ツァラトゥストラかく語りき (河出文庫 ニ 1-2)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (565ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464121

感想・レビュー・書評

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  • まずはざっくりと西洋思想の歴史について勉強してから読みました。結果良かったです、大正解でした。
    そうじゃないと、"神は死んだ"→→→「は??」って感じだったと思います。

    簡単に説明をすると、、※完全な自己解釈です!
    長らく、ずーっと昔から、数多くの思想家たちは、"真理の追求"について思い巡らせ、様々な持論を唱えていました。
    そして「プラトン・アリストテレス・キリスト教の大帝国」が、プラトンの「イデア論」をキリスト教が上手に利用する形で長期的に支配していました。
    カントやガリレオなど自然科学の発見・発展によって、
    またその後のデカルトの座標軸の発見などによって少し風穴が空く形になりましたが、『神』という存在は根強く染み付いていました。
    =本当は神の存在証明からする必要があるのでは…?ということを誰も思いませんでした。

    *人間は生れながらにして原罪を背負っている。
    *真理は常に神の側にあり、人間の手の届くところにはない。

    そんな中、牧師の父を持つニーチェは、幼少期から熱心にキリスト教の信者として育ちましたが、
    だんだんと圧倒的な支配に息苦しさを感じていきます。

    そして、
    神は死んだ、我々は精神の奴隷になどなってはならないと言います。
    それまでの価値観に挑戦状を叩きつけて、"「超人」になれ"と言いました。


    もともと、
    古典においてもキリスト教においても、一番大切な真理は
    常に神の側にありました。
    でも、もしかしたら我々はありもしない真理というもので自分たちを縛っているのではないか。何しろ背後世界を実際に見た人はいないし。。
    原罪(人間はアダムとイブが犯した罪を生まれながらに背負っている。けれど、イエスキリストという人物が1人でこの罪を背負ってくれた。だから感謝し生きていかなければならない。)についても、人間が本当に罪を負った存在なのかということも、キリストが私たちの罪を肩代わりしてくれたということも、どちらにもはっきりした証拠はありません。
    人間にはもともと、ある種の神秘性に憧れを抱くという性質があり、それを利用して、人間の手の届かない所に真理という大切なものがあると言えば、それを伝えられる人、キリスト教で言えば神の言葉を媒介する教会が力を持つことになる…そして大衆は永遠に受動的な存在から抜け出すことができなくなる…。

    なぜ、一人ひとりの人間が、能動的に大切なものをつかみ取ってはいけないのか、
    これではまるで「精神の奴隷」ではないのか?
    教会に対して、「ありもしない荒唐無稽なことを言って人間を抑圧するな」と挑戦状を叩きつけるとともに、大衆に対して、「ビビるな!奴隷の立場に甘んじるな」というメッセージを伝えたかったのです。

    自分以下のところにある権威に安易に跪くのではなく、
    まず自分自身が拠点となり、自身に目を向けようよ、と。



    またこの本は、ツァラトゥストラという人物がニーチェに代わり、ニーチェの思想を説いていきます。

    なぜそういう形を取ったのでしょうか…?
    あくまで個人的な勝手な想像ですが、
    ニーチェは超人になれと言いますが、ニーチェ自身は自分は超人ではない、まだその域ではない、という自覚があったからではないのかなと思います。
    カントなどは自らの理論をコペルニクス的転回と自画自賛していましたが、ニーチェは違ったのではないかなと思いました。
    (あ、でもカントの超越論的主観性の発見も面白いと思いました。)


    そんなニーチェの言う超人とは、
    *勇気を持って現在の迷いの中にある自分自身を乗り越えていく、そんなポジティブで、積極的で、肯定的な強い精神力を持った人間。
    *自分で目的地とそこへ至る道を探して、単独者として進んでいく強さを持ち、戦いを挑み、敗れてもまた立ち上がり、倒れてはまた立ち上がる人間。
    *自分の決断というものに責任を持って、自分自身の人生を作っていく人間。
    *3ステップ(ラクダ→獅子→幼子)を実行し超人になれと言いました。

    ずっと読んでいると、
    ニーチェはただ、外的なものすべてに対して、これでもかというくらいひたすら否定しているように感じてしまいますが…
    そうではなくて、
    彼が言いたかったことは、内的なもの=自分自身に対する肯定の大切さを伝えたかったのだと思います。

    そして「永劫回帰」。
    彼のいう超人には並大抵の努力ではなれません。
    何度失敗しても、決して諦めないこと、そうやって人は強くなれる。

    自分なりの解釈ができたとき、とても感銘を受けました。

    またニーチェの言葉がわかりやすいのは、彼が「アフォリズム」という短い言葉で本質をつかまえることを目指していたからです。
    短い言葉で本質を伝えようとすると、ごまかしがききません。

    そういう真っ正面からのメッセージはとても強くてカッコいいです。


    また、最近あるアメリカの学者の動画を見たのですが、
    "頑張れば/成功したら、幸せになれる"という考え方は間違いで、
    私たちは一般的に言われている、幸福と成功の法則を反転させる必要があります。

    現状へのポジティブの度合いを引き上げることで、その人の脳は「幸福優位性」を発揮し始めます。

    つまりポジティブな脳は、ネガティブな脳やストレス下の脳よりもずっとよく機能し、知能が上がり、創造性が高まり、活力が増大することが研究結果でわかりました。

    現状に対してポジティブになることさえできれば、脳はより熱心に速く知的に働き、その結果としてより成功するようになるとのことです。

    長期的な幸福について予測できるのは10%くらいで、
    あとの90%は周囲の環境ではなく、
    脳が周囲の環境をどう処理するかにかかっているとのことです。
    ストレスを脅威ではなく挑戦と受け取る能力に掛かっています。

    個人的には、ニーチェの考え方に対する科学的な証明かなと思いました。

    人により解釈は違うと思いますが、個人的には色々と学べた本です。

    そして、

    Let's 自己責任での覚悟を持ち自由であれ!
    Let's エンドレスチャレンジング!
    Let's ポジティブシンキング!

    を心掛けたいと思いました。

    《2/1追記》
    こちらの感想文をニーチェに詳しい方に読んでいただいたところ、「ニーチェの意図を汲み取らないにも程があるけどそこが逆にニーチェ的だ」と言われました(特に永劫回帰のところ)…。


  • そもそもニーチェを知らない。だけど新聞記事にどうしようもなく心動かされゲーテのファウストに挑戦した時と同じ覚悟で開いてみた。分からない言葉を分からないまま美しく記憶に残してくれる夢のような物語だった。(しかし理解できない度合はMAXなので、今後さまざまなひとの解説に触れる楽しみが増えたと言えるかもしれない、、)

    【参考】
    2023.2.2付 朝日新聞 朝刊 明日へのLesson 第1週 人類に贈る「超人」への夢『ツァラトゥストラかく語りき』↓
    https://www.asahi.com/articles/DA3S15544429.html

  • フリードリヒ・W・ニーチェ著、佐々木中訳『ツァラトゥストラかく語りき(河出文庫)』(河出書房新社)
    2015.8発行


    2017.10.6読了
     哲学者が書いた本だけれど、物語風になっていて、普通に文学として楽しめる。ニーチェを始めるならこの本がおススメ。ただし、哲学という学問として読むなら、この本には一切注釈がないので注意が必要。とにかく隠喩と諷喩の目白押しで、慣れるまで少し時間がかかるが、読み進めていくうちに、単語の意味が分かってくる。牡牛のように反芻して自分のものにしていきたい。

    君たちが絶望しているということは、おおいに尊敬すべきことだ。諸君が屈従することを学ばず、小利口な分別を学ばなかったということだから。

    いやー超訳ニーチェ

    URL:https://id.ndl.go.jp/bib/026609564

  • <勇気を出してもっと強く生きても良いんだ!>


     もっと難しい本なのかと思っていました。するっと読めて驚いたなぁ☆
     河出文庫版に出会えたことが幸運だったようです。佐々木中さん訳の河出版は、想像を超えた読みやすさでツァラトゥストラが近しく感じられます☆ これほどの平明さは、翻訳や出版サイドが本作の価値を伝えようとして尽力された結果なのでしょう。違った訳で読んだら難解に感じられたのかもしれません。

     どストレートに面白い小説、として読みました★
     明るく澄み切った叡智のひと、ツァラトゥストラ。彼は30歳から山奥に住んでいたのですが、40歳くらいに「そうだ、没落しよう!」と意を決して、街にお説教しに降りてきたのです。初めに広場で語ったときは、誰も彼の話をまともに受け止めていないかに思われました。が、ツァラトゥストラを認める人々は確実にいて、気づけば彼の弟子と呼べる人たちまでできていた!
     ただし、崇め奉られるのを好まぬこの賢人は、人前に現れて自由な発想で語ったのち再びお山の洞窟に籠る、というパターンを繰り返します。弟子たちは、人間の常識を凌駕した「超人」ツァラトゥストラが、火の玉のようにゴゴゴと飛んでいく姿を目撃するのでした……★

     では、ツァラトゥストラが語った超人思想とは、一体どのようなものだったのか? あくまでも私はこう読んだ……という話としては、絶対的な権威に無条件で従ったり、安易に善人ぶったり同情したりすることの危険さ、思考停止への警鐘。何より、「もっと自分でやっちゃえ☆」という心強い励ましを受け取りました。
     どんなに偉い人が相手でも神のように祀り上げちゃダメです。黙って偉い人の言うことをありがたく聞け、とか宣う何者かは、いつの世にものさばるものですが、もしかしたら私らの態度が相手をそうさせるところがあるのかもしれません。
     つまり、私たちは強くなって良いんだ! という勇気が凛々と湧き起こってきて、爽快です☆

  • 仕事の行き詰まりと自分の弱さに挫けそうなとき、この本を読んだ。劇薬に臨む覚悟で頁を開いて、ツァラトゥストラの言葉を聴いた。
    胸に染み渡るような感触だった。そっと彼が背中を押してくれたような気がした。押す前に大きな手のひらでガシッと背中を鷲掴みにされたが。
    後ろを振り返るとツァラトゥストラの怖い顔がこっちを睨めつけたので、私も負けじと睨みつけ、直ぐ前を向いた。
    今後、何回も後ろを振り返るだろう。その度に彼は睨みつけてくるのだ。私も睨めつけ返す。
    どっちかが根負けなんて想像はありえない。

  • 哲学と詩のハイブリッド。思想をここまで美しく叙述できるってことにまず感動しました。

    キリスト教なんて奴隷道徳だ! っていうニーチェの主張は初見で衝撃を受けましたね。読んだのは高校生のころだったかな。少なくとも当時の人格形成には大きく影響を与えられました。

    今でも、自分のルサンチマンを正当化するために誰かを悪者にでっちあげる風潮にはもの凄い怒りを感じるんですが、そういうのもニーチェの影響かもしれません。

  • 力をもらおうと思って読んでみた。あまりニーチェ哲学「神は死んだ」「ニヒリズム」「永劫回帰」を意識しすぎて読むのもつまらないと思い直し、ツァラトゥストラという変人(いや超人か)が山の中から出てきた物語としてそのまま読んだ。まあ読み応えはある。ツァラトゥストラが市場に演説しに行って綱渡り舞踏家の亡骸と帰ってくるあたりの序盤は動きがあって良いのに、中盤以降はひたすら語ってばかりなのが物足りない。もっと彼の主張を実践する具体的な行動やストーリー展開を組み込めばよかったのでは。物語をおもしろくするためにも、哲学の理解を深めるためにも。

    翻訳が良いからか言葉に力があって読んでいて楽しい。注釈が一切無いのは構わないが、翻訳者の佐々木中という人の巻末解説があればより良かった。
     
    気に入ったフレーズは、

    「この巨大な龍の名は『汝なすべし』だ。だが獅子となった精神は『われ欲す』と言う。」 p40

    「すべて偉大なものは市場と名声から去って行く。昔から、新たな価値を創造する者たちは市場と名声から離れて住んでいた。わが友よ。逃れよ、君の孤独のなかへ。」 p88

  • 思っていたよりも小説風の内容だった。また、駱駝→獅子→子供の変化については、あまり語られていなかった。

  • わりと戦闘的だが、結局どうすべきということなのか?
    物語風で、読みにくいことはない。

  • 老頭の僕でも読み通せた。注釈が一切付いていないので一気に読めた。注釈を付けずに読めるように訳者が覚悟を決めて読者に配慮して考えて訳したのだろう。他の訳者のものを読んでいないので偉そうなことは言えないが大したものだ。尚、ニーチェの思想のあらましや、「最後の人間(末人?)」「神は死んだ」「永劫回帰」「大いなる正午」などのキーワードは他の入門書等で一応学んでから本書を読むべき。僕の場合は飲茶氏の本を楽しく読み勉強した。

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著者プロフィール

フリードリヒ・ヴィルヘルム・ニーチェ(Friedrich Wilhelm Nietzsche)
1844年10月15日 - 1900年8月25日
ドイツの哲学者、古典文献学者。近代がはらむ問題を一新に受け止め、古代以来の哲学との対決に挑み、実存主義の先駆者、生の哲学の哲学者として知られる。その思想は20世紀に続く様々な思想に衝撃と影響を与えた。
代表作に『悲劇の誕生』『道徳の系譜』『ツァラトゥストラはこう言った』『善悪の彼岸』など。

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