはやや寂しい。
表題作を除いて、全体的にコミカルでドタバタ系の内容だった。『タイムアウト』の会話の応酬がいい。