帰ってきたヒトラー 下 (河出文庫)

  • 河出書房新社
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  • Amazon.co.jp ・本 (289ページ)
  • / ISBN・EAN: 9784309464237

作品紹介・あらすじ

ヒトラーが突如、現代に甦った! 抱腹絶倒、危険な笑いで賛否両論を巻き起こした問題作。本書原作の映画がついに日本公開! 本国で二五十万部を売り上げ、四十二言語に翻訳されたベストセラーの文庫化。

感想・レビュー・書評

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  • 笑っていいのかどうなのか。
    どうせフィクションならもっとバズっていくところを強調して面白くしてほしかったのが本音。

    大衆扇動が始まるかもしれない可能性を残して物語は終わる。

    ヒトラーとはドイツにとって何だったんだろう。

  • 下巻は、上巻ほど突飛な展開はない。想像できる範囲のものである。ヒトラーが現代においても大きな力を持ったとしたら、どのような国へ変わっていくのか。なんとなくそのような淡い期待のようなものを抱いてしまった。黒い歴史を作り上げた過去のヒトラーと、現代をユーモアに生き人々を魅了していくヒトラー。常にそのどちらにも視点を移しながら読み進めていく、新しい読書体験だった。

  •  結末に賛否両論だろうな、と思いましたが・・・。個人的には、ヒトラーに対して、どこか人間味を感じました。いくら総統といえども、やはり人間、とでもいいましょうか・・・。

  • 原題 ER IST WIEDER DA

    けだし、ヒトラーは難しい。

    ドイツの崩壊を目の当たりにしながら、なにひとつぶれずに「彼はまた戻ってきた」というのは…反省はあっても後悔はなく、迷いもなく決断し行動力も1945年そのままに。

    彼の言動を現在の人たちがいいように勘違いして物語が転がっていく。なんとか〝1st〟ではなく〝only〟を叫び、人々が彼を求めた1935年もかくあるかのように…?

    という危険が最後までつきまとう。同じことは起こり得るのか?という不安も。

    肝心な部分が曖昧なままなのは意図的なのか。茶化される日は来てほしくない。

  • 面白い企図。読者はヒトラーの時代の恐ろしい所業をすでに知っている。しかし全編通してヒトラーの視点で描き出された現代社会と彼の思想を読んでいると、「こいつ面白いやつじゃん、なんか純粋でいい人やん、確かに言っていることは一理ある」と思ってしまう。ごく自然に彼が現代社会においてもスターになっていくことが受け入れられる。

    ヒトラーとナチスが台頭してきた時代もきっとそうだった。こうやって民主的に独裁恐怖政治が選ばれていくんだとわかる。

    ファシズムは最初から恐ろしい顔をしていない。ごく当たり前のように隣に存在するんだという事を知って恐ろしくなる。

  • 第二次大戦当時、自殺したとされたヒトラーが70年後の現代に蘇り、当初は本人似のコメディアンとして認知されるものの、メディアを通じて次第に人気が出て行って…という話。
    読んでて面白いのに、読みすすめていく内にとんでもなく不安になる不思議な小説。
    その不安は①そもそもヒトラーの話を面白おかしく読んでしまってる自分がいるけどいいのだろうか?②ドイツやイスラエルの読者はこれ読んでどんな気持ちになるんだろ?③これはヒトラーの事例だけど、似たような状況が知らぬ間に起こり得るってことだよね?、といった具合に様々な思いが入り混じって押し寄せてきます。
    巻末のニューヨークタイムズの書評やイスラエルでの版権を獲得した編集者へのインタビュー、そして日本で活躍しているドイツの方と訳者による解説はとても読み応えがありました。
    本国ドイツで200万部のベストセラーとなった時、著者が「これは200万人が参加する社会実験だ」と言ったというのは頷けます。
    ヒトラーについて思考停止で“絶対悪”と決めつけるべきではなく、そこに至るまでの過程があったことに気付かされます。

  • 上巻に引き続いて読んだ。
    この巻では、よみがえったヒトラーが、「ユーチューブ・ヒトラー」として大ブレイクし、再び政治家を志すまでが描かれる。
    マスコミとの戦い、ネオナチからの襲撃、そして自由を擁護するアーティストとして祭り上げられた彼は、あらゆる政党からラブコールを受ける。
    上巻より広がりが出ている感じがした。

    ヒトラーの演説は(本人はいたってまじめにやっている)、ブラックジョークとして誤解される。
    そんな風に笑いものにしていく風潮を、こちらもそんなものかと思って読んでいると、シビアな場面が現れる。
    秘書の「クレマイヤー嬢」の祖母のエピソードだ。
    彼女はユダヤ人で、ホロコーストで家族をすべて失っている。
    その彼女が、孫娘が「ユーチューブ・ヒトラー」の秘書をしていると聞いて激怒するのだ。
    あの時、1930年代の頃だって、みんなヒトラーのことを笑っていたじゃないか、と。

    社会が道を誤っていくときって、こんな風なのかもしれない。
    訳者森内さんがいうように、ヒトラー的なものはクラウド的に遍在し、いつの間にかそれに慣れ親しんでしまう。
    それは突然やってきたものではないのに、気づいた時には手遅れの状態になっている。
    そう思うと、他人ごとではない。
    背筋が寒くなった瞬間だ。

  • ともかく第二次大戦のほとんど全ての問題をヒトラー及びナチスに負わせているわけだ。ムッソリーニ及びイタリアは、途中で降伏して、内部告発で減免されたかのようで。
    そんなこんなだから、まぁナチスのネタとヒトラーのネタはざっくりおいしいネタということで、いくら悪事を働かせても大丈夫。従軍慰安婦問題とかにも通じるものがあるねぇ。
    でも今回はヒトラーのちょっといいところも探してみようネタなんであって、そりゃアンチとして再評価があっても良い頃だよね。もはや戦後ではないというか。
    まぁ多分に美化されてるところもあるんだろうけど、この自信というか、引っ張っていく力は参考になる面もあるんではないか。ヒトラーが成り上がるまでをドラマ化したらええがな。

  • 自殺する直前のヒトラーが現代にタイムスリップしたら...というお話

    誰もが悪人として知っているヒトラーが、その信念と思考力を現代社会で発揮したら、行うであろう思考と
    戦時の状態を引きずったヒトラーと現代の市井の人々のギャップとすれ違いが面白い!

    ただし、100%理解をするにはトルコ移民などの現代のドイツの問題と、ナチスの知識を持っていた方がよいと思う。
    時々?となる箇所がある

    映画も観たが、こちらの方がコミカルに書かれていてメッセージが分かりやすいのでこっちから入るのもオススメかもです。

  • 上下巻合わせての感想とする。
    知識が足りず難解なところも多かった。
    ヒトラーが時代錯誤な言動を繰り広げるのを笑っていたはずが、いつの間にかヒトラーと一緒に笑っていた。
    「なんだ、まともな事言ってるじゃないか」とすら思った。
    キャッチコピーの「笑うな危険」にモノの見事に陥ったものである。
    映画で大きく構成を変えたのは、思いの外皮肉が通じず本当に「悪いことばかりじゃなかった」って方に転びそうで脅威をより分かりやすくしたのかな?

  • 笑えない。

  • つまり現在のドイツで実はヒトラーはそれほどの違和感なく受け入れられてしまうのではないか、という皮肉なお話。繰り返されるナチスはあくまでも民主主義的な手続きを経て政権を取ったという事実は重いし、今の諸国の政治体制がポピュリズムに傾きつつある時代にこの小説の微温的なハッピーエンドが薄気味悪さを漂わせる。

  • あの「ナチス」のアドルフ・ヒトラーが現代に甦ったらどうなるかという、ブラックユーモアにも感じる作品。

    ドイツで大反響となり、250万部を売り上げ、映画では240万人を動員したベストセラー。
    日本で出版された文庫本も上下巻累計24万部を売り上げた。

    1945年からタイムスリップしてきたヒトラーは、現代ではヒトラーのそっくり芸人という扱いをうける。当の本人は、タイムスリップしてきたという事実と現代での扱われ方を生き抜く術として受け入れ、テレビ業界に紹介されるや、テレビやインターネットで政治風刺演説を繰り広げ、一躍時の人に。

    当たり前だが、まるで本人の生き写しのような容姿や演説に、賛否両論が起こるも、YouTubeでは70万回の再生回数を3日間の間に成し遂げ、民衆の人気を勝ち取っていく。

    それでも世界の禁忌に触れる芸風では敵も多く、新聞の攻撃に会うが、その新聞までも屈服させる快進撃。徐々に現代ドイツが抱える問題を改善する意識も芽生え、ある事件をきっかけに各政党から引っ張りだこになるほど勧誘される立場となる。

    今や「ナチス」やヒトラーに関する話題は、あらゆる方面から禁忌とされている。ヒトラーとは、ほんとにただ残忍で冷徹な指揮官だったのか。今となっては真実を知ることも難しいが、あれだけドイツ国民を熱狂させ、きちんとした国民選挙で選ばれ総統となった絶大な魅力、改革を実行していった手腕と行動力は、今の政治家には感じられないものばかり。ある出来事や考え方だけに注目すれば、決して人権的とは言えず、現代では考えられない手法を用いていることもあるが、もしも現代に甦ったとしたら、ドイツ国民とは言わず世界中が彼の魅力に惹き付けられ、再び総統のポジションを得ることになるのかもしれない。

  • 上巻に比べるとドタバタ的シーンは減ったかな。一方でヒトラーを真に「理解する」人が増えてきて雲行きが怪しくなってくる。
    近年の極右系暴言政治家が選挙で選ばれてきてしまう風潮に似たところを感じてちょっと怖い。

  • 笑いが散りばめられている小説なのですが、最後はヒトラーが反省するのだろうとか、何らかの形で現代の世から去るのだろうとか、そんなストーリーを予想していました。だって何と言ってもあのヒトラーだし、そういう終わり方じゃないと多くの人は納得しないんじゃないだろうかと思って。

    予想を裏切られ、この本のヒトラーは生きたまま、そして相変わらず使命感に燃えたままで物語が終わります。文庫本版についているニューヨークタイムズの書評のところに、ブラックユーモアを使ってナチスの過去と向かい合う新しいアプローチだと書かれていました。なるほど。

    本を読んで大笑いし、そこでふと我にかえり「こんなに笑っていいのだろうか?」と自問する。そういう小説でした。映画にもなったんですね!

  • 上巻に続き下巻を読みました! 
    「この本はヒトラーを笑うのではなく、ヒトラーとともに笑う」みたいなことをどこかに書いてあったと思うのですが、確かになと納得です。
    この本を読んでいると、ヒトラーがチャーミングでいい人な気がしてきます。
    もちろん内容はフィクションですし、過去に行われた悲惨な出来事を思うと、フィクションとは言え、そう思うことが正しいことなのか?と自問してしまいます。
    そして本書でヒトラーが行うような手口、もしくはヒトラーのようない人物が現れた時にその思惑に気づくことができるのか?
    私自身、そして周り、日本という単位で考えてみても疑問です。
    終始ユーモアを感じながら読み進めることができますが、最後の最後にはやはりどこか「ゾッ」とさせるものがあります。

  • 最後のページを読み終えるまで、私は彼の無事に安堵し、彼の一層の活躍の予感に素直に喜んでいた。
    だが、物語の外に出て、我に返った時、とりわけザヴァツキ夫妻を思い出し、彼がこれから作り上げていく未来に思い至って、空恐ろしい気持ちがしてならなかった。

    あとがきの通りだ。
    読者は、物語に没頭すればするほど、彼とともに笑い、そうするほどに、我に返った時、背筋の凍る思いをし、一度でも彼に共感を覚えてしまったことを猛烈に反省する。
    どこか、「あの」歴史にも似ている。

    彼が、彼のような人が現れた時、途中で我に帰ることの出来る人間が、一体どれほどいるだろう。
    それは、あまりに恐ろしい想像だ。

  • ピンチを乗り越え先行きは明るい、総統たちの戦いはこれからだ!
    なんて凄く前向きな終わり方…なのに、と言うかだからこそ、と言うか後味は悪い…!
    ドイツ史をちゃんと分かってたらもっと面白く読めるんだろうな

  • 面白ければ面白いと感じるほど恐ろしい本ってすごいなと思った。
    ドイツ史にそんな詳しくないからもっと勉強してから読めばもっと面白いきっと

  • ↓貸出状況確認はこちら↓
    https://opac2.lib.nara-wu.ac.jp/webopac/BB00233377

  • 上巻の面白さはそのままラストまで続く。
    主義主張はヒトラーと同じなのに、現代の今に置き換えてみればそれなりの説得力を持って行為的に受け止められ、本人にも魅力が感じられもして、恐いことだと思った。

  • ヒトラーに詳しいドイツ人なら、もっと楽しめたと思う。それなりでした。(笑)

  • ヒトラーが現代に現れたらどうなるのか?フィクションながら非常にリアリティのある風刺小説。ヒトラーをどこまで笑いものにできるのか?著者にとってはいわば挑戦的な主題だったと思うが、個人的にはよく出来た作品だと思った。攻めた表現描写も見受けられるものの、「2度と繰り返してはならない歴史」が現代社会に起こりうる予感を抱かせ、今日の社会情勢にも通づることからその危険性に対して警鐘を鳴らす。読み込めば読み込むほど

    一方で多くの批判もなされているように、批判検証の余地もあるように感じる。ヒトラーに少し人間味があるような描写だったり、ポップすぎる振る舞いには多少違和感も。

  • 【静大OPACへのリンクはこちら】
    https://opac.lib.shizuoka.ac.jp/opacid/BB21126722

  • 映画が面白怖かったので読んでみた。ラストの続きがどうなるか?考えるだに恐ろしい。

  • 最初からなんだかわからなかった。ヒットラー政治や当時の時代背景と現代のドイツを知らないと笑うに笑えない。注釈を読んでも??はてなー?でした。テレビに芸人として出る事になるが、そこでもなぜこれが受けるのか分からなかった。
    ただキオスクみたいなお店の店主とのやりとりは面白いかも。

  • 上巻に続き、下巻もクソ面白くない。
    なぜこの本が売れたのか全然理解できん。

    あとがきを読んで理解しようとしたが、ジョジョのように
    ムダムダムダムダムダムダムダムダムダムダ.....
    というのが頭をよぎってしまった。

    人様にはまったくオススメしない一冊。

  • 秀逸なダークユーモア

    ナチスの問題というよりは、現代社会の問題とそれに対する向き合い方がテーマになっている。

    笑えるんだけど笑えないと言った具合。。
    とにかく予想よりも全然面白い。

    社会学などを学んでいる人におすすめできそう。

  • テレビで演説をぶった芸人ヒトラーは新聞の攻撃にあうが民衆の人気は増すばかり。極右政党本部へ突撃取材を行った彼は、徐々に現代ドイツの問題に目覚め、ついに政治家を志していくことに……。静かな恐怖を伴ったこの爆笑小説は、ドイツで大反響をまきおこした。本国で二五〇万部を売り上げ、映画で二四〇万人動員したベストセラー小説の待望の文庫化。
    原題:ER IST WIEDER DA
    (2012年)
    — 目次 —
    19章 新聞の一面に載る
    20章 謎の女
    21章 〈ウサギ耳の犬〉という名のキツネ
    22章 あなたはナチスなの?
    23章 極右政党本部への突撃取材
    24章 孤独なクリスマス
    25章 検察に突き出されるぞ!
    26章 〈ビルト〉紙への反撃
    27章 〈ビルト〉紙の降伏
    28章 グリメ賞の受賞
    29章 真実
    30章 彼が帰ってきた
    31章 狂乱のオクトーバーフェスト
    32章 陰謀の真実
    33章 ネオナチの襲撃
    34章 入院の顛末
    35章 英雄の本
    36章 また歩き出す
    著者による原注(下)

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