プラットフォーム (河出文庫)

制作 : Michel Houellebecq  中村 佳子 
  • 河出書房新社
3.90
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本棚登録 : 221
レビュー : 18
  • Amazon.co.jp ・本 (414ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464145

感想・レビュー・書評

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  • 往来堂書店「D坂文庫2015冬」から。選んだ理由は選者の「日本にこんな意地悪な小説家は絶対いない!」というコメント。
    さして取り柄のない仏人公務員ミシェルは、親の遺産でタイ行きのパッケージ・ツアーに参加し、少女を買う。そして、周囲のひんしゅくを買いつつ、そのツアーで知り合ったヴァレリーと恋に落ちる。帰国後はヴァレリーと一緒に彼女が勤める旅行会社で売春ツアーを企画するが、最後は…。
    この小説の中でミシェルとヴァレリーは、もう数えきれないくらいセックスをして、その度にミシェルは西洋の性の退廃を、ひいては西洋文明の没落を嘆く。
    少々乱暴なつかみ方ではあるけれど、西洋の高度資本主義への批判・警告を性を通して描いた、と言えるのかもしれない。
    とは言え、この表現の仕方に読者はどこまでリアリティを覚えるんだろう。この小説にリアリティを感じる人は、この作家にのめり込むだろうし、反対にリアリティをまったく感じない人は、もうこの作家の作品を手にすることはないのだろう。もっとも、リアリティ云々の前に、官能小説とも言える性描写に辟易として、本書を投げ出す人も決して少なくないとは思うけれど。

  • 「文化というのは、人が生きていて不幸を感じるときに代償物として必要になるもののように思える。文化をもっと別のイメージ、たとえば幸せの真っただ中で増大する祝賀や叙情と結び付けることは可能だろう。しかし確信はない。机上の空論のように思える。このさき僕にとって文化が重要性を持つことはあり得ない」(p.357)

    河出文庫版の内容紹介の1行目から胸に刺さる。ここを抜き出した編集の方、素晴らしい。「なぜ人生に熱くなれないのだろう?」

    「読んで気持ちよくなれるタイプの本ではない。慰めもない。むしろ痛みの増すような本だ。それでも彼の本が多くの人に読まれるのは、生きることの第一義が幸せの追及ではないからだ、とわたしは思う」(訳者あとがきより)

  • 所々で唐突に西洋型社会に対する毒舌が出てきて、何度か吹き出してしまった。ペシミスティックでいてユーモアがある。この作家は初めてだったが、読みやすく感性も合う気がする。

    厭世的でありながら性に関しては屈折もなく、初めから素直というのはある意味新鮮だった。おかげで、作中で主人公が展開する性の捉え方を結構面白いと感じながら読んでしまった(笑)。

  • 2017年4月9日に紹介されました!

  • ウェルベック 4作目の小説(邦訳は『素粒子』に続いて 2作目)。資本主義と自由主義が行き着く先をポルノ紛いの筆致で描くとともに、イスラムに対する嫌悪感を隠そうともしない表現でスキャンダラスな話題を撒き、ウェルベックの名を世界に知らしめた一冊といってもいいだろう。どちらかというとムスリムからの脅迫とか、怒り狂うフェミストからの批判とかの話題が先行してしまっている印象で、今まで読んだ 3作の中では一番面白くなかった。ただし、享楽的なリゾートが一瞬で暗転する、その瞬間は見事だ。

  • 複雑な話。
    偶然にも、9.11の直前にこの話が出版されていることがすごい。


    レイシズム、イスラム、女性観...
    心に残ってる言葉を


    読書のない生活は危険だ。人生だけでまんぞくしなくてはならなくなる。

    要するに、すごく稀だってことね。他人に興味を持っている人って。

    SMは、頭でっかちの、セックスにすっかり興味を失っているような人間にしか関係ない。

    もし愛に決定的な支配力がないのなら、心はどうやって統治者たれるだろう?
    行動のみが実践的最高権威を持っている
    (オーギュストコント)

    生きることの第一義が幸せの追求ではないからだ
    (中村佳子)

  • ウェルベックの比較的初期の作品だが、かなり性的かつ露悪的で読むのにやや苦労した。そりゃあスキャンダラスなものは「面白い」のだが、心楽しく読み進められるものではないよね。これから比べれば、「服従」など最近の作品はずいぶんおとなしくなった、のかもしれない。しかし、セックス、アンチフェミニズム、イスラモファビアなどのテーマはここから連綿と続いているのか。9.11の前にイスラムテロを描き、パリのテロの前にイスラム政党が政権を取る話を描く、ウェルベックが持つある種の「先見の明」は注目を引く。
    旅行業をテーマにしており各国の事情に時代の変遷は感じられた。この当時タイで存在感があったのは韓国・中国企業ではなくまだ日本企業だったし、エジプトはアラブの春を経験していない。
    まあしかし、ヒロイン像はヒドイ、と言わざるをえない。セックスが好きで決して拒まず、愛情豊かで優しくて、仕事ができてお金を持っている。

  • 観光について考える旅の中で読んだ。

    ダメダメな主人公、都合の良いヒロイン、卑俗なセックスシーン、筋の通った偏見を語る嫌な登場人物たち。あちこちに来たるべき暴力への伏線が散りばめられており、ウエルベックだしハッピーエンドはないわな、とソワソワしつつ読み進めると、カタストロフと諦念が待っている。

    共感はできないが、世界はこのようなものなのかもしれないと感じもする。

  • 2016/10/1購入

  • 相変わらず通勤電車で読むのを憚る露骨な描写が多々あって困惑させられたけれど、ある意味とてもピュアな恋愛もの、そして喪失の悲恋ものとして読むこともできて、今まで読んだウエルベックの中では比較的理解しやすかった印象。たまに読みながら寝そうになり、うつらうつらしてると何故か今読んでるのはナボコフだと錯覚したりもした。

    非モテで観光買春が趣味の40男が、ツアーで出会った仕事もできて賢いのにエロい20代女性と恋に落ちて途端にリア充セックス三昧の生活をするようになるも、世界ではときどき暴力的な事件が起こるし身近に凄惨なレイプ被害者も出る。きっと不穏なことが起こるだろうという断片は散りばめられていたけれど案の定ラストでの派手なカタストロフィ。この作品が本国で発表されたのが2001年8月。その1か月後に911のテロ。まるで預言書のようでもあり、今現在(2016)の日本にもこの預言は当てはまっている気がする。

    若者の恋愛・セックスばなれが指摘される反面、ロリコンやストーカー殺人など極端な犯罪は増える一方。要するに恋愛を上手に出来ない=他者との距離(コミュニケーション)を上手く取れない人間があまりにも増えすぎて、それでいて性欲自体は失くならないからおかしなことになる。二人の人間の、どちらか一方にだけ犠牲を強いるような関係は間違っているはずなのに、自分のエゴや欲望を優先しようとする身勝手な人間が多すぎる。

    ようやく理想的なパートナーを手に入れた主人公がそれを最終的に失う、あらすじはたぶんシンプルにそれだけ。それだけだけど、とても哀切。愛というプラットフォームを見失った現代人は何を生きる糧にすればいいのだろう。

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著者プロフィール

1958年フランス生まれ。ヨーロッパを代表する作家。98年『素粒子』がベストセラー。2010年『地図と領土』でゴンクール賞受賞。15年には『服従』が世界中で大きな話題を呼んだ。『ある島の可能性』など。

「2018年 『闘争領域の拡大』 で使われていた紹介文から引用しています。」

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